ページ | 元樹種 | 掲載樹種 | 掲載言葉 |
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8 | 枝 | 枝のまばらな | 辻には、枝のまばらな、ひょろ長い葉柳はやなぎが一本、 |
8 | 葉 | 葉 | その日にかわいた葉を動かそうという風はない。 |
8 | 葉柳 | 葉柳が一本 | 辻には、枝のまばらな、ひょろ長い葉柳が一本、 |
9 | 杖 | 蛙股の杖 | 長い蛙股の杖をついた、目の丸い、口の大きな |
9 | 杖 | 杖 | 老婆は、杖をひきずりながら、二足三足あとへ帰って、 |
9 | 檜皮色 | 檜皮色 | 垢じみた檜皮色の帷子(かたびら)に、黄ばんだ髪の毛をたらして、 |
11 | ヤナギ | 柳の根へ | 忌々しそうに、柳の根へ唾を吐いた。 |
11 | 根 | 柳の根へ | 忌々しそうに、柳の根へ唾を吐いた。 |
11 | 杖 | 杖 | 老婆は、鼻の先で笑いながら、杖を上げて、道ばたの蛇の死骸を突っついた。 |
13 | 杖 | 蛙股の杖 | 蛙股の杖は、こういうことばと共に動いた。 |
13 | 杖 | 杖 | 猪熊のばばは、口達者に答えながら、杖をひいて、歩きだした。 |
14 | イチジク | 無花果が青い実をつけて | 無花果が青い実をつけて、人を恐れない鴉(からす)の群れは、昼も水のない池につどっている。 |
14 | ヤナギ | 柳の根に | もう一度、柳の根につばを吐くと、それからおもむろに、くびすをめぐらした。 |
14 | 根 | 柳の根に | もう一度、柳の根につばを吐くと、それからおもむろに、くびすをめぐらした。 |
14 | 実 | 無花果が青い実をつけて | 無花果が青い実をつけて、人を恐れない鴉(からす)の群れは、昼も水のない池につどっている。 |
14 | 杖 | 杖 | 足にかかる夏のほこりも払わずに、杖をつきつき歩いてゆく。 |
14 | 板垣 | 板垣 | 咲いているばかり、倒れかかった板垣の中には、 |
15 | 杖 | 蛙股の杖 | 蛙股の杖のはこびを、前よりも急がせ始めた。 |
16 | ネム | 合歓の木 | 盛りをすぎた合歓の木が二三本、こけの色の日に焼けた瓦の上に、ほほけた、赤い花をたらしている。 |
16 | 花 | 赤い花 | 盛りをすぎた合歓の木が二三本、こけの色の日に焼けた瓦の上に、ほほけた、赤い花をたらしている。 |
16 | 朽葉色 | 朽葉色 | これは、朽葉色の水干に黒鞘の太刀を横たえたのが、 |
16 | 杖 | 蛙股の杖 | 蛙股の杖を止めて、あごをしゃくりながら、呼びかけた。 |
17 | あんず | 腐った杏 | 丁度腐った杏のような、どす黒い斑があって、 |
17 | ネム | 合歓を一枝立て | 合歓を一枝立てたのは、おおかた高坏へ添える色紙の、心葉(こころば)をまねたものであろう。 |
17 | 心葉 | 心葉 | 合歓を一枝立てたのは、おおかた高坏へ添える色紙の、心葉(こころば)をまねたものであろう。 |
18 | 杖 | 蛙股たの杖 | 、蛙股の杖をのべて、遠くから、ぐいと女の頭を突いてみた。 |
18 | 杖 | 蛙股たの杖 | 老婆は、蛙股たの杖にあごをのせて、もう一度しみじみ、女のからだを見た。 |
19 | 杖 | 杖 | 老婆は、杖の上でのび上がりながら、ぎょろり目を大きくして、あざわらうように、こう言った。 |
20 | 杖 | 杖にすがって | こう言ううちに、猪熊のばばは、杖にすがって、もう二足三足歩いている。 |
21 | マツ | 松や柳 | 昔の儘(まま)、僅かに残っている松や柳 |
21 | ヤナギ | 松や柳 | 昔の儘(まま)、僅かに残っている松や柳 |
23 | 杖 | 蛙股の杖 | 蛙股の杖を早めながら、この時始めて心の底で、しみじみこう、祈ったのである。 |
23 | 楚 | 楚の先 | 楚(すわえ)の先に蛇の死骸をひっかけた、 |
24 | 板蔀 | 板蔀 | の板蔀(いたじとみ)や蒲簾(かますだれ)の後ろでは、町中の人が悉、 |
24 | 板葺 | 板葺 | 板葺、檜皮の屋根の向こうに、むらがっている旱(ひで)り雲も、 |
24 | 檜皮 | 檜皮 | 板葺、檜皮の屋根の向こうに、むらがっている旱(ひで)り雲も、 |
