旁の「冓」は材木を組み立てたものの象形であり、木偏がなくてもで「家屋」や「組み立てる」という意味がある。訓は「かまえ」である。
建設分野では「構造」という使用頻度の高い熟語でお目にかかり、「構造の専門家」というと、「構造力学に精通している人」の意味になっている。「構造」には元来力学的な意味合いはなく、化学の「構造式」、地質学の「構造山岳」さらには社会思想の「構造学派」などのように単に「異なるものを組み合わせて造られている」というのが普通である。
木造住宅の分野では構法の違いが強調され過ぎているきらいがある。ログ、ツーバイフォー、プレハブの三構法は、昭和二十五年制定の建築基準法の視野になかったことから特別の構法として扱われてきていた。これらに対して土台の上に柱と梁で組み上げる一般的な構法をだれ言うとなく「在来構(工)法」というようになっている。「伝統構法」でないところがミソでもある。「在来」というのは新幹線より技術的に劣るとその経営者自体が信じている「在来線」というのが最もポピュラーであるので、良い熟語とは思われない。構法といった技術的に大切なことが「在来」に留まっていて良いはずはないし、「伝統」というと往々にして古いものにすがる傾向が強い。新しい伝統を築こうとする姿勢が表される言葉が良いと思うが、少なくともマイナスの要素のない「一般木造構法」程度の表現であるべきだと思う。