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小説と木
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夏目漱石の小説「野分」に出てくる樹木や木製品

この小説の初出は1906年、文庫本におけるページ数は201ページ
ページ 元樹種 掲載樹種 掲載言葉
111 木強漢 木強漢 親の恩、兄弟の情、朋友の信、これらを知らぬほどの木強漢んでは無論ない。
111 椽側 椽側 炬燵へあたって、椽側の硝子戸越に眺めたばかりである。
124 ヒノキ 檜の扉 檜の扉に銀のような瓦を載せた門を這入ると、
125 柾の柱 磨上げた、柾の柱に象牙の臍をちょっと押すと、
126 バラ 薔薇の花 丸い卓には、薔薇の花を模様に崩くずした五六輪を、
126 沓脱 沓脱 道也先生は親指の凹んで、前緒のゆるんだ下駄を立派な沓脱へ残して、
133 梶棒 梶棒 敷石をがらがらと車の軋る音がして梶棒は硝子の扉の前にとまった。
133 沓脱 沓脱 「高柳? どうも知らんようです」と沓脱から片足をタタキへおろして、
133 雪駄 雪駄 道也先生が扉を開く途端に車上の人はひらり厚い雪駄を御影の上に落した。
134 カキ 軒の深い菓物屋の奥の方に柿ばかりがあかるく見える。
134 白木 白木 机は白木の三宝を大きくしたくらいな単簡なもので、
134 椽側 椽側 洋灯を取って、椽側へ出て、手ずから掃除そうじを始めた。
138 木枯 木枯 外を木枯が吹いて行く。
142 ――ちょっとその炭取を取れ。炭をつがないと火種ひだねが切れる」
142 ――ちょっとその炭取を取れ。炭をつがないと火種ひだねが切れる」
144 あなたの楫のとりようでせっかくの私の苦心も何の役にも立たなくなりますわ」
146 かき餅 かき餅 火にあぶったかき餅の状は千差万別であるが、
146 かんな屑 かんな屑 風にめぐる落葉と攫(さら)われて行くかんな屑とは一種の気狂である。
146 サクラ 桜の幹 太い桜の幹が黒ずんだ色のなかから、銀のような光りを秋の日に射返して、
146 サクラ 桜の落葉もがさがさに反り返って、
146 桜の幹 太い桜の幹が黒ずんだ色のなかから、銀のような光りを秋の日に射返して、
146 ここかしこに枝を辞したる古い奴ががさついている。
146 梢を離れる病葉は風なき折々行人こうじんの肩にかかる。
146 病葉 病葉 梢を離れる病葉は風なき折々行人こうじんの肩にかかる。
146 落葉 落葉 桜の落葉もがさがさに反り返って、
146 落葉 落葉 風にめぐる落葉と攫(さら)われて行くかんな屑とは一種の気狂である。
154 モミ 樅の木 高い樅の木が半分見えて後ろは遐の空の国に入る。
154 モミ 樅の枝 高柳は樅の枝を離るる鳶の舞う様を眺めている。
154 周囲一尺もあろうと思われる梁の六角形に削られたのが三本ほど、楽堂を竪に貫ぬいている、
155 所々に模様に崩した草花が、長い蔓と共に六角を絡んでいる
155 梁を纏う唐草のように、縺れ合って、天井から降ってくる。
159 マツ 松の林 図書館の横手に聳える松の林が緑りの色を微かに残して、しだいに黒い影に変って行く。
160 イチョウ 銀杏 大きな銀杏に墨汁を点じたような滴々の烏が乱れている。
160 松林 松林 松林を横切って、博物館の前に出る。
160 落葉 落葉 暮れて行く空に輝くは無数の落葉である。
164 みかん 蜜柑 左に蜜柑をむきながら、その汁を牛乳の中へたらしている書生がある。
164 鉛筆 色鉛筆 折れた所は六号活字で何だか色鉛筆の赤い圏点が一面についている。
164 鉛筆 色鉛筆 恋愛観の結末に同じく色鉛筆で色情狂!!!と書いてある。
172 正面の柱にかかっている、八角時計がぼうんと一時を打つ。
172 柱の下の椅子にぽつ然ねんと腰を掛けていた小女郎が時計の音と共に立ち上がった。
184 喬木 喬木 もう少し立てば喬木(きょうぼく)にうつる時節があるだろうと、
188 カキ 柿の木 杉垣の遥か向に大きな柿の木が見えて、
188 杉垣 杉垣 杉垣の遥か向に大きな柿の木が見えて、
189 カキ 「大変たくさん柿が生っていますね」
189 渋柿 渋柿 「渋柿ですよ。あの和尚は何が惜しくて、ああ渋柿の番ばかりするのかな
189 渋柿 渋柿 「渋柿ですよ。あの和尚は何が惜しくて、ああ渋柿の番ばかりするのかな
191 ウメ こぼれ梅 こぼれ梅を一枚の半襟の表に掃き集めた真中に、
197 オリーブ 橄欖の香 吾が庭の眺めにと橄欖の香の濃く吹くあたりに据えたそうです」
203 サクラ 桜の落葉 だか動物園の前で悲しそうに立って、桜の落葉を眺めているんです。気の毒になってね」
