5 |
マツ |
松の方で |
此方(こっち)がいくら歩行(あるい)たって松の方で発展してくれなければ駄目な事だ。 |
5 |
マツ |
松と睨めっこ |
いっそ始めから突っ立ったまま松と睨(にら)めっこをしている方が増しだ。 |
5 |
マツ |
松 |
こうやたらに松ばかり並んでいては歩く精がない。 |
5 |
マツ |
松 |
こう松ばかりじゃ所詮敵わない |
5 |
松原 |
松原 |
さっきから松原を通ってるんだが、松原と云うものは絵で見たよりもよっぽど長いもんだ。 |
5 |
松原 |
松原 |
さっきから松原を通ってるんだが、松原と云うものは絵で見たよりもよっぽど長いもんだ。 |
7 |
下駄 |
俎下駄 |
とうとう親指の痕(あと)が黒くついた俎下駄(まないたげた)の台まで降(くだ)って行った。 |
7 |
下駄 |
俎下駄 |
自分が親指にまむしを拵(こしら)えて、俎下駄を捩(ねじ)る間際には |
8 |
マツ |
松 |
松が厭(あき)るほど行列している然(しか)し足よりも松よりも腹の中が一番苦しい。 |
8 |
マツ |
松 |
松が厭(あき)るほど行列している然(しか)し足よりも松よりも腹の中が一番苦しい。 |
20 |
床几 |
床几 |
と木皿を、自分の腰を掛けていた床几の上へ持って行った。 |
20 |
床几 |
床几 |
木皿が床几の上に乗るや否や、自分の方で先ず一つ頬張った。 |
20 |
木皿 |
木皿 |
神さんは忽ち棚の上から木皿を一枚おろして、 |
20 |
木皿 |
木皿 |
と木皿を、自分の腰を掛けていた床几の上へ持って行った。 |
20 |
木皿 |
木皿 |
木皿の隣へ腰を掛けた。見ると、もう蠅が飛んで来ている。 |
20 |
木皿 |
木皿 |
自分は蠅と饅頭と木皿を眺めながら、どてらに向って |
20 |
木皿 |
木皿 |
自然と手がまた木皿の方へ出たから不思議なものだ |
20 |
木皿 |
木皿 |
木皿が床几の上に乗るや否や、自分の方で先ず一つ頬張った。 |
26 |
マツ |
大きな黒松の根方 |
大きな黒松の根方のところへ行って、立小便をし始めたから、 |
33 |
床几 |
床几 |
すると長蔵さんは、勢いよくどてらの尻を床几から立てて、 |
42 |
松原 |
松原 |
その所有者は長蔵さんであって、松原以来の声であると云う事を悟った。 |
45 |
天秤棒 |
天秤棒 |
中には長蔵さんのような袢天(はんてん)兼けんどてらを着た上に、天秤棒さえ荷(かつ)いだのがある。 |
49 |
松原 |
松原 |
さっき松原の掛茶屋を出てから、今先方までの長蔵さんは |
62 |
スギ |
杉檜 |
尤もこれは日の加減と云うよりも杉檜の多いためかも知れない。 |
62 |
ヒノキ |
杉檜 |
尤もこれは日の加減と云うよりも杉檜の多いためかも知れない。 |
62 |
一本立 |
一本立 |
あの山は一本立だろうか、または続きが奥の方にあるんだろうかと考えた |
62 |
松原 |
松原 |
松原へかかっても、茶店へ腰を掛けても、汽車へ乗っても、 |
76 |
橋板 |
橋板 |
実際自分はこう突然人家が尽きてしまおうとは、自分が自分の足で橋板を踏むまでも思いも寄らなかったのである。 |
77 |
木下闇 |
木下闇 |
木下闇(こしたやみ)の一本路が一二丁先で、ぐるりと廻り込んで、先が見えないから、 |
77 |
林 |
薄暗い林の中 |
顔は始めのうちはよく分らなかったが、何しろ薄暗い林の中を、少し明るく通り抜けてる石ころ路を |
85 |
木下闇 |
木下闇 |
よくも見えない木下闇を、すたすた調子よくあるいて行く。 |
89 |
木 |
黒い木 |
右も左も黒い木が空を見事に突っ切って、頭の上は細く上まで開ているなと、 |
91 |
立ち木 |
立ち木 |
おおいと右左りに当ったが、立ち木に遮られて、細い道を向うの方へ遠く逃げのびて、 |
92 |
木 |
木も山も |
その反動か、有らん限りの木も山も谷もしんと静まった時、 |
94 |
敷居 |
敷居の溝 |
