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小説と木
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芥川竜之介の小説「戯作三昧」に出てくる樹木や木製品

この小説の初出は1917年、文庫本におけるページ数は43ページ
ページ 元樹種 掲載樹種 掲載言葉
25 イチョウ 丸額の大銀杏 上がり場で手拭をしぼっているちょん髷本多、文身の背中を流させている丸額の大銀杏、
26 第一に湯を使う音や桶を動かす音がする。
26 柘榴口 柘榴口 だから柘榴口の内外は、すべてがまるで戦場のように騒々しい。
26 拍子木 拍子木 最後に時々番台で鳴らす拍子木の音がする。
27 カキ 柿の実 そこにはまた赤い柿の実が、瓦屋根の一角を下に見ながら、疎らに透いた枝を綴っている。
27 桶の中 云わばこの桶の中の空のように、静かながら慕わしい、
27 止め桶 老人はていねいに上半身の垢を落してしまうと、止め桶の湯も浴びずに、
28 イチョウ 細銀杏 見ると彼の傍には、血色のいい、中背の細銀杏が、止め桶を前に控えながら、
28 止め桶 見ると彼の傍には、血色のいい、中背の細銀杏が、止め桶を前に控えながら、
28 柘榴口 柘榴口 柘榴口の中の歌祭文うたざいもんにも、めりやすやよしこのの声が加わった。
29 イチョウ 細銀杏 細銀杏は肩の手拭を桶の中へ入れながら、一調子張り上げて弁じ出した。
29 細銀杏は肩の手拭を桶の中へ入れながら、一調子張り上げて弁じ出した。
30 イチョウ 小銀杏 眇(すがめ)の小銀杏が、振り返って平吉と馬琴とを見比べると、
31 眼くらの垣覗き 「いや、まったく性に合わないと見えて、いまだにとんと眼くらの垣覗きさ。」
33 柘榴口 柘榴口 柘榴口の方へ歩いて行く馬琴の後ろ姿を見送って、
34 柘榴口 柘榴口 滑らかな湯の面が、柘榴口からさす濁った光に反射して、
34 柘榴口 柘榴口 柘榴口の中は、夕方のようにうす暗い。
35 イチョウ 小銀杏 どうもさっき側にいた眇(すがめ)の小銀杏ででもあるらしい。
35 柘榴口 柘榴口の中 同じ柘榴口の中で、誰か彼の読本の批評をしているのが、
37 イチョウ 小銀杏の声 そうして、癇高かい小銀杏の声を聞き流しながら、柘榴口を外へ勢いよくまたいで出た。
37 イチョウ 小銀杏 今、この風呂で、この小銀杏の悪口を聞くようになったのも、
37 カキ 日を浴びた柿 外には、湯気の間に窓の青空が見え、その青空には暖かく日を浴びた柿が見える。
37 柘榴口 柘榴口 そうして、癇高かい小銀杏の声を聞き流しながら、柘榴口を外へ勢いよくまたいで出た。
37 柘榴口 柘榴口 彼の柘榴口をまたいで出る姿が、見えなかったからかも知れない。
38 ツゲ 本黄楊 だから「諸国銘葉」の柿色の暖簾のれん、「本黄楊」の黄いろい櫛形の招牌(かんばん)、
38 柿色 柿色の暖簾 だから「諸国銘葉」の柿色の暖簾のれん、「本黄楊」の黄いろい櫛形の招牌(かんばん)、
38 櫛形 だから「諸国銘葉」の柿色の暖簾のれん、「本黄楊」の黄いろい櫛形の招牌(かんばん)、
38 算木 算木の旗 「卜筮」の算木の旗、――そういうものが、
40 沓脱 沓脱の上に うちへ帰ってみると、うす暗い玄関の沓脱の上に、
41 カエデ 紅楓黄菊 彼の書斎には石刷を貼った屏風と床にかけた紅楓黄菊の双幅とのほかに、
41 キリ 桐の色 五十に余る本箱が、ただ古びた桐の色を、一面に寂しく並べている。
49 アオギリ 梧桐 葉の裂けた芭蕉や、坊主になりかかった梧桐が、槇や竹の緑といっしょになって、
49 マキ 葉の裂けた芭蕉や、坊主になりかかった梧桐が、槇や竹の緑といっしょになって、
49 縁側 縁側の柱 馬琴は独り縁側の柱へよりかかって、
49 縁側の柱 馬琴は独り縁側の柱へよりかかって、
52 アオギリ 梧桐 芭蕉や梧桐も、ひっそりとして葉を動かさない。
52 もくせい 木犀の匂い が、日は無心に木犀の匂いを融かしている。
52 縁側 縁側の柱 彼はまるで夢でも見ているように、ぼんやり縁側の柱に倚りつづけていた。
52 森(しん) うちの中は森(しん)としている。
52 縁側の柱 彼はまるで夢でも見ているように、ぼんやり縁側の柱に倚りつづけていた。
52 芭蕉や梧桐も、ひっそりとして葉を動かさない。
54 黄葉 黄葉 林間に散っている黄葉と、林梢(りんしょう)に群がっている乱鴉(らんあ)と、
54 黄葉 黄葉 林間に散っている黄葉と、林梢(りんしょう)に群がっている乱鴉(らんあ)と、
54 裸の樹 絵は蕭索(しょうさく)とした裸の樹を、遠近(おちこち)と疎に描いて、
54 落葉 落葉 私は王摩詰(おうまきつ)を思い出します。食随(しょくはめい)二鳴磬(けいにしたがい)一巣烏(そうう)下、行踏(ゆいて)二空林(くうりん)一落葉声というところでしょう。」
54 林間 林間 林間に散っている黄葉と、林梢(りんしょう)に群がっている乱鴉(らんあ)と、
55 木でも石でも 木でも石でも人物でも、皆その木なり石なり人物なりになり切って、
55 その木 木でも石でも人物でも、皆その木なり石なり人物なりになり切って、
62 もしこの時、彼の後ろの襖が、けたたましく開け放されなかったら、
63 が、孫の太郎は襖を開けるや否や、子供のみが持っている大胆と率直とをもって、
64 ウメ 栗梅の 栗梅の小さな紋附を着た太郎は、突然こう言い出した。
64 クリ 栗梅の 栗梅の小さな紋附を着た太郎は、突然こう言い出した。
  1. あばばばば
  2. お富の貞操
  3. 或日の大石内蔵之
  4. 一塊の土
  5. 開化の殺人
  6. 開化の良人
  7. 戯作三昧
  8. 枯野抄
  9. 年末の一日
  10. 舞踏会
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