5 |
縁側 |
縁側の窮屈な寸法 |
その空が自分の寝ている縁側の窮屈な寸法に較べて見ると、非常に広大である。 |
5 |
下駄 |
下駄の響が |
往来を行く人の下駄の響が、静かな町だけに、朗らかに聞えて来る。 |
5 |
障子 |
障子 |
今度はぐるりと寝返りをして障子の方を向いた。 |
5 |
障子 |
障子 |
障子の中では細君が裁縫障子の中では細君が裁縫をしている。 |
6 |
縁側 |
縁側に |
二三分して、細君は障子の硝子の所へ顔を寄せて、縁側に寝ている夫の姿を覗いて見た。 |
6 |
障子 |
障子 |
二三分して、細君は障子の硝子の所へ顔を寄せて、縁側に寝ている夫の姿を覗いて見た。 |
6 |
障子 |
障子越し |
急に思い出したように、障子越しの細君を呼んで、 |
7 |
縁側 |
縁側へ |
細君は立て切った障子を半分ばかり開けて、敷居の外へ長い物指を出して、その先で近の字を縁側へ書いて見せて、 |
7 |
障子 |
障子 |
細君は立て切った障子を半分ばかり開けて、敷居の外へ長い物指を出して、その先で近の字を縁側へ書いて見せて、 |
7 |
敷居 |
敷居の外へ |
細君は立て切った障子を半分ばかり開けて、敷居の外へ長い物指を出して、その先で近の字を縁側へ書いて見せて、 |
8 |
縁 |
縁鼻から |
縁鼻から聳えているので、朝の内は当って然るべきはずの日も容易に影を落さない。 |
8 |
襖 |
襖を開けると |
針箱と糸屑の上を飛び越すように跨いで、茶の間の襖を開けると、すぐ座敷である。 |
8 |
障子 |
突き当りの障子 |
突き当りの障子が、日向から急に這入って来た眸には、うそ寒く映った。 |
8 |
廂 |
廂 |
廂に逼ような勾配の崖が、縁鼻から聳えているので、 |
9 |
幹 |
幹に |
それが多少黄に染まって、幹に日の射すときなぞは、 |
9 |
幹 |
幹の頂に |
幹の頂に濃かな葉が集まって、まるで坊主頭のように見える。 |
9 |
蔦 |
蔦 |
薄だの蔦だのと云う洒落ものに至ってはさらに見当らない。 |
9 |
葉 |
重なった葉 |
寂りと重なった葉が一枚も動かない。 |
10 |
襖 |
襖越ごし |
襖越に細君に聞いた。 |
10 |
欄間 |
欄間 |
欄間には額も何もない。 |
11 |
縁 |
縁伝に |
座を立ったが、これは茶の間の縁伝に玄関に出た。 |
11 |
格子 |
格子 |
三十分ばかりして格子ががらりと開あいたので |
11 |
炭 |
炭を |
一寸鉄瓶をおろして炭を継ぎ始めた。 |
12 |
炭取 |
炭取を |
横にあった炭取を取り退けて、袋戸棚を開けた |
15 |
桟 |
桟の上 |
刷毛を取ってとんとんとんと桟の上を渡した。 |
19 |
一枚板 |
一枚板 |
梯子のような細長い枠へ紙を張ったり、ペンキ塗の一枚板へ模様画みたような色彩を施こしたりしてある。 |
19 |
梯子 |
梯子のような |
梯子のような細長い枠へ紙を張ったり、ペンキ塗の一枚板へ模様画みたような色彩を施こしたりしてある。 |
19 |
楊枝 |
楊枝のような |
それが尻の穴へ楊枝のような細いものを突っ込むとしゅうっと一度に収縮してしまう。 |
20 |
樹 |
樹の多い |
宗助も樹の多い方角に向いて早足に歩を移した。 |
21 |
下駄 |
下駄の上へ |
小六の脱ぎ棄すてた下駄の上へ、気がつかずに足を乗せた。 |