ことによると、敷居の溝に食い込んだなり動かないのかも知れない。 |
94 |
敷居 |
敷居 |
敷居の上へ足を乗せて、こっちを向いて立った股倉から、 |
94 |
梁 |
梁 |
この男はたとい地震がゆって、梁が落ちて来ても、親の死目に逢うか、 |
98 |
敷居 |
敷居 |
長蔵さんが敷居の上に立って、往来を向きながら、ここへ泊って行こうと云い出した時、 |
108 |
木 |
木 |
黒ずんで、凄いほど木を被かぶっている上に、雲がかかって見る間に、 |
108 |
木 |
木の色 |
木の色が明かになる頃は先刻の雲がもう隣りの峰へ流れている。 |
109 |
木 |
木も山も |
立ちながら眺めると、木も山も谷もめちゃめちゃになって浮き出して来る。 |
110 |
木 |
木 |
いつの間にか木が抜けて、空坊主になったり、ところ斑の禿頭と化けちまったんで、 |
112 |
木造 |
木造 |
そうして、所々に家が見える。やっぱり木造の色が新しい。 |
130 |
大工 |
大工 |
シチュウは早く云うとシキの内なかの大工みたようなものかね。 |
133 |
階子 |
階子段 |
その勢いで広い階子段を、案内に応じて、すとんすとんと景気よく登って行った。 |
136 |
藪から棒に |
藪から棒に |
だから、この悪口(あくたい)が藪から棒に飛んで来た時には、こいつはと退避む前に、 |
137 |
板挟 |
板挟 |
自分は普通の社会と坑夫の社会の間に立って、立派に板挟みとなった。 |
144 |
箸 |
箸 |
小さい飯櫃も乗っている。箸は赤と黄に塗り分けてあるが、 |
144 |
箸 |
剥箸 |
例の剥箸(はげばし)を取り上げて、茶碗から飯をすくい出そうとする段になって― |
144 |
箸 |
箸 |
指の股に力を入れて箸をうんと底まで突っ込んで、 |
144 |
箸 |
箸 |
この仕損(しくじり)を二三度繰り返して見た上で、はてなと箸を休めて考えた。 |
144 |
飯櫃 |
飯櫃 |
小さい飯櫃も乗っている。箸は赤と黄に塗り分けてあるが、 |
144 |
棒に振って |
棒に振って |
見栄も糸瓜(へちま)も棒に振って、いきなり、お櫃からしゃくって茶碗へ一杯盛り上げた。 |
144 |
木地 |
木地 |
色い方の漆が半分ほど落ちて木地が全く出ている。 |
144 |
櫃 |
お櫃(はち) |
見栄も糸瓜(へちま)も棒に振って、いきなり、お櫃からしゃくって茶碗へ一杯盛り上げた。 |
146 |
木唄 |
木唄 |
すると今度は木唄(きやり)の声が聞え出した。純粋の木唄では無論ないが、自分の知ってる限りでは、まあ木唄と云うのが一番近いように思われる。 |
146 |
木唄 |
木唄 |
すると今度は木唄(きやり)の声が聞え出した。純粋の木唄では無論ないが、自分の知ってる限りでは、まあ木唄と云うのが一番近いように思われる。 |
147 |
木唄 |
木唄 |
その代り木唄――さっきは木唄と云った。 |
147 |
木唄 |
木唄 |
その代り木唄――さっきは木唄と云った。 |
148 |
木唄 |
木唄 |
しかしこの時、彼らの揚げた声は、木唄と云わんよりはむしろ浪花節で咄喊(とっかん)するような稀代(きたい)な調子であった。 |
149 |
杉丸太 |
杉丸太 |
細い杉丸太を通した両端を、水でも一荷(いっか)頼まれたように、 |
149 |
早桶 |
早桶 |
金盥と金盥の間に、四角な早桶(はやおけ)が挟まって、山道を宙に釣られて行く。上 |
150 |
棺桶 |
棺桶 |
一荷の水と同じように棺桶をぶらつかせて |
157 |
階下段 |
階下段 |
口々に罵りながら、立って、階下段を下りて行った。 |
157 |
森 |
森 |
そうして、森(しん)としている。 |
157 |
森 |
森 |
生きてるのか、死んでるのか、ただ森としている。 |
161 |
棒 |
二本の棒 |
まるで感覚のある二本の棒である。 |
163 |
敷居 |
窓の敷居 |
