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今村祐嗣のコラム

木の講義

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知的探求

先日、大阪にあるNPO法人「自然大学」が主催する地球環境生態系講座というところで、「人と木と地球環境」と題した講義を行ってきた。シニアコースに分類されたこの講座は、海の生態、湖の生態、森林の生態、土壌の生態、昆虫の世界、菌類の世界、森・里・海の連関、アグロフォレストリー、農系社会の復権など地球環境の問題を農学系の先生方が話すというものであった。わたしの講義は、人の生活と木の歴史的な関わりや木材の特性や技術などの一般的な話と、樹木と木材の炭素固定の役割、それと専門であるシロアリが放出する水素やメタンという温暖化ガスの話題がその中身であった。
講義の内容はさておき、一番感銘を受けたことがある。それは150名ほどの講義室が開始の30分ほど前にはすでに満席になっていたこと、それも順次前の席からつまってきていたことである。お世話をされている方の話によると、このシリーズ講義はいつも満席なるそうで、地球環境への関心の高さもあるにしても、シニアの方の旺盛な知的探求心に改めて感心した。後の方の席からしか埋まらなかったり、着席と同時に携帯電話をまず開くといった状況が多い大学での講義に比べてその熱心さに圧倒された。もちろん講義中に居眠りや内職があるはずはなく、目を輝かし一言一句も聞き逃すまいと一生懸命ノートを取られていた姿に心をうたれた。シニアといっても会社を退職された方であったり、家庭の奥様方など様々の経歴や立場の人であり、年齢的には60歳以上の方がほとんどであった。途中の休憩時間にお茶菓子を講師席まで持ってきて頂いたのにはびっくりした。
講義が終わった後で沢山の質問を受けたが、お叱りを受けたのと返答に窮した2件を紹介してみたい。叱られたのは講義の中で、ソフトクリームはカルボキシメチルセルロース(CMC)とリグニンからも得られるバニラからできていることから、木材利用の意外性を強調するつもりで「ソフトクリームはほとんど木材からできている」と紹介したところ、会場ではそれなりにうけたが、後で主成分は乳製品で増粘剤にCMCを入れバニラエッセンスも香料として加えたものであると指摘された。確かにその通りであり皆さんにも説明したが、ご指摘を頂いたのは乳製品メーカーの社長をされていた方ということであった。

困った質問

返答に困った質問の一つは、「樹木の樹皮は様々な形状をもっているが、どうしてああいった形が出来るのか?」というものであった。確かに樹種によってそれぞれ特徴ある様相を呈していて、マツやスギやヒノキ、あるいはサルスベリなどは幹の外観をみただけで樹の種類が分かるというものである。しかし質問に答えるのは容易ではない。
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