保安林はどんな働きをしているの?
森林は、美しい景観やきれいな空気の提供してくれ、水源を守り、洪水などの災害を防いだり、海岸では潮害を防ぎ、飛砂の害から家や田畑を守ってくれるなど、いろいろな働きをしています。
そこで、国や都道府県では、とくに大切に保護しなければならない森林を、
「森林法」という法律に基づいて「保安林」に指定し、
森林のいろいろな役割を十分に発揮できるよう、伐採を禁止したり、
制限したりして、適切な管理を行っています。
現在、保安林には、国有林372万6000ヘクタール、
民有林359万2000ヘクタール、合計約700万ヘクタールが
指定されており、これはわが国の森林総面積の約30%を占めています。
保安林の実際の働きとしては、つぎの16種類が定められています。
①水源涵養(かんよう)保安林
②土砂流出防備保安林
③土砂崩壊防備保安林
④飛砂防備保安林
⑤防風保安林
⑥水害防備保安林
⑦潮害防備保安林
⑧干害防備保安林
⑨防霧保安林
⑩雪崩(なだれ)防止保安林
⑪落石防止保安林
⑫防火保安林
⑬魚つき保安林
⑭航行目標保安林
⑮保健保安林
⑯風致保安林
以上、一番多いのが水源涵養(かんよう)保安林で
540万ヘクタール強、全体の74%を占めてます。
下記に我が国の保安林のうち代表的なものについて紹介します。
「防風保安林」や「潮害防備保安林」は、森林が風に対して、
ちょうど衝立(ついたて)のような役割をするわけですが、
この働きは樹木の高さの20~25倍もの広い地域に及びます。
また海岸の近くの保安林の特徴として、
そこの道路は必ず曲線を描いています。
というのも、真っ直ぐな道を通すと、風の通り道となって、
効果がおちてしまうからです。
また、「雪崩(なだれ)防止保安林」は、雪崩の原因となる雪庇(せつび)
(山の稜線(りょうせん)の風下側に庇(ひさし)のように突き出した
雪の吹き溜まり)ができるのを防いだり、いったん滑り出した雪崩の勢いを
弱めたり、方向をかえる働きをするものです。
このように保安林にはそれぞれ大切な役目があるため、
保安林に指定せれると、立木の伐採についての制限、
土地の形質の変更などの制限、そして植栽の義務などが課せられます。
しかし、とうぜん一方で、これらの代償として①固定資産税等の減税、
②分収造林制度、③造林補助金の加算、④立木の損失補償、
⑤伐採調整資金の融資、といった優遇措置もとれられます。
こうした種々の義務と優遇措置を定めて保安林は維持されています。