21 |
杉垣 |
杉垣の奥に |
ついこの間までは疎らな杉垣の奥に、御家人でも住み古したと思われる、 |
21 |
杉垣 |
杉垣 |
杉垣を引き抜いて、今のような新らしい普請に建て易えてしまった。 |
21 |
普請 |
普請 |
杉垣を引き抜いて、今のような新らしい普請に建て易えてしまった。 |
23 |
縁側 |
縁側 |
座敷の雨戸を引きに縁側へ出た |
24 |
敷居 |
敷居を跨がず |
ややともすると三日も四日もまるで銭湯の敷居を跨がずに過してしまう。 |
26 |
御櫃 |
御櫃の葢を |
御櫃の葢を開けて、夫の飯を盛よそいながら、 |
26 |
箸 |
箸を |
小六も正式に箸を取り上げた。 |
26 |
椀 |
椀の葢の上へ |
それを椀の葢の上へ載せて、その特色を説明して聞かせた。 |
26 |
葢 |
椀の葢の上へ |
それを椀の葢の上へ載せて、その特色を説明して聞かせた。 |
26 |
葢 |
御櫃の葢を |
御櫃の葢を開けて、夫の飯を盛よそいながら、 |
30 |
藤蔓 |
藤蔓の着いた |
藤蔓の着いた大きな急須から、胃にも頭にも応えない番茶を、 |
31 |
下駄 |
薄歯の下駄 |
時々表を通る薄歯の下駄の響が冴えて、夜寒がしだいに増して来る |
36 |
楊枝 |
小楊枝 |
宗助は下眼を使って、手に持った小楊枝を着物の襟へ差した。 |
40 |
カキ |
大きな柿の木 |
大きな柿の木の下で蝉の捕りくらをしているのを、 |
40 |
縁 |
縁から |
宗助は縁から跣足で飛んで下りて、 |
54 |
柄杓 |
柄杓 |
手を洗おうとして、柄杓を持ったまま卒倒したなり、 |
57 |
縁 |
座敷の縁 |
その晩宗助は裏から大きな芭蕉の葉を二枚剪って来て、それを座敷の縁に敷いて、 |
57 |
格子 |
格子 |
暗い玄関の敷居の上に立って、格子の外に射す夕日をしばらく眺めていた。 |
57 |
敷居 |
敷居 |
暗い玄関の敷居の上に立って、格子の外に射す夕日をしばらく眺めていた。 |
63 |
葛 |
葛 |
下に萩、桔梗、芒、葛、女郎花を隙間なく描いた上に、 |
63 |
葛 |
葛の葉 |
葛の葉の風に裏を返している色の乾いた様から、 |
63 |
萩 |
萩 |
下に萩、桔梗、芒、葛、女郎花を隙間なく描いた上に、 |
65 |
庇 |
庇の下から |
また細い空を庇の下から覗いて見て |
71 |
柱時計 |
柱時計 |
柱時計の振子の音だけが聞える事も稀ではなかった。 |
77 |
箸 |
箸 |
話しながら箸を取っている際に、どうした拍子か |
78 |
楊枝 |
楊枝を |
わざと痛い所を避けて楊枝を使いながら、 |
82 |
マツ |
鉢栽の松 |
そこにあった高さ五尺もあろうと云う大きな鉢栽の松が宗助の眼に這入った。 |
82 |
植木屋 |
植木屋 |
草鞋がけの植木屋が丁寧に薦で包んでいた |
83 |
縁側 |
縁側 |
しきりに含嗽(うがいょを始めた。その時彼は縁側へ立ったまま、 |
85 |
くわ |
桑の鏡台 |
御米は六畳に置きつけた桑の鏡台を眺めて、 |
86 |
柳行李 |
柳行李 |
上には支那鞄んと柳行李が二つ三つ載っていた。 |
87 |
格子 |
格子 |
その日は例になく元気よく格子を明けて、 |
88 |
マツ |
盆栽の松の根 |
