111 |
木強漢 |
木強漢 |
親の恩、兄弟の情、朋友の信、これらを知らぬほどの木強漢んでは無論ない。 |
111 |
椽側 |
椽側 |
炬燵へあたって、椽側の硝子戸越に眺めたばかりである。 |
124 |
ヒノキ |
檜の扉 |
檜の扉に銀のような瓦を載せた門を這入ると、 |
125 |
柱 |
柾の柱 |
磨上げた、柾の柱に象牙の臍をちょっと押すと、 |
126 |
バラ |
薔薇の花 |
丸い卓には、薔薇の花を模様に崩くずした五六輪を、 |
126 |
沓脱 |
沓脱 |
道也先生は親指の凹んで、前緒のゆるんだ下駄を立派な沓脱へ残して、 |
133 |
梶棒 |
梶棒 |
敷石をがらがらと車の軋る音がして梶棒は硝子の扉の前にとまった。 |
133 |
沓脱 |
沓脱 |
「高柳? どうも知らんようです」と沓脱から片足をタタキへおろして、 |
133 |
雪駄 |
雪駄 |
道也先生が扉を開く途端に車上の人はひらり厚い雪駄を御影の上に落した。 |
134 |
カキ |
柿 |
軒の深い菓物屋の奥の方に柿ばかりがあかるく見える。 |
134 |
白木 |
白木 |
机は白木の三宝を大きくしたくらいな単簡なもので、 |
134 |
椽側 |
椽側 |
洋灯を取って、椽側へ出て、手ずから掃除そうじを始めた。 |
138 |
木枯 |
木枯 |
外を木枯が吹いて行く。 |
142 |
炭 |
炭 |
――ちょっとその炭取を取れ。炭をつがないと火種ひだねが切れる」 |
142 |
炭 |
炭 |
――ちょっとその炭取を取れ。炭をつがないと火種ひだねが切れる」 |
144 |
楫 |
楫 |
あなたの楫のとりようでせっかくの私の苦心も何の役にも立たなくなりますわ」 |
146 |
かき餅 |
かき餅 |
火にあぶったかき餅の状は千差万別であるが、 |
146 |
かんな屑 |
かんな屑 |
風にめぐる落葉と攫(さら)われて行くかんな屑とは一種の気狂である。 |
146 |
サクラ |
桜の幹 |
太い桜の幹が黒ずんだ色のなかから、銀のような光りを秋の日に射返して、 |
146 |
サクラ |
桜 |
桜の落葉もがさがさに反り返って、 |
146 |
幹 |
桜の幹 |
太い桜の幹が黒ずんだ色のなかから、銀のような光りを秋の日に射返して、 |
146 |
枝 |
枝 |
ここかしこに枝を辞したる古い奴ががさついている。 |
146 |
梢 |
梢 |
梢を離れる病葉は風なき折々行人こうじんの肩にかかる。 |
146 |
病葉 |
病葉 |
梢を離れる病葉は風なき折々行人こうじんの肩にかかる。 |
146 |
落葉 |
落葉 |
桜の落葉もがさがさに反り返って、 |
146 |
落葉 |
落葉 |
風にめぐる落葉と攫(さら)われて行くかんな屑とは一種の気狂である。 |
154 |
モミ |
樅の木 |
高い樅の木が半分見えて後ろは遐の空の国に入る。 |
154 |
モミ |
樅の枝 |
高柳は樅の枝を離るる鳶の舞う様を眺めている。 |
154 |
梁 |
梁 |
周囲一尺もあろうと思われる梁の六角形に削られたのが三本ほど、楽堂を竪に貫ぬいている、 |
155 |
蔓 |
蔓 |
所々に模様に崩した草花が、長い蔓と共に六角を絡んでいる |
155 |
梁 |
梁 |
梁を纏う唐草のように、縺れ合って、天井から降ってくる。 |
159 |
マツ |
松の林 |
図書館の横手に聳える松の林が緑りの色を微かに残して、しだいに黒い影に変って行く。 |
160 |
イチョウ |
銀杏 |
大きな銀杏に墨汁を点じたような滴々の烏が乱れている。 |
160 |
松林 |
松林 |
松林を横切って、博物館の前に出る。 |
