床を「とこ」としか読めなければ建築の素人、最初に「ゆか」と読めば建築関係の人と判定できる。 床の部首は「广」であり、「木」は旁である。床の前に牀(木を一つ半使った純木造!)を使っていたが、日本に伝わる頃には両方使われていたようだ。「万」と「萬」の関係と同様と考えて良いようで、どちらの字も意味はベンチとベッドを兼ねた夕涼みの縁台のようなもののことである。「床几」と「牀机」は使われている文字こそ異なれ、意味、音とも全く同じである。 日本語で「ゆか」というときは、「床」である。土間であった部屋いっぱいに牀を並べ詰めてその上で生活するようになって、現在の「ゆか」の形になったようだ。大引きは牀の枠材であり、束は牀の脚であったのだ。下が地面である1階の床には強度を求めず、火打ち材を使って土台を補強したり根がらみで柱脚を補強するだけであった。昨今は、地下室を作ることもあってか2階の床と同じように強度を求めるようになってきた。
大引きや根太で床組みをするよりも一体化したパネルのほうが斜めに取り付ける火打ち材なしでも剛性を得やすく、施工の手間が軽減できる。前節の大壁のみならず、床のパネル化も現在の木造住宅工事合理化の方向である。
このようなパネル工法の部分的修理は簡単でなく、いきおい世代交替期に建て替えの要因になって住宅の存続期間を短くしている。省資源や廃材発生抑制の観点からは、小さな材を組み合わせて造る構法のほうが部分的な修理が容易なのでお勧めである。しかし、ハウスメーカーの生産性追求と需要者の価値観(特に当面のコスト低減)とは逆向きであって白眼視されてしまう。 ところで壁芯までを測って少しでも面積を大きく見せようというケチ臭い「床面積」を使うのは日本だけのようである。欧米では建築で「面積」と言えば実効的な内法面積のことであるし、中国や韓国の統計にも「床面積」という文字は出てこない。