植木屋が薦で盆栽の松の根を包んでいたので、つくづくそう思った」 |
88 |
根 |
盆栽の松の根 |
植木屋が薦で盆栽の松の根を包んでいたので、つくづくそう思った」 |
88 |
盆栽 |
盆栽の松の根 |
植木屋が薦で盆栽の松の根を包んでいたので、つくづくそう思った」 |
92 |
垣 |
垣 |
垣に雀の鳴く小春日和になった。 |
92 |
床の間 |
床の間 |
と云って、残る一方へ立てれば床の間を隠すので |
94 |
シタン |
紫檀の茶棚 |
それから紫檀の茶棚が一つ二つ飾ってあったが、いずれも狂の出そうな生なものばかりであった。 |
99 |
スギ |
円明寺の杉 |
円明寺の杉が焦げたように赭黒なった。 |
100 |
縁 |
縁の下 |
縁の下に植木鉢がたくさん並んでるわ |
100 |
植木 |
植木を弄って |
「御爺さんはやっぱり植木を弄っているかい」 |
100 |
植木鉢 |
植木鉢 |
縁の下に植木鉢がたくさん並んでるわ |
101 |
垣 |
垣が腐った |
垣が腐ったと訴えればすぐ植木屋に手を入れさしてくれるのは矛盾だと思ったのである。 |
102 |
襖 |
間の襖 |
間の襖を開けて茶の間へ出た |
102 |
障子 |
腰障子 |
腰障子の紙だけが白く見えた。 |
102 |
植木 |
植木鉢 |
その晩宗助の夢には本多の植木鉢も坂井のブランコもなかった。 |
102 |
箪笥 |
箪笥の環 |
御米は鈍く光る箪笥の環を認めた。 |
103 |
縁 |
縁の外へ |
裏の崖から自分達の寝ている座敷の縁の外へ転がり落ちたとしか思われなかった。 |
104 |
雨戸 |
雨戸 |
縁側へ出て、雨戸を一枚繰った。 |
104 |
縁側 |
縁側 |
縁側へ出て、雨戸を一枚繰った。 |
104 |
戸 |
戸 |
宗助はすぐ戸を閉(た)てた |
104 |
森 |
森と静で |
けれども世間は森(しん)と静であった。 |
105 |
下駄 |
下駄の音 |
下駄の音を高く立てて往来を通るものがあった。 |
106 |
雨戸 |
雨戸 |
そうして直崖下の雨戸を繰った |
106 |
襖 |
襖 |
そこへ清の手にした灯火の影が、襖の間から射し込んだ。 |
107 |
下駄 |
下駄 |
宗助は玄関から下駄を提げて来て、すぐ庭へ下りた |
107 |
杉垣 |
杉垣 |
元は枯枝の交った杉垣があって、隣の庭の仕切りになっていたが、 |
107 |
杉垣 |
杉垣 |
この秋海棠は杉垣のまだ引き抜かれない前から |
107 |
板塀 |
節の多い板塀 |
今では節の多い板塀が片側を勝手口まで塞いでしまった |
108 |
塀 |
塀の根に |
塀の根に打ちつけられたごとくに引っ繰り返って、 |
111 |
カナメモチ |
扇骨木 |
宗助は石の上へ芝を盛って扇骨木(かなめ )を奇麗に植えつけた垣に沿うて門内に入った。 |
111 |
垣 |
垣 |
宗助は石の上へ芝を盛って扇骨木(かなめ )を奇麗に植えつけた垣に沿うて門内に入った。 |
111 |
障子 |
腰障子 |
そこにも摺硝子の嵌まった腰障子が二枚閉ててあった |
111 |
板の間 |
板の間 |
瓦斯七輪を置いた板の間に蹲踞んでいる下女に挨拶をし |
111 |
板の間 |
板の間の仕切 |
文庫を持ったまま、板の間の仕切まで行って、 |
112 |
板の間 |
板の間 |