窓の敷居へかけて、帆木綿のようなものを白く渡して、その幅のなかに包まっていたから、 |
164 |
柱 |
この柱 |
するとそこに柱があった。自分は立ちながら、この柱に倚(よ)っ掛った。 |
164 |
柱 |
柱 |
するとそこに柱があった。自分は立ちながら、この柱に倚(よ)っ掛った。 |
166 |
階下段 |
階下段 |
下から五六人一度にどやどやと階下段を上あがって来る。 |
166 |
木 |
草も木も |
と云っても見えるものは山ばかりである。しかも草も木も至って乏しい、潤いのない山である。 |
167 |
四斗樽 |
四斗樽 |
真中に四斗樽(しとだる)を輪切にしたようなお櫃(はち)が据えてある。 |
167 |
柱 |
柱 |
来たなと思ったが仕方がないから懐手をして、柱にもたれていた。 |
167 |
櫃 |
櫃 |
真中に四斗樽(しとだる)を輪切にしたようなお櫃(はち)が据えてある。 |
168 |
箸 |
箸 |
と、箸も置かない先から急せき立てる。 |
178 |
松原 |
松原 |
岩へぶつかって眉間から血が出るに違ないと思うと、松原をあるく様に、 |
184 |
棒 |
足を棒 |
足を棒のように前へ寝かして、そうして後へ手を突いた。 |
188 |
丸太 |
丸太 |
見ると丸太の上に腰をかけている。数は三人だった。 |
188 |
丸太 |
丸太 |
丸太は四つや丸太まるたで、軌道の枕木くらいなものだから、随分の重さである。 |
188 |
丸太 |
丸太 |
丸太は四つや丸太まるたで、軌道の枕木くらいなものだから、随分の重さである。 |
188 |
丸太 |
丸太 |
その上に二人ふたあり腰を掛けて、残る一人が屈(しゃがん)で丸太へ向いている。 |
188 |
突っかい棒 |
突っかい棒 |
これは天井の陥落を防ぐため、少し広い所になると突っかい棒に張るために、 |
188 |
枕木 |
枕木 |
丸太は四つや丸太まるたで、軌道の枕木くらいなものだから、随分の重さである。 |
188 |
木の壺 |
木の壺 |
そうして三人の間には小さな木の壺がある。 |
190 |
丸太 |
丸太 |
やがて、四つや丸太の上へうんとこしょと腰をおろして、 |
197 |
板 |
板 |
箕は足掛りの板の上に落ちた。カカン、カラカランと云う音が遠くへ落ちて行く。一 |
198 |
踏板 |
踏板 |
これでさえ踏板が外れれば、どこまで落ちて行くか分らない。 |
198 |
板 |
板 |
穴の手前が三尺ばかり板で張り詰めてある。自分は板の三分の一ほどまで踏み出した。 |
198 |
板 |
板 |
穴の手前が三尺ばかり板で張り詰めてある。自分は板の三分の一ほどまで踏み出した。 |
199 |
板 |
板 |
板が折れても差支なく地面へ飛び退けるほどの距離まで退いた。 |
202 |
段木 |
段木 |
そうして握り直すたんびに、段木(だんぎ)がぬらぬらする。 |
202 |
梯子 |
梯子 |
猿の仕事である。梯子が懸ってる。 |
202 |
棒 |
棒 |
こちらの壁にぴったり食っついて、棒を空にぶら下げたように、 |
204 |
段木 |
段木 |
初さんの影は網膜に映じたなり忘れちまったのが、段木に噛りついて眼を閉るや否や生き返ったんだろう。 |
204 |
段木 |
段木 |
そこでぬるぬるする段木を握り更かえ、握り更えてようやく三間ばかり下がると、 |
205 |
梯子 |
梯子 |
仕方がないから、自分はまたこの梯子へ移った。 |
205 |
梯子 |
梯子 |
するとまた逆の方向に、依然として梯子が懸けてある |
205 |
梯子 |
梯子 |
新しい梯子はもとのごとく向側に懸っている。 |
205 |
梯子 |
梯子 |
自分が六つめの梯子まで来た時は、手が怠くなって、 |
213 |
桟道 |
桟道 |
自分は蜀の桟道と云う事を人から聞いて覚えていた。 |
213 |
桟道 |
桟道 |
この梯子は、桟道を逆に釣るして、未練なく傾斜の角度を抜きにしたものである。 |
213 |
桟道 |
逆桟道 |