160 |
落葉 |
落葉 |
暮れて行く空に輝くは無数の落葉である。 |
164 |
みかん |
蜜柑 |
左に蜜柑をむきながら、その汁を牛乳の中へたらしている書生がある。 |
164 |
鉛筆 |
色鉛筆 |
折れた所は六号活字で何だか色鉛筆の赤い圏点が一面についている。 |
164 |
鉛筆 |
色鉛筆 |
恋愛観の結末に同じく色鉛筆で色情狂!!!と書いてある。 |
172 |
柱 |
柱 |
正面の柱にかかっている、八角時計がぼうんと一時を打つ。 |
172 |
柱 |
柱 |
柱の下の椅子にぽつ然ねんと腰を掛けていた小女郎が時計の音と共に立ち上がった。 |
184 |
喬木 |
喬木 |
もう少し立てば喬木(きょうぼく)にうつる時節があるだろうと、 |
188 |
カキ |
柿の木 |
杉垣の遥か向に大きな柿の木が見えて、 |
188 |
杉垣 |
杉垣 |
杉垣の遥か向に大きな柿の木が見えて、 |
189 |
カキ |
柿 |
「大変たくさん柿が生っていますね」 |
189 |
渋柿 |
渋柿 |
「渋柿ですよ。あの和尚は何が惜しくて、ああ渋柿の番ばかりするのかな |
189 |
渋柿 |
渋柿 |
「渋柿ですよ。あの和尚は何が惜しくて、ああ渋柿の番ばかりするのかな |
191 |
ウメ |
こぼれ梅 |
こぼれ梅を一枚の半襟の表に掃き集めた真中に、 |
197 |
オリーブ |
橄欖の香 |
吾が庭の眺めにと橄欖の香の濃く吹くあたりに据えたそうです」 |
203 |
サクラ |
桜の落葉 |
だか動物園の前で悲しそうに立って、桜の落葉を眺めているんです。気の毒になってね」 |
203 |
落葉 |
桜の落葉 |
だか動物園の前で悲しそうに立って、桜の落葉を眺めているんです。気の毒になってね」 |
205 |
下駄 |
下駄 |
あれはなに、わたしあの人の下駄を見て吃驚(びっくり)したわ。随分薄っぺらなのね。 |
208 |
カキ |
柿 |
蛸寺の柿の落ちた事は無論知らぬ。 |
208 |
木屑 |
木屑 |
木屑のごとく取り扱わるる吾身のはかなくて、 |
209 |
アオギリ |
梧桐 |
高柳君はふと眼を挙げて庭前の梧桐を見た。 |
209 |
アオギリ |
梧桐 |
高柳君は述作をして眼がつかれると必ずこの梧桐を見る。 |
210 |
アオギリ |
梧桐 |
手紙を書いてさえ行き詰まるときっとこの梧桐を見る。 |
210 |
アオギリ |
梧桐 |
三坪ほどの荒庭に見るべきものは一本の梧桐を除いてはほかに何にもない |
210 |
アオギリ |
梧桐 |
一葉落ちてと云う句は古い。悲しき秋は必ず梧桐から手を下す。 |
210 |
枝 |
枝 |
明らさまなる月がさすと枝の数が読まれるくらいあらわに骨が出る。 |
210 |
脂 |
脂 |
浮き上がるのは薄く流した脂の色である。 |
210 |
梢 |
黄ばんだ梢 |
黄ばんだ梢は動ぐとも見えぬ先に一葉二葉がはらはら落ちる。 |
210 |
梢 |
梢 |
危ういと思う心さえなくなるほど梢を離れる |
210 |
葉 |
一葉落ちて |
一葉落ちてと云う句は古い。悲しき秋は必ず梧桐から手を下す。 |
210 |
葉 |
葉 |
葉はようやく黄ばんで来る。 |
210 |
葉 |
一葉二葉 |
黄ばんだ梢は動ぐとも見えぬ先に一葉二葉がはらはら落ちる。 |
210 |
椽 |
垣 |
垣の隙から、椽の下から吹いてくる。 |
211 |
アオギリ |
梧桐 |
高柳君がふと眼を挙げた時、梧桐はすべてこれらの径路通り越して、から坊主になっていた。 |
211 |
枝 |
枝の先 |
窓に近く斜に張った枝の先にただ一枚の虫食葉がかぶりついている。 |