米沢の絣を着た膝を板の間に突いて、 |
113 |
桶 |
小桶の中へ |
それを台所にあった小桶の中へ立てて、 |
115 |
障子 |
障子の張替 |
今日の障子の張替を手伝わなければならない事となった。 |
115 |
障子 |
障子 |
「姉さん、障子を張るときは、よほど慎重にしないと失策です。 |
115 |
敷居 |
敷居の溝 |
二枚とも反っ繰り返って敷居の溝へ嵌まらなかった |
118 |
戸袋 |
戸袋 |
戸袋に立て懸けた張り立ての障子を眺めた。 |
118 |
戸袋 |
戸袋 |
台所から清が持って来た含嗽茶碗を受け取って、戸袋の前へ立って、 |
119 |
櫃 |
御櫃を置いて |
だから突然この小舅とと自分の間に御櫃を置いて、 |
120 |
障子 |
障子 |
それで二人とも障子を張るときよりも言葉少なに食事を済ました。 |
130 |
戸 |
戸 |
座敷の戸を締めに立った。 |
130 |
戸 |
戸 |
ちと洋灯を点けるとか、戸を閉てるとかして |
130 |
障子 |
障子 |
そのうち、障子だけがただ薄白く宗助の眼に映るように、 |
130 |
膳 |
膳 |
、晩食の膳に着いた時は |
132 |
櫓 |
櫓 |
とうとう櫓と掛蒲団んを清に云いつけて、座敷へ運ばした。 |
133 |
カナメモチ |
扇骨木の枝 |
落ちないように、扇骨木の枝に寄せ掛けた手際てぎわが |
133 |
襖 |
襖 |
下女が茶を運ぶために襖を開けると |
133 |
襖 |
襖 |
襖の影から大きな眼が四つほどすでに宗助を覗いていた。 |
133 |
襖 |
襖 |
襖の開閉のたびに出る顔がことごとく違っていて、 |
133 |
枝 |
扇骨木の枝 |
落ちないように、扇骨木の枝に寄せ掛けた手際てぎわが |
133 |
生垣 |
生垣 |
玄関と勝手口の仕切になっている生垣の目に、 |
137 |
襖 |
襖 |
天井の柾目や、床の置物や、襖の模様などの中に、 |
137 |
柾目 |
天井の柾目 |
天井の柾目や、床の置物や、襖の模様などの中に、 |
148 |
モミジ |
紅葉 |
紅葉の赤黒く縮れる頃であった。 |
150 |
障子 |
障子の紙 |
陰気な障子の紙を透とおして、 |
151 |
襖 |
襖 |
小六は六畳から出て来て、一寸襖を開けて、 |
154 |
小柄 |
小柄 |
忽ち小柄(こづか)を抜くや否や、肩先を切って血を出したため、 |
155 |
下駄 |
下駄 |
ごそごそ下駄を探しているところへ、旨い具合に外から小六が帰って来た。 |
158 |
塩梅 |
好い塩梅 |
「好い塩梅だ」と宗助が御米の顔を見ながら云った。 |
159 |
縁側 |
縁側 |
宗助はいつものように縁側から茶の間へ行かずに、 |
159 |
格子 |
格子 |
格子を開けて、靴を脱いで、玄関に上がっても、 |
160 |
桶 |
小桶 |
流し元の小桶の中に茶碗と塗椀が洗わないまま浸けてあった。 |
160 |
御櫃 |
御櫃 |
御櫃(おはち)に倚よりかかって突伏していた。 |
160 |
塗椀 |
塗椀 |
流し元の小桶の中に茶碗と塗椀が洗わないまま浸けてあった。 |
164 |
敷居 |
髪結床の敷居 |
宗助そうすけは久し振に髪結床の敷居を跨またいだ |
165 |
止り木 |
止り木 |
鳥が止り木の上をちらりちらりと動いた。 |
166 |
縁側 |
