竹の組織と利用の課題
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植物学的には竹は裸子植物(スギやマツという針葉樹が属する)とは別の被子植物(広葉樹や多くの草本が属する)の仲間で、その中でもイネなどと同じ単子葉類に属し、そのうちでもヤシ類とともに木本性で高木になる数少ない種類である。ちょっと奇異な感じもするが、竹の属する単子葉類は植物界の中で最も進化の進んだものと考えられている。
竹の強さの秘密は道管が数個集まった維管束の周囲を維管束鞘(いかんそくしょう)と呼ぶ多量の厚壁繊維の集団で保護されていることによる(写真)。竹を摩砕したり竹炭を砕くと、この集合体が容易に繊維状となって得られる。19世紀末にエジソンが白熱電球をつくった時、日本産、とりわけ京都府八幡市のマダケの炭繊維をフィラメントに利用したのは有名な話であるが、きっちりした厚壁の繊維の集合体がそれを可能にしたのであろう。
竹に対する関心度(岡久:2005)
ところで、竹ではすべての組織が軸方向に並び、しかも外側ほど厚壁繊維の量が多く、しかも維管束の分布密度が高いことで、強靱性を付与する上できわめて合理的な設計になっている。通常の木材細胞の壁は、薄い一次壁とその内側にあってセルロース結晶体の集合体であるミクロフイブィリルが配向した3層の二次壁から構成されていて、強度や弾性はこの二次壁が受け持っている。竹の場合は二次壁が3層にとどまらず多層構造になっていて、ほとんど内腔の空間が見えないほど厚壁状態が進んだものもある。しかもセルロース・ミクロフイブィリルの並び方は層毎に異なるものの、ほぼ軸方向に近い角度を示している。和紙はコウゾ、ミツマタという木の樹皮を原料としてつくられるが、そのもとは樹皮に存在する靭皮繊維で、これも竹の場合とよく似た厚壁構造をしている。
さて、竹のもつ意匠性などの長所とともに
「雰囲気が良い」「美しい」という意見が多いが、「和風になる」「素材感が良い」意匠性とともに、「強度がある」や「長持ちする」など性能面も評価されている。
、利用する上でよく聞かれることは虫やカビなどによる被害である。先ほどの維管束の周囲は柔組織で埋められているが、この細胞の中には竹の栄養となるデンプンが蓄えられている。このデンプンは、竹の虫害を引き起こすチビタケナガシンクイムシという昆虫やカビなどの微生物にとっても美味しい食物である。竹の切り旬は初冬の頃とされているが、デンプンの季節変動ではむしろ秋から冬にかけての時期に量が多い。生物劣化との関係を考えると、被害が起こりにくいのはデンプン量ではなく虫やカビの活動がこの季節に低下するということではないだろうか。
まだまだ不明なことの多い竹であるが、竹の銚子や杯に入れたお酒の効用についてはなおさらであろう。