木の特長

寿命、耐久性 Longevity and Durability

木材と鉄、どちらが耐久性に優れているかというと、一般的には「鉄の方が強い」と思われがちです。しかし、適切な方法で設置・使用すれば、木材、特にヒノキのような優れた樹種は圧倒的に長持ちすることが多いのです。適切な方法とは、木材が水に浸からないようにすること、つまり雨漏りのない建物内で使用することを指します。この条件が満たされる限り、木材の寿命は驚くほど長いものとなります。

歴史的建築物が証明する木材の耐久性
日本の寺院建築に使われている木材の耐久性は、その経年年数が証明しています。特に、法隆寺の五重塔は創建から1300年以上を経た今もその姿を保っています。解体修理が行われる際に一部の木材が交換されることはありますが、すべてが新しいものに置き換わっているわけではなく、創建当時の木材が今も使用されています。

これに対して、法隆寺に使用された鉄部材の寿命は非常に短いことが報告されています。たとえば、慶長年間に補強のために取り付けられた鉄製のカスガイ(かすがい)は、370年後の修理の際には錆びて塊になり、使い物にならなくなっていました。また、西岡常一棟梁が証言したところによると、明治30年の解体修理で使用された鉄のボルトも、昭和43年に調査した際には、錆によってネジの山が消え、役に立たなくなっていたとのことです。これらの鉄部材は特殊な製法で作られたものでしたが、それでも長期間にわたり耐久性を保つことはできませんでした。

木材は適切な条件下で使用される限り、鉄やコンクリートに比べて遥かに長寿命な素材であることが分かります。

木材が腐る原因と耐久性を高める条件
木材は「すぐ腐る」と思われることがありますが、その原因の多くは水や湿気によるものです。木材が湿気を帯びた状態で放置されると、カビや腐朽菌が発生し、腐食が進みます。しかし、樹種や設置条件によっては、この問題を大きく軽減できます。

たとえば、ウッドデッキや屋外施設に使用されるマレーシアやインドネシア産のウリンや、タイやミャンマー産のチークなどの木材は、雨に当たっても腐食しにくいことで知られています。これらの木材は耐久性が非常に高く、私たちの経験上、40年以上使用しても問題がないことが確認されています。

さらに、人工木材(樹脂木)は「腐らない」とPRされていますが、京都大学での委託試験の結果では、天然木材であるウリンの方が人工木材よりも耐久性が高いことが明らかになっています。このことからも、天然木材の持つ優れた特性が証明されています。

木材の耐久性を向上させる技術と工夫

現代では、木材の耐久性をさらに高めるための技術や工夫が広く活用されています。

加圧注入処理
防腐剤を木材内部に浸透させることで、腐朽菌や虫害から木材を守る技術です。屋外で使用される木材によく採用されており、特に湿気の多い環境での耐久性が向上します。

熱処理(サーモウッド)
高温で処理された木材は、内部の水分を飛ばし、耐久性と安定性を向上させます。これにより、腐朽菌が繁殖しにくくなります。

適切な設計と施工
水が木材に直接触れないように設計することで、耐久性を飛躍的に向上させることが可能です。たとえば、軒を深く設けて雨水の直撃を防いだり、木材が地面に直接触れないように基礎を工夫したりすることが挙げられます。

木材と他素材の比較

木材の耐久性を他の素材と比較すると、その優位性が際立ちます。

コンクリートとの比較
コンクリートは強度に優れていますが、ひび割れやアルカリシリカ反応による劣化が問題となります。一方、木材は適切な条件下で使用すれば、経年劣化が少なく、長期間使用可能です。

鉄との比較
鉄は高い強度を持ちますが、錆びやすく、湿気や酸性環境に弱い性質があります。一方で、木材は湿気を避けることで、鉄を遥かに超える寿命を持つことが可能です。

人工木材との比較
樹脂製の人工木材は耐水性が高いものの、紫外線による劣化や表面の剥離が発生しやすい場合があります。一方、天然木材は適切なメンテナンスを行うことで、より長期間にわたって美しさと機能を保つことができます。

木材の未来と持続可能性

木材はその耐久性だけでなく、環境への優しさでも評価されています。木材は再生可能な資源であり、持続可能な森林管理を通じて供給されます。また、製造時のエネルギー消費が少なく、炭素を固定する能力を持つことから、環境負荷が低い素材として注目されています。

未来の建築やインフラでは、木材の耐久性を活かしつつ、さらに効率的に利用するための新しい技術や設計が求められています。木材の可能性を最大限に引き出すことで、より持続可能な社会の実現に寄与するでしょう。

木材の耐久性は、その使い方次第で非常に長い寿命を持つことが証明されています。その特性を正しく理解し、適切に活用することで、私たちは地球環境と調和した生活を築くことができます。

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