94 |
鉛筆 |
鉛筆 |
机の上に何だか面白そうな本を広げて右の頁の上に鉛筆で註が入れてある。 |
98 |
梅干 |
梅干に |
うん、毎朝梅干に白砂糖を懸(か)けて来て是非一つ食えッて云うんだがね。 |
99 |
梅干 |
梅干を出さない |
日本中どこの宿屋へ泊っても朝、梅干を出さない所はない。 |
99 |
梅干 |
梅干を食わせる |
まじないが利きかなければ、こんなに一般の習慣となる訳がないと云って得意に梅干を食わせるんだからな |
99 |
梅干 |
梅干だって |
すべての習慣は皆相応の功力があるので維持せらるるのだから、梅干だって一概に馬鹿には出来ないさ |
112 |
サクラ |
彼岸桜 |
我からと惜気なく咲いた彼岸桜に、いよいよ春が来たなと浮かれ出したのもわずか二三日の間である。 |
112 |
サクラ |
桜自身 |
では桜自身さえ早待ったと後悔しているだろう。 |
112 |
植物園 |
植物園 |
植物園の横をだらだらと下りた時、 |
113 |
みかん |
蜜柑箱 |
蜜柑箱のようなものに白い巾をかけて、黒い着物をきた男が二人、棒を通して前後から担いで行くのである。 |
113 |
棒 |
棒を通して前 |
蜜柑箱のようなものに白い巾をかけて、黒い着物をきた男が二人、棒を通して前後から担いで行くのである。 |
114 |
下駄 |
下駄の音の |
棺の後を追って足早に刻む下駄の音のみが雨に響く。 |
114 |
下駄 |
下駄の音 |
棺の後を追って足早に刻む下駄の音のみが雨に響く。 |
115 |
エノキ |
古榎 |
左の土手から古榎が無遠慮に枝を突き出して日の目の通わぬほどに坂を蔽うているから、昼でもこの坂を下りる時は谷の底へ落ちると同様あまり善(い)い心持ではない。 |
115 |
枝 |
枝を突き出して |
左の土手から古榎が無遠慮に枝を突き出して日の目の通わぬほどに坂を蔽うているから、昼でもこの坂を下りる時は谷の底へ落ちると同様あまり善(い)い心持ではない。 |
116 |
エノキ |
榎は見えるかなと顔を上げて見ると、 |
榎は見えるかなと顔を上げて見ると、 |
117 |
クコ |
枸杞垣とも覚しき |
曲りくねってむやみやたらに行くと枸杞垣とも覚しきものの鋭どく折れ曲る角でぱたりとまた赤い火に出でくわした。 |
117 |
下駄 |
下駄の歯 |
この辺はいわゆる山の手の赤土で、少しでも雨が降ると下駄の歯を吸い落すほどに濘(ぬか)る。 |
122 |
軒端 |
軒端 |
近づけば軒端を洩れて、枕に塞ぐ耳にも薄(せま)る。 |
122 |
薪雑木 |
薪雑木 |
後も先も鉈刀で打ち切った薪雑木を長く継いだ直線的の声である。 |
126 |
歯入屋 |
歯入屋へ持って行った |
足駄(あしだ)をと云うと歯入屋へ持って行ったぎり、つい取ってくるのを忘れたと云う。 |
126 |
足駄 |
足駄 |
足駄(あしだ)をと云うと歯入屋へ持って行ったぎり、つい取ってくるのを忘れたと云う。 |
127 |
下駄 |
薩摩下駄 |
構うものかと薩摩下駄を引掛けて全速力で四谷坂町まで馳けつける。 |
127 |
如鱗木 |
如鱗木 |
見ると御母さんが、今起き立の顔をして叮嚀に如鱗木(じょりんもく)の長火鉢を拭いている。 |
130 |
サクラ |
柳、桜の春 |
余が前途には柳、桜の春が簇がるばかり嬉しい。 |
130 |
ヤナギ |
柳、桜の春 |
余が前途には柳、桜の春が簇がるばかり嬉しい。 |
130 |
下駄 |
日和下駄 |
「日和下駄ですもの、よほど上ったでしょう」 |
131 |
将棊盤 |
将棊盤 |
源さんは火鉢の傍に陣取って将棊盤の上で金銀二枚をしきりにパチつかせていたが |
131 |
足駄 |
一本歯の高足駄 |
一本歯の高足駄を穿いた下剃の小僧が |
135 |
格子 |
格子の隙 |
狭い格子の隙から女の笑い声が洩れる |
135 |
沓脱 |
沓脱 |
ベルを鳴らして沓脱に這入る途端 |