26 | 格子 | 牢格子を隔てて | おれがそれと、ふとした事から、牢格子を隔てて、話し合うような仲になる。 |
27 | 折敷 | 折敷 | そうして、あの何畳かの畳の上に、折敷(おしき)や高坏を、所狭く置きならべて、 |
28 | 板庇 | 板庇 | 太郎の鼻の先を一文字に、向こうの板庇の下へはいる。 |
29 | 葉柳 | 葉柳 | 絶えてはつづく葉柳と家々との間に、かすかなせせらぎの音を立てている。 |
31 | 造作 | 造作がない | が、してみると、意外に造作がない。 |
33 | 塀 | 網代の塀 | とある網代の塀の下に腐爛した子供の死骸が二つ、 |
35 | びわ | 葉をたれた枇杷 | 暗い緑の葉をたれた枇杷があって、その影がわずかながら、涼しく窓に落ちている。 |
35 | 丸柱 | 丸柱 | その所々剥落した朱塗りの丸柱の下へ来て、 |
35 | 木 | 木の下 | この木の下を、この戸口へはいった事は、何度あるかわからない。 |
35 | 葉 | 葉をたれた枇杷 | 暗い緑の葉をたれた枇杷があって、その影がわずかながら、涼しく窓に落ちている。 |
36 | カキ | 黒柿 | その黒柿の骨を、一つずつ指で送ったり、もどしたりしながら、 |
39 | サクラ | 樺桜 | 男は、樺桜の直垂に梨打の烏帽子をかけて、 |
39 | 柱 | 柱 | が、柱の下をはなれて、まだ石段へ足をおろすかおろさないうちに、 |
40 | アカマツ | 赤松の影 | 唯一本、細い幹をくねらした、赤松の影が落ちている。 |
43 | 檜垣 | 檜垣のすぐ側 | あの大路面の檜垣のすぐ側なんですが、昨夜その檜垣の外で、きっと盗人でしょう、 |
43 | 檜垣 | 檜垣の外で | あの大路面の檜垣のすぐ側なんですが、昨夜その檜垣の外で、きっと盗人でしょう、 |
47 | 遣戸 | 遣戸 | 廚(くりや)へ通う遣戸(やりど)が一枚、斜めに網代屏風の上へ、倒れかかって、 |
47 | 青松葉 | 青松葉 | 一面にあたりへ、燃え残った青松葉を、灰と一しょにふりまいている。 |
47 | 網代 | 網代屏風 | 廚(くりや)へ通う遣戸(やりど)が一枚、斜めに網代屏風の上へ、倒れかかって、 |
48 | ビワ | 枇杷の木 | 枇杷の木の下を北へ、こけつまろびつして、走っていた。 |
48 | 縁 | 縁 | はだしのまま、縁を下へ、白い布をひらりとくぐる。 |
49 | 網代 | 網代屏風 | 網代屏風をふみ倒して、廚のほうへ逃げようとする。 |
51 | ビワ | 枇杷の木 | 枇杷の木が、葉の裏表に日を受けて、明暗さまざまな緑の色を、ひっそりと風のない梢にあつめている。 |
51 | 遣戸 | 遣戸 | はね起きると、すばやく倒れた遣戸を小盾にとって、 |
51 | 梢 | 風のない梢 | 枇杷の木が、葉の裏表に日を受けて、明暗さまざまな緑の色を、ひっそりと風のない梢にあつめている。 |
51 | 柄 | 柄 | なぜおぬしこそ、太刀の柄(つか )へ手をかけているのじゃ。」 |
51 | 柄 | 太刀の柄 | 太刀の柄を握りしめて、老人の頸のあたりをじっと見た。 |
51 | 葉 | 葉の裏表 | 枇杷の木が、葉の裏表に日を受けて、明暗さまざまな緑の色を、ひっそりと風のない梢にあつめている。 |
51 | 緑 | 緑の色 | 枇杷の木が、葉の裏表に日を受けて、明暗さまざまな緑の色を、ひっそりと風のない梢にあつめている。 |
56 | 鞘 | 黒鞘の太刀 | 男の黒鞘の太刀たちが、きらりと日に光ったかと思うと、二 |
57 | 柄 | 太刀の柄 | 太刀の柄(つか)へ手をかけたが、やめて、くちびるを急に動かすとたちまち相手の顔へ、一塊の痰をはきかけた。 |
59 | 朽葉色 | 朽葉色 | 朽葉色の水干とうす紫の衣きぬとが、影を二つ重ねながら |
59 | 森閑 | 森閑 | どこも森閑と音を絶って、たまに耳にはいるのは、 |
61 | 弓杖 | 弓杖 | 胡(やな)ぐいを背に弓杖をつきながら、一同を見渡して、あでやかな口を開いた。 |
61 | 蘇芳染 | 蘇芳染 | 蘇芳染(すおうぞめ)の水干(すいかん)を着た相手は、太刀のつばを鳴らして、 |
65 | 杖 | 太刀を杖 | 太刀を杖にして居ざりながら、丁度羽根をぬかれた鴉(からす)のように、 |
65 | 柄 | 斧の柄 | 斧の柄をたたいて、こう罵ると、「おう」という答えがあって |
