住友館
東ゲートから入り大屋根リングの手前の左に。
住友館 ― 森からはじまる未来へ
概要
住友グループが出展する民間パビリオン「住友館」は、約400年の歴史をもつ企業グループの理念「自利利他公私一如(じりりたこうしいちにょ)」を体現する建築として計画されました。テーマは「さあ、森からはじまる未来へ」です。
森と人との関係を見つめ直し、環境への意識を育む場として、来場者が森の中を冒険し、植林を通じて未来へつながる体験ができるようになっています。
建築の特徴
住友館は夢洲会場の東ゲート正面に位置し、山々が重なり合う稜線を思わせる独特の屋根形状をもっています。デザインの着想は、住友発展の原点である愛媛県・別子銅山の「別子の嶺」にあります。
建築デザインは電通ライブと日建設計が基本設計を担当し、施工は三井住友建設・住友林業JVが行いました。建物はメイン棟(展示棟)とBOH棟(バックヤード棟)の2棟構成で、いずれも地上2階建てです。構造は鉄骨造を主体に、木造部分を併用しています。
屋根と外壁は、直線の鉄骨をねじりながら組み合わせることで、連続する滑らかな曲面(双曲放物線面=HP曲面)を形成しています。木の板を“冷たい状態で曲げる”コールドベンド工法により、9mm厚のヒノキ合板を現場でねじりながら張り付けるという、これまでにない技術的な挑戦が行われました。
木材利用と素材
建物全体は、住友グループが別子銅山に保有する「住友の森」から伐り出した木材で構成されています。
屋根・外壁にはヒノキの構造用合板(約250m³)を使用し、軽量化と材料効率の両立を図っています。
エントランス周辺には、1970年大阪万博の年に植林されたスギ角材を使用しています。3種類(45×45、45×90、105×105mm)の角材をランダムに配置し、「時の積層」や年輪の重なりを表現しています。
合板製造時に生じる芯材(剥芯)も、会場内のベンチや階段土留め材に活用し、“木を余すことなく使う”理念を徹底しています。
展示と体験
展示テーマは「UNKNOWN FOREST〜誰も知らない、いのちの物語〜」です。
来場者はランタンを手に、デジタル演出と本物の植物が融合した森を探検します。ランタンを特定の場所に置くと光が反応し、キノコや動物が動き出す仕掛けがあり、音声ナレーションに導かれながら“いのちの物語”に触れることができます。
探検の後は、幅20m・高さ7.5mのパフォーミングシアターで、風・霧・光・音が一体となる没入型映像を鑑賞します。葉っぱ切り絵アーティストリトさんの作品展示や、子ども向けの植林体験コーナーも設けられています。
植えられた苗木は閉幕後に別子銅山の森へ移植され、「森からはじまり、森に還る」ストーリーが完結します。
建築データ
項目 | 容 |
基本設計 | 電通ライブ、日建設計 |
実施設計 | 電通ライブ、三井住友建設 |
展示設計 | 電通ライブ、乃村工藝社 |
施工 | 三井住友建設・住友林業特別共同企業体 |
構造 | メイン棟:鉄骨造、BOH棟:木造 |
敷地面積 | 3,568.19 m² |
延床面積 | 2,717.72 m² |
階数 | 地上2階 |
着工 | 2023年12月15日 |
竣工 | 2024年12月27日 |
主な使用木材 | ヒノキ合板、スギ角材(いずれも住友の森産) |
閉幕後と意義
会期終了後には、「UNKNOWN FORESTの森の中の演出解説」と「パフォーミングシアター・フルバージョン映像」がYouTubeで公開されました。下記にも掲載。
また、建材の一部は看板などに再利用される計画です。これは、1970年万博の「住友童話館」から続く“森への恩返し”の思想を現代に引き継ぐものです。
感想とまとめ
住友館は、技術・理念・デザインの三位一体で構成された万博パビリオンです。
木材の軽さとしなやかさを活かしたHP曲面屋根、材料の無駄をなくす合板利用、そして展示や植林体験による教育的メッセージが高く評価されています。
まさに「森を建築で再生し、未来へ託す」住友精神の象徴的な建築といえるでしょう。
住友館 プロモーション動画
YouTube Expo2025大阪・関西万博より
UNKNOWN FORESTの演出の裏側|Behind the Scenes of UNKNOWN FOREST
UNKNOWN FOREST Performing Theater