198 |
スギ |
杉の杜 |
「杉の杜のひげ」と言われてその名が通っているだけ、 |
198 |
スギ |
杉の杜 |
『「杉の杜のひげ」と綽名(あだな )せられて本名は並木善兵衛という老人のみが次のごとくに言った。 |
198 |
林 |
林などに |
すると二人が今来た道の方から空車(からぐるま )らしい荷車の音が林などに反響して虚空に響き渡って次第に近づいて来るのが手に取るように聞こえだした。 |
199 |
スギ |
杉の杜 |
この老人がその小さな丸い目を杉の杜の薄暗い蔭でビカビカ輝らせて、 |
199 |
スギ |
杉の杜 |
それが老翁(じいさん )ばかりでなく「杉の杜」というのが、 |
199 |
スギ |
一本の杉 |
幾百年か経って今はその根方(ねがた )の周囲(まわり )五抱もある一本の杉が並木善兵衛の屋敷の隅に聳立て居て其処がさびしい四辻になっている。 |
199 |
根方 |
根方 |
幾百年か経って今はその根方(ねがた )の周囲(まわり )五抱もある一本の杉が並木善兵衛の屋敷の隅に聳立て居て其処がさびしい四辻になっている。 |
200 |
スギ |
杉の杜の蔭 |
薄気味の悪い「ひげ」が黄鼠(いたち )のような目を輝(ひか )らせて杉の杜の蔭から斜睨(にら )んだところを今少し詳しく言えば、 |
200 |
棒 |
棒の音 |
又力一杯に打ち込んだ棒の音が鈍く反響するというような処がある。 |
201 |
スギ |
杉の杜 |
「杉の杜」のみは予め知っていたに違いない。 |
201 |
スギ |
杉の杜 |
さて「杉の杜のひげ」の予言は悉く適中(あた )った。 |
201 |
スギ |
杉の杜 |
秋の初めの九月なかば日曜の午後一時ごろ、「杉の杜」の四辻に茫然(ぼんやり )立って居る者がある。 |
201 |
スギ |
杉の杜の蔭で |
豊吉はしばらく杉の杜の蔭で休息でいたが、 |
202 |
うめ |
梅 |
樫、梅、橙などの庭木の門の上に黒い影を落としていて、 |
202 |
かし |
樫 |
樫、梅、橙などの庭木の門の上に黒い影を落として居て、 |
202 |
サルスベリ |
百日紅 |
杉の生垣をめぐると突当たりの煉塀の上に百日紅が碧( みどり)の空に映じていて、 |
202 |
シュロ |
棕櫚の二、三本 |
門の内には棕櫚の二、三本、 |
202 |
スギ |
杉の生垣 |
杉の生垣をめぐると突当たりの煉塀の上に百日紅が碧( みどり)の空に映じていて、 |
202 |
だいだい |
橙 |
樫、梅、橙などの庭木の門の上に黒い影を落としていて、 |
202 |
樹 |
樹 |
樹が多くなったように見え、 |
202 |
生垣 |
杉の生垣 |
杉の生垣をめぐると突当たりの煉塀の上に百日紅が碧( みどり)の空に映じていて、 |
202 |
庭木 |
庭木 |
樫、梅、橙などの庭木の門の上に黒い影を落としていて、 |
202 |
板 |
板 |
板の色も文字の墨も同じように古びて |
202 |
棒 |
棒の先で |
豊吉が棒の先で悪戯に開あけたところの。 |
203 |
ウメ |
梅の樹 |
とうれしそうに笑ッて梅の樹を見上げて、 |
203 |
クワ |
桑園 |
桑園(くわばたけ )の方から家鶏( にわとり)が六、七羽、 |
203 |
ヤナギ |
川柳 |
川柳の蔭になった一間幅ぐらいの小川の辺に三、四人の少年が集まって居る、 |
203 |
古木 |
古木 |
その曲がり角のすぐ上の古木、昔のままのその枝ぶり、蝉のとまりどころまでが昔その儘なる |
203 |
古木 |
上の古木 |
その曲角の直ぐ上の古木 |
203 |
枝 |
その枝ぶり |
その曲がり角のすぐ上の古木、昔のままのその枝ぶり、蝉のとまりどころまでが昔その儘なる |
203 |
枝 |
枝ぶり |
昔のままのその枝ぶり |
203 |
樹 |
狭い樹の影 |
何を見るともなくその狭い樹の影の多い路の遠くを眺めた。 |
204 |
ヤナギ |
柳の株 |
少年はかしこここの柳の株に陣取って釣っていたが、 |
204 |
ヤナギ |
柳の蔭 |
豊吉は柳の蔭に腰掛けて久しぶりにその影を昔の流れに映した。 |
204 |
ヤナギ |
柳の間 |
柳の間をもれる日の光が金色の線を水の中(うち )に射て、 |
205 |
スギ |
杉の杜の髯」 |
この墓が七年前に死んだ「並木善兵衛之墓」である、「杉の杜の髯」の安眠所である。 |
205 |
スギ |
杉の杜の髯 |
「杉の杜の髯」の予言の中(あた )ったのは此処までである。 |
205 |
マツ |
小松の根 |
その中のごく小さな墓―小松の根にある― |
205 |
ヤナギ |
柳の株 |
その少年を少し隔れて柳の株に腰かけて、 |
205 |
ヤナギ |
水上の柳 |
小川の水上の柳の上を遠く城山の石垣のくずれたのが見える。 |
205 |
ヤナギ |
川柳 |
川柳は日の光にその長い青葉をきらめかして、風のそよぐ毎(ごと )に黒い影と入り乱れている。 |
205 |
株 |
柳の株 |
その少年を少し隔れて柳の株に腰かけて、 |
205 |
根 |
小松の根 |
その中のごく小さな墓―小松の根にある― |
205 |
青葉 |
青葉 |
川柳は日の光にその長い青葉をきらめかして、風のそよぐ毎(ごと )に黒い影と入り乱れている。 |
209 |
板間 |
板間 |
この道場というは四間と五間の板間で、 |
210 |
スギ |
杉の杜 |
日常寂しい杉の杜付近までが何となく平時と異ていた。 |
211 |
棹 |
棹を立て |
豊吉はこれに飛び乗るや、纜(ともづな )を解いて、棹(みざお )を立てた。 |
211 |
棹 |
棹を振った |
豊吉はこれを望んで棹を振った。 |