縁側の障子 |
細君は火鉢を離れて、少し縁側の障子の方へ寄って、 |
166 |
襖 |
襖が |
すると茶の間の襖が二尺ばかり開あいていて、 |
166 |
障子 |
縁側の障子 |
細君は火鉢を離れて、少し縁側の障子の方へ寄って、 |
166 |
袋戸棚 |
袋戸棚 |
左が袋戸棚になっていた。 |
167 |
クワ |
桑を植えて |
やむを得ず桑を植えて蚕を飼うんだそうであるが、 |
173 |
床の間 |
床の間 |
洋灯はいつものように床の間の上に据すえてあった。 |
177 |
格 |
格 |
自分の家の格子の前に立った。 |
177 |
板 |
板の上 |
青い苔の生えている濡れた板の上へ尻持を突いた。 |
180 |
ウルシ |
黒い漆 |
位牌には黒い漆で戒名が書いてあった。 |
183 |
算木 |
算木 |
算木(さんぎ)をいろいろに並べて見たり、筮竹(ぜいちく)を揉(も)んだり数えたりした後で、 |
184 |
床の間 |
床の間 |
宗助は床の間に乗せた細い洋灯の灯が、夜の中に沈んで行きそうな静かな晩に |
190 |
マツ |
松の幹 |
松の幹の染めたように赤いのが、 |
190 |
平板 |
平板 |
凡(すべ)てがやがて、平板に見えだして来た。 |
191 |
紅葉 |
花や紅葉 |
再び去年の記憶を呼び戻すために、花や紅葉を迎える必要がなくなった。 |
192 |
社 |
社 |
彼は多くの剥げかかった社(やしろ)と |
192 |
松原 |
保の松原 |
興津あたりで泊って、清見寺や三保の松原や、 |
194 |
行李 |
行李 |
宗助はまたを麻縄で絡げて、京都へ向う支度をしなければならなくなった。 |
194 |
樟脳 |
樟脳 |
下女の買って来た樟脳を、小さな紙片に取り分けては、 |
194 |
樟脳 |
樟脳の高い香 |
この樟脳の高い香と、汗の出る土用と |
196 |
社 |
加茂の社 |
安井のいる所は樹と水の多い加茂の社の傍であった |
196 |
樹 |
樹と水 |
安井のいる所は樹と水の多い加茂の社の傍であった |
199 |
ヤナギ |
柳が一本 |
門口に誰の所有ともつかない柳が一本あって |
199 |
格子 |
柱や格子 |
柱や格子を黒赤く塗って、わざと古臭く見せた狭い貸家であった。 |
199 |
枝 |
長い枝 |
長い枝がほとんど軒に触りそうに風に吹かれる様を宗助は見た。 |
199 |
柱 |
柱や格子 |
柱や格子を黒赤く塗って、わざと古臭く見せた狭い貸家であった。 |
199 |
敷居 |
敷居の腐った |
裏には敷居の腐った物置が空のままがらんと立っている後に、 |
200 |
格子 |
格子 |
彼は格子の前で傘を畳んで、 |
200 |
格子 |
格子 |
格子の内は三和土(たたき)で、 |
200 |
格子 |
格子 |
それから格子を開けた。玄関へは安井自身が現れた。 |
201 |
ウメ |
梅の木 |
垣根に沿うた小さな梅の木を見ると、 |
201 |
垣根 |
垣根 |
垣根に沿うた小さな梅の木を見ると、 |
203 |
手桶 |
手桶 |
古びた流しの傍に置かれた新らし過ぎる手桶を眺めて、 |
204 |
ヤナギ |
柳の下 |
御米は傘を差したまま、それほど涼しくもない柳の下に寄った。 |
204 |
ヤナギ |
柳の葉の色 |
