背割りのあれこれ
「背割りをすると強度はどうなるの」
当然背割りをすると強度は落ちます。こんな話があります。
ひび割れがあってJASの検査では全く通らないとなった時に、その検査官の前で 「ようがす」と言って、丸ノコを持って来て、そのひび割れを柱の端から端まで何倍 にも広げてしまい、「これが背割りです」と言えば検査官はJAS上では通さざるを得 ません。つまり強度を落すとグレードが上ると言うおかしな結果になります。日本の 在来工法は建設省も農林省もこれまであまりタッチしたくないと言うのが本音で、 アメリカやカナダのように木材の強度基準を明確に作ってはいませんでした。
恐ろしいことにプレハブであろうと在来工法であろうと日本の住宅のほとんどは 集成材とベニヤ板以外はJAS製品を使っていません。「こんなことで良いのか?」と 一般の方は思われると思いますが、もともと木造住宅は破壊限度の3倍ぐらいの 強度がありますので、鉄骨やコンクリートの住宅のようにシビアーにしなくとも、まあ> 適当にやっても大丈夫と言うのが本音のところです。(本当に強度に基づいて検査 基準を出すと、多くの日本人が一部の事実だけで誤解して日本の林業がダメになる 可能性が大です)つまり、背割りすると確実に強度は落ちます。
しかしもともと強度はあるので心配は必要ありません。 >「柱でも背割りを入れるの」
何故背割りするのかと言いますと、それは割れがその背割り部分に集中して他の部分 には割れがいかないからです。つまり和室の中は綺麗な柱が見えていてその裏の壁の 中は割れがしこたま入っていても見えませんから。
「いや、俺は見栄えよりも強度が重要だ」と思われる人は背割りなしの柱を使えばよろし いですが、和室の中のバリバリに割れた柱と毎日向い合うことになってしまいます。
背割りをしない場合とは・・・
1.洋室の柱で、壁で隠すので割れてもかまわない
2. 外材で大きな直径の木材から製材しているので、芯をはずしてあるため割れない > 以上2点のどちらかです。
「背割りを入れれば乾燥しても狂わないの」
狂います。が、割れに関してはその背割りの部分に集中しますので、少くとも割れによる 狂いの方向性は予測出来るようになります。つまり最初背割りが5㎜だったとするとそこが 乾燥に伴い10㎜なり15㎜に口がパックリ開くということは分かりますので、柱の方向を 変えて口が開いても後々壁がひずまないようにすることはできます。
「割れの算数問題」
木材の割れと言うのは木材の収縮のひずみのことです。単純な例で言うと生木が乾燥して> 表面が収縮しても内部までは乾燥していなければ、内部は収縮しませんから木材の表面は> 割れにより帳尻を合わそうとします。
さてさきほどから話しに出ています背割り柱の件ですがこれはすべて国産の桧なり杉などの 真ん中に芯を持った柱のことですが、この芯持ちの材の場合は必ず割れます。
「じっくり乾燥させたら全体に収縮して割れないのでないか?」と一般の方は素朴な疑問を> お持ちになろうかと思いますが、これが必ず割れるのです。
理由は「木材の柾目(木の半径方向)は一般的に2%ぐらい乾燥収縮しますが、板目(木材の 接線方向)はその2倍の4%ぐらい乾燥収縮するからです」
例題:今ここに直径120㎜の丸太があったとしますと、乾燥して直径が2%収縮し117.6㎜に なります。故に外周は117.6x3.14=369.3㎜にならなければならないはずです。ところが 外周は倍の4%収縮しますので120x3.14x96%=361.7㎜になっています。木材としては この差7.6㎜を割れることによってつじつまを合わそうとします。
・・・と言うことで、もし背割りがなければ一ヵ所で7.6㎜割れるかあちらで2㎜こちらで3㎜とか 分散して割れますので非常に見苦しくなります。背割りを入れるとその部分に割れが集中しま すので最初5㎜の割れは12.6㎜に開くと言うことで逃げることができます。