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小説と木
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夏目漱石の小説 「倫敦塔」に出てくる樹木や木製品

この小説の初出は1905年、文庫本におけるページ数は27ページ
ページ 元樹種 掲載樹種 掲載言葉
9 戸帳 怪しき物を蔽える戸帳 過去と云う怪しき物を蔽える戸帳が自ずと裂けて龕(がん)中の幽光を二十世紀の上に反射するものは倫敦塔である。
10 灰汁桶を掻き交ぜた 空は灰汁桶を掻き交ぜたような色をして低く塔の上に垂れ懸っている。
12 松明 松明の影 逆しまに落す松明の影より闇に消ゆるときも塔上の鐘を鳴らす。
13 カシ 厚樫の扉 口を開けて鰯を吸う鯨の待ち構えている所まで来るやいなやキーと軋る音と共に厚樫の扉は彼らと浮世の光りとを長えに隔てる。
13 櫂がしわる 櫂がしわる時、雫が舟縁に滴たる時、
13 舟縁 舟縁に滴たる 櫂がしわる時、雫が舟縁に滴たる時、
14 バラ 薔薇の乱 今は昔し薔薇(しょうび)の乱に目に余る多くの人を幽閉したのはこの塔である。
15 カシ 厚樫の心も 厚樫の心も透れと深く刻みつけたる葡萄と
15 ブドウ 葡萄と 厚樫の心も透れと深く刻みつけたる葡萄と
15 ブドウ 葡萄の蔓 葡萄の蔓と葡萄の葉が手足の触るる場所だけ光りを射返す。
15 ブドウ 葡萄の葉 葡萄の蔓と葡萄の葉が手足の触るる場所だけ光りを射返す。
15 寝台の柱 寝台の柱に半ば身を倚たせ、力なき両足をぶらりと下げている
15 木枯 木枯しの 折から遠くより吹く木枯しの高き塔を撼がして一度びは壁も落つるばかりにゴーと鳴る。
16 床几 床几を持って来て 床几を持って来てその上につまだつ。
21 ニレ 楡の木がざわざわと 吹く風に楡の木がざわざわと動く。見ると枝の上にも烏がいる。
21 枝の上 吹く風に楡の木がざわざわと動く。見ると枝の上にも烏がいる。
27 花だか葉だか 見るとなるほど四通りの花だか葉だかが油絵の枠のように熊と獅子を取り巻いて彫ってある。
29 バラ 薔薇の蕊より 蹂み躙られたる薔薇の蕊より消え難き香の遠く立ちて、
30 薪割台 首を載せる台は日本の薪割台ぐらいの大きさで前に鉄の環が着いている。
31 マッチ マッチ この三本のマッチが役に立たなかったのは実に残念である」と云う声さえ聞えた。

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