宗助は白い筋を縁に取った紫の傘の色と、まだ褪め切らない柳の葉の色を、一歩遠退いて眺め合わした事を記憶していた。 |
206 |
紅葉 |
紅葉 |
紅葉も三人で観た。 |
206 |
杖 |
杖 |
細い傘を杖にした。 |
207 |
木の葉 |
木の葉 |
木の葉がいつの間にか落ちてしまった。 |
207 |
柳行李 |
柳行李 |
安井は心ならず押入の中の柳行李に麻縄を掛けた |
208 |
マツ |
松の幹 |
次の日三人は表へ出て遠く濃い色を流す海を眺めた。松の幹から脂の出る空気を吸った |
209 |
サクラ |
桜の花 |
散り尽した桜の花が若葉に色を易(か)える頃に終った。 |
209 |
マツ |
松を鳴らして |
ただ時々松を鳴らして過ぎた。 |
209 |
若葉 |
若葉 |
散り尽した桜の花が若葉に色を易(か)える頃に終った。 |
211 |
ウメ |
墨画の梅 |
床にはいかがわしい墨画の梅が、蛤の格好をした月を吐いてかかっていた。 |
211 |
ダイダイ |
赤い橙 |
それから大きな赤い橙を御供の上に載せて、床の間に据えた。 |
211 |
松 |
細い松 |
宗助も二尺余りの細い松を買って、門の柱に釘付にした。 |
211 |
柱 |
門の柱に |
宗助も二尺余りの細い松を買って、門の柱に釘付にした。 |
214 |
下駄 |
下駄を揃えた |
勝手口へ行って、御米の下駄を揃えた。 |
214 |
薪屋 |
薪屋 |
御米はまだ薪屋が一軒残っていると答えた。 |
214 |
框 |
框から |
御米はその時もう框から下おりかけていた。 |
215 |
桶 |
桶を |
「どうも込んで込んで、洗う事も桶を取る事もできないくらいなの」 |
216 |
ウメ |
梅の花 |
それから鈴を着けた、梅の花の形に縫った御手玉を宗助の前に置いて、 |
219 |
ウメ |
梅の花 |
その晩小六は大晦日に買った梅の花の御手玉を袂に入れて、 |
221 |
シュロ |
棕梠の筆 |
そこには棕梠の筆で書いたような、大きな硬こわい字が五字ばかり床の間にかかっていた。 |
222 |
木皿 |
木皿 |
木皿のような菓子皿のようなものを、一つ前に置いた。 |
222 |
木皿 |
木皿 |
木皿の上には護謨毬ほどな大きな田舎饅頭が一つ載せてあった。 |
223 |
箸 |
箸とも楊枝とも |
主人は箸とも楊枝とも片のつかないもので |
223 |
楊枝とも |
箸とも楊枝とも |
主人は箸とも楊枝とも片のつかないものでで |
228 |
カシ |
六角の樫の棒 |
けれども鞘の格好はあたかも六角の樫の棒のように厚かった。 |
228 |
柱 |
床の柱 |
主人は思いついたように、床の柱に懸けた、 |
228 |
箸 |
この箸 |
そうしてこの箸で傍から食うんだそうです |
228 |
柄 |
柄の |
柄の後に細い棒が二本並んで差さっていた |
228 |
棒 |
細い棒 |
柄の後に細い棒が二本並んで差さっていた |
228 |
棒 |
細い棒 |
柄の後に細い棒が二本並んで差さっていた。 |
228 |
棒 |
棒 |
後に差してあった象牙のような棒も二本抜いて見せた。 |
246 |
床の間 |
床の間 |
例のごとく洋灯が暗くして床の間の上に載せてあった。 |
250 |
スギ |
杉 |
山門を入ると、左右には大きな杉があって |
250 |
樹 |
樹の色 |
