古代人に人気の木
日本人は、縄文時代にはすでに樹木それぞれの特性を知り、森に分け行っては 目的の樹木を求め、盛んに利用してきました。しかし時代を経るにしたがって、 鉄器の導入や農耕の開始などを背景に、用いる樹木の種類にはかなりの変化が あります。杭・割材・建築材などでは、縄文時代にはクリの使用が多いのに対し、 古墳時代以降ではクヌギ類がそれに置き換わります。
ほかの広葉樹は少なく、縄文時代~古墳時代をとおして、ナラ類やカシ類、 ヤマグワ、トネリコ属が所によって適宣用いられています。
丸木弓は縄文・古墳時代あわせて2例しか報告がありませんが、いずれもイヌガヤが 限定的に用いられています。出土した自然木は、遺跡周辺の当時の森林植生を反映し ていると考えられ、このなかには、用材とはならないヤナギ属やハンノキ類のほか、 縄文時代ではクリとトリネコ属、古墳時代ではクリ、クヌギ類、ヤマグワが、 また古代ではクリとクヌギ類などがみられます。
クリ及びクリ類はほぼどの時代にも、遺跡周辺に普通に生育していましたが、 杭・割材・建築材などをみると、時代ごとの用材はいずれかに限られています。
特に縄文時代から古墳時代以降にかけての変化は明瞭ですが、その背景には 石器から鉄器へという道具の変化が第一にあって、そのほかにも樹種の好みや 食料生産がといった文化的な背景もあったと思われます。