211 |
葉 |
葉 |
僅かに残る葉を虫が食う。 |
211 |
葉 |
枯れた葉 |
心細いと枯れた葉が云う。心細かろうと見ている人が云う。 |
211 |
葉 |
葉 |
ところへ風が吹いて来る。葉はみんな飛んでしまう |
213 |
キリ |
一枚の桐の葉 |
窓の外には落ち損(そく)なった一枚の桐の葉が淋しく残っている。 |
213 |
古梅園 |
古梅園 |
さかに磨り減らした古梅園をしきりに動かすと、じゃりじゃり云う。 |
214 |
病葉 |
病葉 |
その振りがようやく収ったと思う頃、颯と音がして、病葉はぽたりと落ちた。 |
214 |
葉 |
一人坊っちの葉 |
一人坊っちの葉がまた揺れる。 |
214 |
椽側 |
椽側 |
「傘をとって下さい。わたしの室の椽側にある」 |
215 |
マツ |
婚礼用の松 |
奥に婚礼用の松が真青に景気を添える。 |
215 |
柏手 |
柏手 |
柏手でを打って鈴を鳴らして御賽銭をなげ込んだ後姿が、 |
216 |
カシワ |
三つ柏の紋 |
黒縮緬へ三つ柏の紋をつけた意気な芸者がすれ違うときに、高柳君の方に一瞥の秋波を送った。 |
225 |
スギ |
杉の葉 |
杉の葉の青きを択んで、丸柱の太きを装い、頭の上一丈にて二本を左右より平に曲げて続ぎ合せたるをアーチと云う。 |
225 |
スギ |
杉の葉の青きは |
杉の葉の青きはあまりに厳に過ぐ。 |
225 |
スギ |
杉の葉影 |
点々と珠を綴る杉の葉影に、ゆたかなる南海の風は通う。 |
225 |
ミカン |
蜜柑の味 |
裂けば煙(けぶ)る蜜柑の味はしらず、色こそ暖かい。 |
225 |
葉 |
杉の葉 |
杉の葉の青きを択んで、丸柱の太きを装い、頭の上一丈にて二本を左右より平に曲げて続ぎ合せたるをアーチと云う。 |
225 |
葉影 |
杉の葉影 |
点々と珠を綴る杉の葉影に、ゆたかなる南海の風は通う。 |
231 |
マツ |
松の鉢 |
こんもりと丸くなったのもある。松の鉢も見える |
231 |
ミカン |
蜜柑 |
蜜柑を盛った大皿もある。 |
231 |
リンゴ |
林檎 |
玻璃盤(はりばん)に堆(うずた) かく林檎を盛ったのが、白い卓布の上に鮮やかに映る。 |
232 |
マツ |
松が沢山 |
橋の向の築山まの傍手には松が沢山ある |
232 |
マツ |
松の間 |
松の間から暖簾のようなものがちらちら見える。 |
232 |
棹 |
棹のようなもの |
真白に顔を塗りたてた女が、棹のようなものを持ったり、 |
237 |
スギ |
杉の環 |
遠くから振り返って見ると青い杉の環の奥の方に天幕(テント)が小さく映って、 |
241 |
木枯 |
木枯が吹く |
ひゅうひゅうと木枯が吹く。 |
244 |
木枯 |
木枯 |
道也先生は例のごとく茶の千筋の嘉平治を木枯にぺらつかすべく一着して飄然と出て行った。 |
278 |
木枯 |
木枯 |
吹きまくる木枯は屋を撼かして去る。 |
282 |
アオギリ |
梧桐 |
例の梧桐が坊主の枝を真直に空に向って曝している。 |
282 |
キリ |
桐 |
「淋しい庭だなあ。桐が裸で立っている」 |
282 |
キリ |
桐 |
この間まで葉が着いてたんだが、早いものだ。裸の桐に月がさすのを見た事があるかい。 |
282 |
枝 |
枝を真直に |
例の梧桐が坊主の枝を真直に空に向って曝している。 |
282 |
障子 |
障子 |
としばらく匙を投げて、すいと起って障子をあける。 |
282 |
葉 |
葉 |
この間まで葉が着いてたんだが、早いものだ。裸の桐に月がさすのを見た事があるかい。 |