2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)の入場ゲートは、会場の東西にそれぞれ設けられており、外観イメージを統一しながらも、設計体制や木材仕様、利用状況に違いが見られます。
東ゲートは主に地下鉄・大阪メトロ夢洲駅の利用者が集中する入口で、全長は約119メートルです。設計は安井建築設計事務所、施工は大林組・大鉄工業・TSUCHIYA共同企業体が担当しています。構造は柱と屋根で構成される開放型で、壁は設けられていません。天井は船底状に傾斜し、外側に向かって広がるホーン状のデザインとなっています。
天井仕上げには杉小幅板(板目)が用いられており、厚さ9ミリ、幅110ミリ(資料によっては120ミリ)、長さ2メートルの杉赤身一等材です。塗装はウッドエイドライトを2回塗りとされています。ユニット化した板材を鉄骨下地にビス止めする方式で、将来の解体を考慮した施工方法が採られています。
一方、西ゲートは会場西側に位置し、団体バスやタクシー利用者が多い入口です。全長は約150メートルで、東ゲートよりも長くなっています。設計・施工は鹿島建設と飛島建設の共同企業体が担当しています。外観は東ゲートと統一感を持たせていますが、船底天井の傾斜角は異なります。
西ゲートの軒天井には国産スギ材が使用されており、厚さ12ミリ、幅105〜109ミリ、長さ2メートルの板材が計約22,000枚、総面積4,480平方メートルにわたって張られています。下地材は5×35ミリ、長さ4メートルの木材です。奈良県吉野地方の杉や兵庫県佐用町の間伐材が用いられ、森林資源の有効活用や間伐材流通促進の意図が示されています。板厚は東ゲートより3ミリ厚く、仕様としてはより重厚な構成となっています。
両ゲートとも開放的な構造であるため風通しは良いものの、屋根形状が上方に広がるホーン状であることから、日差しや雨が内部まで差し込みやすい構造となっています。天井には消防法に基づき火災感知器が設置されていますが、半屋外空間で天井高もあるため、設計上の対応が求められたと考えられます。
利用実態としては、地下鉄利用者が多い東ゲートの混雑が特に顕著です。人気パビリオンを目指す来場者は開場時刻よりかなり早くから整列し、長時間待機する状況が見られます。入場時には手荷物検査とQRコード確認が行われるため、列の進行は比較的ゆるやかです。ゲート幅は西ゲートの方が広いものの、利用者の集中により東ゲートの混雑が目立つ傾向があります。
建築的には、両ゲートとも国産スギ材を用いた象徴的な木質空間として設計されており、森林資源活用や意匠性の高さが特徴です。一方で、遮熱・遮雨性能や大量滞留への対応という観点では、開放性を重視した形状が来場者環境にどのような影響を与えているかが検討課題として残る構成となっています。
利用された木材については東ゲートは9ミリで西ゲートは12ミリで、木材単価は東ゲートからみると33%、西ゲート側からだと25%の開きがあります。また東ゲートが一等材であるのに対し西ゲートはほとんど無地材ですので、何倍かの差があります。杉材の産地、加工の方法や施工方法によってもコストが変わってきますが、業界の感覚では西ゲートの杉材の方が高級材ということになります。
万博における個人的体験
万博見学の中で最も負担に感じたのは、パビリオンではなく入場ゲート前での待機時間でした。目的のパビリオンに近いゲートを選ぶため、米国館を目指す場合は東ゲート、イタリア館の場合は西ゲートに並ぶことが多くなります。会場は午前9時開場ですが、人気パビリオンにスムーズに入場するためには、実質的に2時間から2時間半前に並ぶ必要がありました。
負担の最大の要因は暑さでした。雨天よりも、立ち続けることそのものよりも、直射日光による体力消耗が深刻でした。待機場所には東西いずれのゲートでも日差しを遮る設備がほとんどなく、多くの来場者が日傘や携帯用椅子を持参していました。会期終盤にはテントが1列設置されましたが、それまでは十分な遮蔽環境があるとは言えませんでした。
列は「前に詰めてください」との案内がなくても自然に密集し、個人の空間はほとんど確保できません。その状態で長時間、炎天下に立ち続けることは身体的に大きな負担でした。さらに、手荷物検査や入場ID確認のため列の進行は遅く、特にQRコード提示に時間を要する来場者がいると滞留が発生します。
ゲートが近づくと、屋根の下に入れば日差しを避けられると期待します。しかし実際には屋根が外側に広がるホーン状の形状であるため、内部まで日差しが差し込みます。雨天時も同様で、吹き込みが生じます。意匠的には印象的なデザインですが、待機環境という観点では必ずしも機能的とは感じられませんでした。
東京から訪れた友人も、展示内容そのものは非常に高く評価していましたが、「ゲート前の待機で疲れ切ってしまった」と述べていました。体験全体の満足度に対して、入場時の負担が無視できない影響を与えていることを実感しました。
アンケートでの意見
入場後に送付されるアンケートでは、展示内容や運営の多くの点を高く評価しつつ、ゲートの待機環境について改善を求める意見を記載しました。
東ゲートでは毎日早朝から長時間の行列が発生しており、多くの来場者が炎天下で2時間以上立ったまま待機しています。これは一時的な混雑ではなく、来場者数、地下鉄利用者数、人気パビリオンへの集中といった構造的要因によって日常的に生じている状態です。さらに、高温環境は今後も継続することが予測可能であり、待機場所の物理的条件も固定されています。
つまり、
来場者数は高水準で推移
地下鉄利用者は東ゲートに集中
ゲート数は一定
日差し・高温は継続
という条件のもとでは、待機時間と滞留密度は構造的に発生するものであり、偶発的な事象とは言えません。変数が多少変動しても、現在の施設条件下では待機環境が根本的に改善するとは考えにくい状況です。
このような環境では、熱中症等の健康被害が発生する可能性は十分に予見可能であり、対策を講じる必要があります。具体的には、
入場ゲート数の増設
十分な日除け・遮熱設備の設置
滞留時間を短縮する運営改善
などが求められます。
危険性が予測可能でありながら十分な対応がなされていない場合には、主催者の安全配慮義務との関係が問題となり得ると考え、その点も含めて丁寧に意見を記載しました。(民法717条に当たります、あるいは主催者の安全配慮義務違反)
展示内容の価値が高いだけに、入場段階で来場者の体力を消耗させる状況は非常に惜しいと感じています。