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今村祐嗣のコラム

交流と連携

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    記事は昔に比べて生産する会社も減ってしまったが、何とか多くの人に砥の粉の良さを知ってもらおうとホームページを開設している会社があり、砥の粉の製造方法や使い方なども紹介していて、最近は問い合わせも増えているというものであった。砥の粉は、ちょっと年齢の行かれた方なら子供の頃、木の工作で塗装下地の目止め材として身近に使っていた粉で、水で溶いて塗りこめた後、乾くと表面がすっかり滑らかになった印象をお持ちの方も多いのではないかと思う。もともとは漆塗りの下地処理には欠かせない砥の粉であるが、そのほとんどが京都で生産されてきたということであった。京都市の東に位置する山科の西野山で取れる良質の風化した岩石を原料として製造されているという。風化の程度によって異なる種類の砥の粉がつくられるが、細かく粉砕された後、水で沈殿させてプレス、乾燥させ、再度粉末にして粒度をそろえたりして用途に対応した製品が製造されている。この砥の粉は木地の目止め剤や接着剤の添加物以外に、かってはレコード盤の材料として、あるいは歌舞伎役者の化粧の白塗りとしても使われていたらしい。 実はこの山科という場所は私が日常的によく通っている場所であり、そんなところに砥の粉という木材に深く関わってきた材料の産地、それもわが国唯一の生産場所があることがびっくりであった。われながら足元の不明に恥ずかしいと思うと同時に、こういったことは他にも数多くあるのではないかと思い至った。人類の歴史とともに発展してきた木材の技術には相互に支えあってきた数多くの材料や技があるのは当然であろう。あるものは、時代の変遷とともに意識の薄らいでいったものも多いが、もっと足元の連携に絶えず目を配っておくことが必要ではないだろうかと改めて思った。

    木づかいのススメ 「木づかいのススメ」運動における木の利用促進のための「連携」(提供:京都大学川井秀一氏、東京大学安藤直人氏)
    ところで、図は日本木材学会が主催した「日本の森を育てる円卓会議」の提言に沿った「木づかい運動」から借りてきたスライドである。木材の利用促進、特に国産材の利用を広げていくために、国産材を使うと日本の森は元気になる、木づかいの積極的な情報発信をしよう、企業も真剣に国産材を使うことを考えよう、消費者も協力しあって国産材を使って環境に配慮していこう、家庭や学校教育の現場でもっと国産材に親しもう、をモットーに掲げ、従来の「作り手」だけの対応ではなく「売り手」と「買い手」の双方へもっと働きかけ、連携を強めていこうということを運動目標にしている。
     森と木と人とが交流に終始することなく、一歩進めて内と外に連携することによって木材利用の輪がより広がることを期待したい。
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