もっともこれは逆桟道の祟だと一概に断言する気でもない、 |
218 |
段木 |
段木 |
と云うから、礼を云って立っていると、初さんは景気よく段木を捕えて片足踏掛けながら、 |
218 |
梯子 |
梯子 |
幾分か背の重みを梯子に託する事ができる。 |
219 |
梯子 |
梯子 |
自分は七番目の梯子の途中で火焔のような息を吹きながら、 |
219 |
梯子 |
梯子 |
できるだけ前の方にのめらして、梯子に倚(もた)れるだけ倚れて考えた。 |
220 |
段木 |
段木 |
両手で握った段木を二三度揺り動かした。 |
220 |
段木 |
段木 |
自分は歯を食い締って、両手で握った段木を二三度揺り動かした。 |
220 |
梯子 |
梯子 |
梯子を一つ片づけるのは容易の事ではない。 |
220 |
梯子 |
梯子 |
――梯子の下では、死んじゃ大変だと飛び起きたものが、梯子の途中へ来ると、 |
220 |
梯子 |
梯子 |
――梯子の下では、死んじゃ大変だと飛び起きたものが、梯子の途中へ来ると、 |
220 |
梯子 |
梯子 |
自分が梯子の下で経験したのはこの第二に当る。 |
220 |
梯子 |
梯子 |
ところが梯子の中途では、全くこれと反対の現象に逢った。自 |
222 |
梯子 |
梯子 |
梯子の途中で、ええ忌々しい、死んじまえと思った時は、 |
222 |
梯子 |
梯子段 |
しかしこのくらい断乎として、現に梯子段から手を離しかけた、 |
223 |
段木 |
段木 |
ぬらつく段木を指の痕のつくほど強く握った。 |
223 |
梯子 |
梯子 |
仰向と、泥で濡れた梯子段が、 |
223 |
梯子 |
梯子 |
カンテラは燃えている。梯子は続いている。梯子の先には坑が続いている。 |
223 |
梯子 |
梯子 |
カンテラは燃えている。梯子は続いている。梯子の先には坑が続いている。 |
224 |
梯子 |
梯子 |
すると鼻の奥が鳴った。梯子はまだ尽きない。 |
224 |
梯子 |
梯子 |
梯子の通る一尺幅を外れて、がんがらがんの壁が眼に映る。 |
224 |
梯子 |
梯子 |
それでも――梯子はまだある。 |
224 |
梯子 |
梯子 |
ただ登り切って、もう一段も握る梯子がないと云う事を覚った時に、 |
225 |
梯子 |
梯子 |
何でも梯子の上でよっぽど心配していたらしい。 |
225 |
梯子 |
梯子 |
「気分が悪い? そいつあ困ったろう。途中って、梯子の途中か」 |
226 |
根 |
大きな黒松の根方 |
大きな黒松の根方のところへ行って、立小便をし始めたから、 |
234 |
藪から棒 |
藪から棒の質問 |
自分は藪から棒の質問に、用意の返事を持ち合せなかったから、はっと思った。 |
246 |
木 |
木も庭も |
家はさほど見苦しくもないが、家のほかには木も庭もない。 |
248 |
エンジュ |
大きな槐 |
右へ上と斜に頭の上に被さっている大きな槐の奥にある。 |
254 |
柱 |
柱 |
ごろ寝は寒い、柱へ倚(よ)り懸(かか)るのは苦しい。 |
254 |
通り柱 |
通り柱 |
又は昨夕(ゆうべ)の通り柱へ倚(もた)れて夜を明そうか。 |
255 |
柱 |
柱の所 |
そうして昨夜の柱の所へ行った。柱に倚りかかった。 |
255 |
柱 |
柱 |
そうして昨夜の柱の所へ行った。柱に倚りかかった。 |
256 |
桟 |
桟を卸す |
手を洗って、桟を卸すのを忘れて、 |
257 |
木造 |
木造 |
木造ではあるがなかなか立派な建築で、広さもかなりだけに、獰猛組とはまるで不釣合である。 |
265 |
炭 |
炭 |
囲炉裏へ炭を継ものがないので、火の気けがだんだん弱くなって、 |
265 |
板 |
一枚の板 |
彼らは自分と共に一枚の板に彫りつけられた一団の像のように思われた。 |
1460 |
木唄 |
木唄 |
すると今度は木唄(きやり)の声が聞え出した。純粋の木唄では無論ないが、自分の知ってる限りでは、まあ木唄と云うのが一番近いように思われる。 |