200 |
木戸 |
木戸を出る時 |
寄席よせがはねて木戸を出る時、待ち合せて電車に乗る時、 |
208 |
杓 |
杓の水 |
杓の水を喰った蜘蛛の子のごとく蠢めいている。 |
208 |
梯子 |
梯子を担い |
ところを梯子を担い土嚢を背負って区々に通り抜ける。 |
212 |
杖 |
杖を引いて |
杖を引いて竹垣の側面を走らす時の音がして瞬く間に彼らを射殺した。 |
216 |
木 |
木や石で |
元々木や石で出来上ったと云う訳ではないから人の不幸に対して |
217 |
アカマツ |
赤松 |
門の左右には周囲二尺ほどな赤松が泰然として控えている。 |
217 |
カキ |
熟柿 |
小春と云えば名前を聞いてさえ熟柿のようないい心持になる |
217 |
マツ |
松の落葉とか |
神無月の松の落葉とか昔は称えたものだそうだが葉を振った景色は少しも見えない。 |
217 |
マツ |
松を左右に |
松を左右に見て半町ほど行くとつき当りが本堂で、 |
217 |
根 |
蟠た根 |
只蟠(わだかま)った根が奇麗な土の中から瘤だらけの骨を一二寸露わしているばかりだ。 |
217 |
杖 |
杖を振り |
先の斜めに減った杖を振り廻しながら寂光院と大師流に古い紺青で彫りつけた額を眺めて門を這入ると、 |
217 |
落葉 |
松の落葉とか |
神無月の松の落葉とか昔は称えたものだそうだが葉を振った景色は少しも見えない。 |
218 |
イチョウ |
化銀杏 |
墓場の入口には化銀杏がある。 |
218 |
イチョウ |
寂光院のばけ銀杏 |
聞くところによるとこの界隈で寂光院のばけ銀杏と云えば誰も知らぬ者はないそうだ。 |
218 |
イチョウ |
銀杏の葉 |
銀杏の葉の一陣の風なきに散る風情は正にこれである。 |
218 |
イチョウ |
化銀杏の下に |
しばらく化銀杏の下に立って |
218 |
ケヤキ |
八寸角の欅柱 |
八寸角の欅柱には、のたくった草書の聯(れん)が読めるなら読んで見ろと澄(すま )してかかっている。 |
218 |
枝 |
高い枝 |
高い枝がことごとく美しい葉をつけている。 |
218 |
枝 |
枝を離れて |
枝を離れて地に着くまでの間にあるいは日に向い |
218 |
大木 |
大木 |
三抱えもあろうと云う大木だ |
218 |
葉 |
葉を振って |
例年なら今頃はとくに葉を振って、から坊主になって、野分のなかに唸ているのだが |
219 |
イチョウ |
化銀杏 |
然し彼等が一度び化銀杏の下を通り越すや否や急に古る仏となってしまう。 |
219 |
柵 |
柵 |
右手の方に柵を控えたのには梅花院殿ばいかいんでん瘠鶴大居士とあるから |
219 |
木 |
木の下 |
木の下は、黒い地の見えぬほど扇形の小さい葉で敷きつめられている。 |
219 |
葉 |
扇形の小さい葉 |
木の下は、黒い地の見えぬほど扇形の小さい葉で敷きつめられている。 |
220 |
イチョウ |
銀杏のせい |
何も銀杏のせいと云う訳でもなかろうが、 |
222 |
イチョウ |
化銀杏 |
化銀杏の方へ逆戻りをしよう。 |
222 |
イチョウ |
化銀杏の下 |
女は化銀杏の下で、行きかけた体を斜めに捩ってこっちを見上げている |
222 |
イチョウ |
銀杏 |
銀杏は風なきになおひらひらと女の髪の上、 |
223 |
イチョウ |
化銀杏 |
化銀杏が黄金の雲を凝こらしている。 |
223 |
イチョウ |
古き銀杏 |
古き銀杏、古き伽藍と古き墳墓が寂寞(じゃくまく)として存在する間に、 |
223 |
イチョウ |
化銀杏の下 |
女は化銀杏の下から斜めに振り返っ |
224 |
イチョウ |
銀杏はひらひら |
銀杏はひらひらと降って、黒い地を隠す。 |
225 |
イチョウ |
化銀杏 |
古伽藍と剥げた額、化銀杏と動かぬ松、錯落と列ぶ石塔― |
225 |
マツ |
動かぬ松 |
古伽藍と剥げた額、化銀杏と動かぬ松、錯落と列ぶ石塔― |
228 |
スギ |
一本杉の下で |
庭前の一本杉の下でカッポレを躍るものがあったらこのカッポレは非常に物凄かろう。 |
229 |
イチョウ |
銀杏の黄葉 |
銀杏の黄葉は淋しい。まして化けるとあるからなお淋しい。 |
229 |
イチョウ |
化銀杏 |
しかしこの女が化銀杏の下に横顔を向けて佇んだときは、銀杏の精が幹から抜け出したと思われるくらい淋しかった。 |
229 |
イチョウ |
銀杏の精 |
しかしこの女が化銀杏の下に横顔を向けて佇んだときは、銀杏の精が幹から抜け出したと思われるくらい淋しかった。 |
229 |
黄葉 |
銀杏の黄葉 |
銀杏の黄葉は淋しい。まして化けるとあるからなお淋しい。 |
229 |
垣根 |
垣根 |
垣根に咲く豆菊の色は白いものばかりである。 |
230 |
イチョウ |
化銀杏の落葉を蹴散らし |
いきなり石段を一股に飛び下りて化銀杏の落葉を蹴散らして寂光院の門を出て先ず左の方を見た。 |
230 |
杖 |
杖で敲いても |
河上家代々の墓を杖で敲いても、手で揺り動かしても浩さんはやはり塹壕の底に寝ているだろう。 |
230 |
落葉 |
化銀杏の落葉を蹴散らし |
いきなり石段を一股に飛び下りて化銀杏の落葉を蹴散らして寂光院の門を出て先ず左の方を見た。 |
231 |
ウメ |
梅の木 |
四つ目垣の向うは二三十坪の茶畠でその間に梅の木が三四本見える。 |
231 |
スギ |
神代杉の手拭 |
拭き込んだ椽側の端に神代杉の手拭懸が置いてある。 |
231 |
チャ |
茶畠 |
四つ目垣の向うは二三十坪の茶畠でその間に梅の木が三四本見える。 |
231 |
垣 |
垣に結うた |
垣に結うた竹の先に洗濯した白足袋が裏返しに乾してあってその隣りには如露(じょろ)が逆さまに被せてある。 |
231 |
根元 |
その根元 |
その根元に豆菊が塊まって咲いて累々と白玉を綴っているのを見て |
233 |
ウメ |
梅の木 |
梅の木をあちらこちら飛び歩るいている四十雀を眺めていた。 |
234 |
楫 |
楫をとった。 |
反って反対の方角へと楫(かじ)をとった。 |
236 |
襖 |
襖 |
やがて襖をあけてポッケット入れの手帳を持って出てくる。 |
238 |
鉛筆 |
鉛筆でなぐりがき |
鉛筆でなぐりがきに書いたものだから明るい所でも容易に分らない。 |
248 |
カキ |
自宅の渋柿 |
自宅の渋柿は八百屋から買った林檎より旨いものだ。 |
248 |
リンゴ |
林檎 |
ダーウィンが進化論を公けにした時も、ハミルトンがクォーターニオンを発明した時も大方こんなものだろうと独りでいい加減にきめて見る。自宅の渋柿は八百屋から買った林檎より旨いものだ。 |