後の方は樹の色で高く塞ふさがっていた。 |
251 |
垣 |
垣を繞らして |
平地に垣を繞らして |
252 |
下駄 |
下駄を脱いで |
二人は庫裡に下駄を脱いで、障子を開けて内へ這入った。 |
252 |
障子 |
障子を開けて |
二人は庫裡に下駄を脱いで、障子を開けて内へ這入った。 |
254 |
障子 |
障子 |
その外にある六畳の座敷の障子を縁から開けて、 |
255 |
縁 |
縁 |
縁に欄干のある座敷が突き出しているところが、 |
255 |
敷居 |
敷居の |
丁寧に敷居の上に膝を突いた。 |
260 |
薪 |
薪を |
見ると彼は左の手でしきりに薪を差し易かえながら、 |
262 |
雑木 |
雑木山 |
鼻の先にはすぐ雑木山が見えた。 |
265 |
縁側 |
縁側 |
縁側に出て、高い庇を仰ぐと、 |
265 |
幹 |
大きな樹の幹 |
その提灯は一方に大きな樹の幹を想像するせいか、 |
265 |
枝 |
枝 |
風は朝から枝を吹かなかった |
265 |
枝 |
樹の枝 |
大きな樹の枝が左右から二人の頭に蔽被さるように空を遮った |
265 |
樹 |
大きな樹 |
大きな樹の枝が左右から二人の頭に蔽被さるように空を遮った |
265 |
樹 |
大きな樹の幹 |
その提灯は一方に大きな樹の幹を想像するせいか、 |
265 |
庇 |
高い庇 |
縁側に出て、高い庇を仰ぐと、 |
265 |
葉 |
蒼い葉 |
闇だけれども蒼い葉の色が二人の着物の織目に染み込むほどに宗助を寒がらせた。 |
266 |
下駄 |
下駄 |
一二度下駄げたの台を引っ掛けた |
266 |
下駄 |
下駄 |
玄関を入ると、暗い土間に下駄がだいぶ並んでいた。 |
267 |
撞木 |
撞木 |
袴を着けた男は、台の上にある撞木を取り上げて、 |
267 |
木の枠 |
木の枠 |
そこには高さ二尺幅一尺ほどの木の枠の中に |
269 |
撞木 |
撞木 |
自分は人並にこの鐘を撞木で敲くべき権能がないのを知っていた |
269 |
敷居 |
敷居 |
宗助はその敷居際へ来て留まった。 |
269 |
敷居 |
敷居際 |
宗助は敷居際に跪まずいて形のごとく拝を行なった。 |
270 |
カキ |
渋に似た柿 |
彼は全身に渋に似た柿に似た茶に似た色の法衣を纏とっていた。足 |
274 |
マツ |
松の間 |
屋根瓦を厳めしく重ねた高い軒が、松の間に仰あおがれた。 |
274 |
柱 |
古い柱 |
色の変った畳の色が古い柱と映り合って |
280 |
閂 |
門の閂 |
彼はどうしたらこの門の閂(かんのき)を開ける事ができるかを考えた。 |
282 |
スギ |
杉の色 |
甍(いらか)を圧する杉の色が、冬を封じて黒く彼の後に聳えた。 |
282 |
櫛 |
櫛の歯を |
いまだかつて櫛の歯を通した事がなかった |
282 |
敷居 |
敷居を跨いだ |
家の敷居を跨いだ宗助は、 |
286 |
床柱 |
床柱 |
宗助は床柱の中途を華やかに彩どる袋に眼を着けて、 |
286 |
柱 |
書斎の柱 |
書斎の柱には、例のごとく錦の袋に入れた蒙古刀が振ら下がっていた |
2140 |
障子 |
腰障子 |
すぐ腰障子を開ける音がした。 |
2920 |
ウメ |
梅 |
梅がちらほらと眼に入いるようになった。早いのはすでに色を失なって散りかけた。 |