203 落葉 桜の落葉 だか動物園の前で悲しそうに立って、桜の落葉を眺めているんです。気の毒になってね」
205 下駄 下駄 あれはなに、わたしあの人の下駄を見て吃驚(びっくり)したわ。随分薄っぺらなのね。
208 カキ 蛸寺の柿の落ちた事は無論知らぬ。
208 木屑 木屑 木屑のごとく取り扱わるる吾身のはかなくて、
209 アオギリ 梧桐 高柳君はふと眼を挙げて庭前の梧桐を見た。
209 アオギリ 梧桐 高柳君は述作をして眼がつかれると必ずこの梧桐を見る。
210 アオギリ 梧桐 手紙を書いてさえ行き詰まるときっとこの梧桐を見る。
210 アオギリ 梧桐 三坪ほどの荒庭に見るべきものは一本の梧桐を除いてはほかに何にもない
210 アオギリ 梧桐 一葉落ちてと云う句は古い。悲しき秋は必ず梧桐から手を下す。
210 明らさまなる月がさすと枝の数が読まれるくらいあらわに骨が出る。
210 浮き上がるのは薄く流した脂の色である。
210 黄ばんだ梢 黄ばんだ梢は動ぐとも見えぬ先に一葉二葉がはらはら落ちる。
210 危ういと思う心さえなくなるほど梢を離れる
210 一葉落ちて 一葉落ちてと云う句は古い。悲しき秋は必ず梧桐から手を下す。
210 葉はようやく黄ばんで来る。
210 一葉二葉 黄ばんだ梢は動ぐとも見えぬ先に一葉二葉がはらはら落ちる。
210 垣の隙から、椽の下から吹いてくる。
211 アオギリ 梧桐  高柳君がふと眼を挙げた時、梧桐はすべてこれらの径路通り越して、から坊主になっていた。
211 枝の先 窓に近く斜に張った枝の先にただ一枚の虫食葉がかぶりついている。
211 僅かに残る葉を虫が食う。
211 枯れた葉 心細いと枯れた葉が云う。心細かろうと見ている人が云う。
211 ところへ風が吹いて来る。葉はみんな飛んでしまう
213 キリ 一枚の桐の葉 窓の外には落ち損(そく)なった一枚の桐の葉が淋しく残っている。
213 古梅園 古梅園 さかに磨り減らした古梅園をしきりに動かすと、じゃりじゃり云う。
214 病葉 病葉 その振りがようやく収ったと思う頃、颯と音がして、病葉はぽたりと落ちた。
214 一人坊っちの葉 一人坊っちの葉がまた揺れる。
214 椽側 椽側 「傘をとって下さい。わたしの室の椽側にある」
215 マツ 婚礼用の松 奥に婚礼用の松が真青に景気を添える。
215 柏手 柏手 柏手でを打って鈴を鳴らして御賽銭をなげ込んだ後姿が、
216 カシワ 三つ柏の紋 黒縮緬へ三つ柏の紋をつけた意気な芸者がすれ違うときに、高柳君の方に一瞥の秋波を送った。
225 スギ 杉の葉 杉の葉の青きを択んで、丸柱の太きを装い、頭の上一丈にて二本を左右より平に曲げて続ぎ合せたるをアーチと云う。
225 スギ 杉の葉の青きは 杉の葉の青きはあまりに厳に過ぐ。
225 スギ 杉の葉影 点々と珠を綴る杉の葉影に、ゆたかなる南海の風は通う。
225 ミカン 蜜柑の味 裂けば煙(けぶ)る蜜柑の味はしらず、色こそ暖かい。
225 杉の葉 杉の葉の青きを択んで、丸柱の太きを装い、頭の上一丈にて二本を左右より平に曲げて続ぎ合せたるをアーチと云う。
225 葉影 杉の葉影 点々と珠を綴る杉の葉影に、ゆたかなる南海の風は通う。
231 マツ 松の鉢 こんもりと丸くなったのもある。松の鉢も見える
231 ミカン 蜜柑 蜜柑を盛った大皿もある。
231 リンゴ 林檎 玻璃盤(はりばん)に堆(うずた) かく林檎を盛ったのが、白い卓布の上に鮮やかに映る。
232 マツ 松が沢山 橋の向の築山まの傍手には松が沢山ある
232 マツ 松の間 松の間から暖簾のようなものがちらちら見える。
232 棹のようなもの 真白に顔を塗りたてた女が、棹のようなものを持ったり、
237 スギ 杉の環 遠くから振り返って見ると青い杉の環の奥の方に天幕(テント)が小さく映って、
241 木枯 木枯が吹く ひゅうひゅうと木枯が吹く。
244 木枯 木枯 道也先生は例のごとく茶の千筋の嘉平治を木枯にぺらつかすべく一着して飄然と出て行った。
278 木枯 木枯 吹きまくる木枯は屋を撼かして去る。
282 アオギリ 梧桐 例の梧桐が坊主の枝を真直に空に向って曝している。
282 キリ 「淋しい庭だなあ。桐が裸で立っている」
282 キリ この間まで葉が着いてたんだが、早いものだ。裸の桐に月がさすのを見た事があるかい。
282 枝を真直に 例の梧桐が坊主の枝を真直に空に向って曝している。
282 障子 障子 としばらく匙を投げて、すいと起って障子をあける。
282 この間まで葉が着いてたんだが、早いものだ。裸の桐に月がさすのを見た事があるかい。
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