私の訪問10回目くらいのこと、8月の暑い日でした。オランダ館の近くを歩いていると、木材の縦格子が印象的な粋な建物が目に入りました。歩き疲れて足も痛く、座れる場所を探していましたが、どのベンチも満員です。せめて日陰に…と思い、その建物に入ってみました。入口をくぐった瞬間、まるで氷室に足を踏み入れたかのような涼しさ! 驚いて見れば、ダイキン工業が提供する休憩所「氷のクールスポット」でした。本当にありがたく、忘れられない体験となりました。以下、資料をもとに概要をまとめます。
「氷のクールスポット」は、オランダ館前の「進歩の広場」に設けられた木組み格子の休憩所です。木陰に入ったような心地よさを生む秘密は、建物の壁に組み込まれた「氷のパネル」。このパネルは表面温度を3~8℃に維持し、まるで氷室の中にいるかのような涼しさを実現しています。壁側のベンチに座ると、背中にほんのりと冷気が伝わってくる仕組みです。
内部には約30人が座れる木のベンチを配置。屋根には太陽光パネルを搭載し、そこで発電した電力を利用して夜間に製氷するというサステナブルな仕組みも導入されています。
建物は木造で、柱や梁には杉集成材(120×450mm)、方杖には105mm角材を使用。外装には杉の縦格子、内装には吉野杉の格子を取り入れ、日本古来の木組みの技を現代に生かしています。格子の意匠により、屋内外の境界を感じさせない開放的な空間を演出するとともに、自然素材の持つ温もりが涼しさをより引き立てています。
また、建築設計では「屋外にいながら木陰の涼を感じる」ことをコンセプトに、外格子と内格子を二重に構成。その間に氷パネルを設置することで、直射日光を避けつつ開放感を確保しました。
氷のクールスポットは、ダイキンの氷蓄熱技術と太陽光発電を組み合わせた新しい空調ソリューションです。夜間に製氷した氷の冷輻射を利用して空間を冷やし、外気温より約5℃低い快適な環境を提供します。氷は透明なアクリル越しに見ることができ、視覚的にも涼しさを感じられる演出になっています。
屋根には緑色の太陽光パネルを搭載し、周囲の植栽や大屋根リングの景観と調和するようデザインされています。夜には梁の上に仕込まれたオレンジ色の照明が柔らかに灯り、昼間とは違った雰囲気を楽しめます。
ダイキン工業は「空気で答えを出す会社」として、未来社会の実験場である大阪・関西万博において、自然エネルギーを活用した空調の可能性を提示しています。氷のクールスポットは、技術と木造建築が融合した、まさに「建築×空調」の新しい試み。来場者にひとときの安らぎと涼を提供する、未来型の休憩所といえるでしょう。