閉会間際の10月9日、万博西口に位置するギャラリーWESTを訪問しました。 外観は板張りの美しい建物で、ちょうど「アヴァンギャルドですが、なにか」という展覧会が開催されていました。
資料上は「廃棄食材や食品残渣を利用したベジタブルコンクリートによる壁面」と記載されていますが、現地で確認したところ、実際にはスギの無垢材が使われています。
小節以下の良質な材を縦張りに施工し、表面にはベジタブルコンクリートの色味に近い塗装が施されています。遠目には新素材のように見え、環境素材の発展を感じさせる色調ですが、近くで見ると節やタッカー跡、塗装のはがれなどから塗装された木材であることが分かります。
当初予定のベジタブルコンクリートが何らかの理由で実用困難となり、代替として杉材が採用されたものと思われます。万博会場では他にも仕様変更が見られる建物がありますが、これもその一例といえるでしょう。
公式ホームページ上の素材表記は、現状に即した訂正が必要だと感じました。
しかし、結果的にこの杉材の外壁は、温かみと自然感をもたらしており、「ギャラリー」という用途にはむしろ好ましい仕上がりとなっています。
この日(10月9日)から11日まで、ギャラリーWESTでは「障がい者の
文化芸術国際フェスティバル」の一環として、展覧会
『アヴァンギャルドですが、なにか』(Avant-gardes? Yes we are!) が開催されていました。
「アヴァンギャルド」という言葉はもともと「前衛部隊」を意味する軍事用語でしたが、19世紀フランスで芸術や社会運動の先駆者を表す比喩として用いられるようになりました。
本展は、その“前衛の精神”を現代の文脈で再解釈し、日常や個人的な経験を出発点に既成概念を問い直す作品を紹介しています。
キュレーションは、障がい者アートの社会実装に取り組むヘラルボニーCAO(Chief Art Officer)黒澤浩美氏が担当。
「アートは固定されたものではなく、鑑賞者の解釈によって常に新しい意味を生み出す営み」と語り、参加作家たちの真摯な姿勢と情熱が来場者の心に響く展示となりました。
会場では、藤岡祐樹・西岡弘治・渡邊義紘をはじめ26名の作家が参加し、障がいのある人々が携わる体験型プロジェクト、農福連携キッチンカーのフード提供、展覧会図録やオリジナルグッズの販売なども行われました。
本展は、情熱と違いへの開かれた姿勢こそが「前衛」の精神を生み出すことを来場者に伝えています
。展覧会名 | アヴァンギャルドですが、なにか(Avant-gardes? yes we are!) |
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会期 | 2025年10月9日(木)〜 10月11日(土) |
会場 | ギャラリーWEST(大阪・関西万博会場内) |
所在地 | 大阪府大阪市此花区夢洲 |
開館時間 | 11:00〜19:00(最終日は15:00まで) |
休館日 | なし(※万博入場料は別途必要) |
設計者 | 金野 千恵|teco株式会社 |
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主用途 | 展示場 |
階数・構造 | 平屋建・鉄骨造 |
延床面積 | 644.38㎡ |
設計コンセプト(計画時) | 廃棄食材や食品残渣から制作するベジタブルコンクリートにより“匂いある建築”を創出する試み。 異なるスケールの内部空間と、野菜スケールのピースが集積した大屋根の半屋外空間を活かし、 運用により内外をつなぐ多様なアート空間の展開を目指した。 |
※現地観察(2025/10/09)時点では外壁は杉無垢材の縦張り塗装仕上げ。
現実には杉材が使用されていますが、温かみのある外観と、アートイベントの場としての開放感は魅力的でした。
素材変更を経ても、「循環」「創造」「前衛」というテーマを感じさせる建築」として印象的なギャラリーです。