262 |
木石 |
ほとんど木石ではないかと疑はれるくらゐ、 |
ほとんど木石ではないかと疑はれるくらい、 |
265 |
林 |
林の中 |
ぱつぱつと飛び立つて矢のように早く、雨を避けようとして林の中に逃げ込む |
266 |
林 |
林の中に |
こそこそと林の中に這入つて行く。 |
266 |
林 |
林の中 |
林の中は、雨宿りの鳥獸で大混雜である。 |
266 |
林 |
林の奧に |
いちいち上機嫌で挨拶して林の奧に進み、 |
266 |
サクラ |
山桜の大木の根もと |
山桜の大木の根もとが広い虚(うろ)になっているのに潛り込んで、 |
266 |
大木 |
山桜の大木の根もと |
山桜の大木の根もとが広い虚(うろ)になっているのに潛り込んで、 |
266 |
根もと |
山桜の大木の根もと |
山桜の大木の根もとが広い虚(うろ)になっているのに潛り込んで、 |
267 |
松葉 |
松葉のよう |
松葉のように一ぱいこぼれ落ちている。 |
267 |
木の虚 |
木の虚 |
蝙蝠が、はたはたと木の虚から飛んで出た。 |
267 |
木の虚 |
木の虚 |
つまらぬ事を呟きながら木の虚から這い出ると |
268 |
林 |
林の奧の |
林の奧の草原に、この世のものとも思えぬ不可思議の光景が展開されているのである。 |
269 |
林 |
林の奧の |
林の奧の、やや広い草原に、異形の物が十数人、 |
277 |
木魚 |
木魚 |
「そうね。でも、木魚を頬ぺたに吊しているやうにも見えるわね。」 |
278 |
大樹 |
大樹 |
屹(き)っと月を見上げて、大樹の如く凝然(ぎょうぜん)と動かず。 |
284 |
萩 |
萩の花 |
「砂濱の萩の花も、這い寄る小蟹も、入江に休む鴈(かり)も |
301 |
桶 |
風と桶屋 |
縁があつても、まづ、風と桶屋ぐらいの關係ぢやないか。 |
302 |
森閑 |
森閑 |
さうして森閑としている。 |
302 |
柱 |
壁も柱 |
と驚いてあたりを見廻したが、壁も柱も何も無い。 |
303 |
一木一草 |
一木一草 |
蕭寂(せいじゃく)たる幽境、一木一草も見當らんじゃないか。 |
308 |
樹蔭 |
緑の樹蔭 |
やがてあたりが、緑の樹蔭のような色合いになり、 |
309 |
桜桃 |
海の桜桃 |
これは、海の桜桃です。これを食べると三百年間、老いる事が無いのです。 |
310 |
桜桃 |
桜桃の坂の |
桜桃の坂の尽きるところに、青い薄布を身にまとつた小柄の女性が幽かに笑いながら立つている |
311 |
樹蔭 |
樹蔭 |
どこから射(さ)して來るのか樹蔭のような緑色の光線を受けて |
313 |
桜桃 |
桜桃の花 |
「これは海の桜桃桃の花です。ちよつと菫(すみれ)に似ていますね |
313 |
桜桃 |
桜桃を含み |
花びらで酔い、のどが乾けば桜桃を含み、 |
317 |
桜桃 |
桜桃の酒 |
この藻の岩に腰をおろして、桜桃の酒でも飮むさ |
317 |
桜桃 |
桜桃の花びら |
桜桃の花びらだけでは、はじめての人には少し匂いが強すぎるかも知れないから、 |
317 |
桜桃 |
桜桃 |
桜桃五、六粒と一緒に舌の上に載せると、 |
317 |
桜桃 |
桜桃二粒 |
花びら三枚に、桜桃二粒を添へて舌端に載せるとたちまち口の中一ぱいの美酒、 |
320 |
桜桃 |
桜桃の酒 |
と浦島はさらに桜桃の酒を調合して飮み、 |
320 |
桜桃 |
桜桃の花びら |
桜桃の花びらを口に含んだりして遊んでいます。 |
320 |
桜桃 |
桜桃の酒 |
「そうかね。あのお方も、やつぱりこの桜桃の酒を飮むかね。 |
320 |
クワ |
桑の実の |
「それと、それから、桑の実のような味の藻は?」 |
320 |
実 |
桑の実の |
「それと、それから、桑の実のような味の藻は?」 |
321 |
樹蔭 |
樹蔭のような |
いつも五月の朝の如く爽やかで、樹蔭のような緑の光線で一ぱいで、 |
328 |
木 |
木の実が |
傍に木の実が一つ落ちているのを見つけ、 |
328 |
実 |
木の実が |
傍に木の実が一つ落ちているのを見つけ、 |
340 |
柴 |
柴刈り |
山に柴刈りに行く気力も何も無くなつているでしょうから、 |
340 |
柴 |
柴刈 |
私たちはその代りに柴刈りに行ってあげましょうよ。 |
340 |
柴 |
十貫目の柴 |
一心不亂に働いて十貫目の柴を刈つて、 |
340 |
柴 |
柴を刈って |
山頂では狸と兎が朝露を全身に浴びながら、せつせと柴を刈っている。 |
342 |
柴 |
柴刈り |
柴刈りの手を休め、ちよつとそのお弁当箱の中を覗いて、 |
342 |
柴 |
柴を刈つて |
ただ技巧的な微笑を口辺に漂わせてせつせと柴を刈つているばかりで、 |
342 |
柴 |
柴刈り |
またもや柴刈りに取かかる。 |
342 |
柴 |
柴刈姿には |
おれのさかんな柴刈姿には惚れ直したかな? |
342 |
柴 |
柴を |
「もう私も、柴を一束こしらへたから、 |
343 |
柴 |
刈つた柴 |
「どれ、それではおれも刈つた柴を大急ぎで集めて、 |
343 |
柴 |
柴を脊負つて |
二人はそれぞれ刈つた柴を脊負つて、歸途につく。 |
344 |
エノキ |
一本榎 |
あの爺さんの庭先の手前の一本榎のところまで |
344 |
柴 |
柴を脊負つて |
この柴を脊負つて行くから、あとはお前が運んでくれよ。 |
347 |
柴が燃えてる |
柴が燃えてる |
助けてくれ、柴が燃えてる。あちちちち。」 |
354 |
帚 |
帚など立てられているもの |
襖の陰に帚など立てられているものである。 |
359 |
板 |
薄い板切 |
それに何せ薄い板切れでいい加減に作つた舟だから、 |
359 |
板 |
板切れの舟 |
板切れの舟は危いから、もつと岩乘に |
361 |
櫂 |
櫂 |
それから、櫂でぱちやと水の面を撃つ |
361 |
マツ |
松林 |
うよやうだ。 |
361 |
マツ |
松林を写生し |
この島の松林を写生して図案化したのが、煙草の「敷島」の箱に描かれてある、 |
362 |
マツ |
あの松 |
ああ、あの松か、と芸者遊びの記憶なんかと一緒にぼんやり思い出して、 |
364 |
櫂 |
持つている櫂 |
そのお前の持つている櫂をこつちへ差しのべておくれ |
364 |
櫂 |
櫂で |
櫂でおれの頭を毆りやがつて、 |
364 |
櫂 |
無慈悲の櫂が |
ぽかん、ぽかん、と無慈悲の櫂が頭上に降る。 |