66 | 林 | 林のように | 太刀や鉾が林のように、きらめきながら並んだ中から、 |
68 | 樺桜 | 樺桜 | 汗にぬれた赤ひげと切り裂かれた樺桜の直垂とを、相手の男に認めたのである。 |
68 | 弓杖 | 弓杖 | 弓杖をついたまま、口角の微笑もかくさず |
68 | 柄 | 太刀の柄 | 太刀の柄に手をかけて、やはり後ろに下がっていた次郎は |
74 | 楼上 | 楼上 | 羅生門の楼上にたたずんで、遠くの月の出を眺めている。 |
75 | 垂木 | 楹 | 蜘蛛の巣をかけた楹(たるき )の間へ、はい上がったのがあるからであろう。 |
75 | 柱 | 門の柱 | 今では古びた門の柱にまといついて、ず |
75 | 蔓 | 蔓 | 簇々(そうそう)と蔓をのばしたその花が、今では古びた門の柱にまといついて、 |
75 | 凌霄花 | 凌霄花 | その中で、かすかに凌霄花のにおいがした。 |
75 | 梁 | 梁 | 裸のまま、地蔵堂の梁(うつばり)へつり上げられた。 |
79 | マツ | われ持たばや なよや、松山 |
われ持たばや なよや、末の松山 波も越えなむや |
84 | 林 | 林の中 | が、それも、太刀と鉾との林の中から、一人に会えば一人を切り、二人に会えば二人を切って、 |
86 | 柱 | 柱 | ただ、濛々としたほこりが、夜空に白く、ひとしきり柱になって、舞い上がる。 |
89 | 根 | 丸柱の根 | あるいは丸柱の根がたにうずくまって、さっきから、それぞれけがの手当てに忙しい。 |
89 | 松明 | 松明 | そのやみの中にかすかな松明の火をめぐりながら、 |
89 | 柱 | 丸柱の根 | あるいは丸柱の根がたにうずくまって、さっきから、それぞれけがの手当てに忙しい。 |
89 | 檐 | 檐 | 斜めにつき出した高い檐(のき )に、月も風もさえぎられて、むし暑い暗がりが、 |
93 | 柱 | 丹塗の柱 | 丹塗(にぬり )の柱の向こうに、じっと自分の息をうかがっているのを感じた。 |
93 | 塗 | 丹塗の柱 | 丹塗(にぬり )の柱の向こうに、じっと自分の息をうかがっているのを感じた。 |
94 | ノウゼンカヅラ | 凌霄花 | 始めてなま温かく、柱の間を吹いて、うす甘い凌霄花のにおいが、どこからかそっと一同の鼻を襲った。 |
94 | 柱 | 柱の間 | 始めてなま温かく、柱の間を吹いて、うす甘い凌霄花のにおいが、どこからかそっと一同の鼻を襲った。 |
94 | 木 | 油しめ木 | また、鼻歌の声が、油しめ木(ぎ)の木音のような呻吟(しんぎん)の声と一つになった。 |
95 | ノウゼンカヅラ | 凌霄花 | その間をただ、凌霄花のにおいのする風が、またしてもかすかに、通りぬけると、 |
95 | 鞘 | 太刀の鞘 | 交野の平六が、太刀の鞘を、柱にぶっつけながら、立ち上がった。 |
95 | 柱 | 柱 | その柱の向こうにかかっている。 |
95 | 梯子 | 梯子 | 程なく急いで梯子をおりて来る足音が、あわただしく、重苦い暗をかき乱した。 |
95 | 梯子 | 梯子 | 平六は、梯子をおりると、古被衣()ふるかずき)にくるんだ、丸々としたものを、 |
95 | 梯子 | 梯子 | 楼上に通う梯子は、二十いくつの段をきざんで、 |
96 | 松明 | 松明の火 | 松明の火を前に立った、平六のまわりを囲んで、 |
98 | 松明 | 松明の火 | 消えかかる松明の火のように、静かに息をひきとったのである。… |
99 | ノウゼンカヅラ | 凌霄花 | 竹と凌霄花との茂みを、次第に奥深く舁(か)かれて行った。 |
99 | ノウゼンカヅラ | 凌霄花 | 蕭条(しょうじょう )とした藪が、かすかに梢をそよめて、凌霄花のにおいが、愈(いよいよ )濃く、甘く漂っている。 |
99 | 梢 | 梢 | 蕭条(しょうじょう )とした藪が、かすかに梢をそよめて、凌霄花のにおいが、愈(いよいよ )濃く、甘く漂っている。 |
100 | 朽葉色 | 朽葉色 | その死骸が口にくわえていた、朽葉色の水干の袖そでばかりである。 |
100 | 遣戸 | 遣り戸 | 阿濃は、これを遣り戸の隙間から、のぞいていたが、 |
101 | ビワ | 枇杷の木 | すぐに外へ出ますと、大方枇杷の木にでもつないでおいたのでございましょう、 |