訓読みは「まるた」である。しかし、広く素材一般の意味で使われている。さらに旁の「才」に劣らないほど才能の意味に多く使われている。
「適材適所」と言うときもこの字を才能の意味で使うのが普通であるが、元来は性能バランスの良い家屋を建築するときの心得である。木を愛するあまり木に木を重ねる愚を冒したり、逆に自然素材である木材に工業製品並みの条件を求めて無用なコストをかけさせる人がいるが、いずれも適材適所という心得の薄い人である。
「材、大にして用い難し」とは、人材が立派すぎて組織として 使いこなせない状況を言う。昨今の就職難でこの格言がぴったりの大学4年生と面接することになった。涙を呑んで断ったら、発奮して大学院に進み、私のところより立派なところに就職した。
ところで、(財)日本住宅・木材技術センターは、設立時に大材木問屋の長谷川萬治商店から江東区の地下鉄南砂町駅近くに試験研究所とともに、 現在では入手困難と言われている木材1000点ほどの寄付を受け、「銘木標本館」として保管してきた。平成9年からこの区域で土地区画整理事業が始まり、駅から3分の旧敷地から東方400mに与えられた新敷地で平成11年秋から約一年かけて移築工事を行った。この間、最大17mもある長大材の移転や新しい展示の困難さに頭を悩ました。まさに「材、大にして、、、」を地で行くことになった。一部を新施設の内装材に転用したが、 工事発注者でありかつ納材業者であるという奇妙な立場を経験した。