樹木、木はいい香りがすると思われていますが、その通りでもありますが、間違いでもあります。樹木と木では匂いの発生するところが異なります。樹木では葉や実、花、枝や樹皮からでています。葉をこすったり、枝を折ったりすると出てくるものもあります。これらは樹種によって異なり、臭い匂いであったり、よい香りであったりします。木材となった場合は木自身発生する匂いですが、すべての木が匂いがあるものではありません。菓子箱、かまぼこ板に利用する木には匂いのない樹種が要求されます。菓子箱でもその樹種とお菓子の味がお互いに価値を高めるような場合はその樹種を求められます。杉などです。
私は20歳台のころ、カナディアンハウス*1の喫茶レストランが通勤途中にありました。始めて入った時に、いい香りがして気分がよくなり、頭がすっきりします。2度目に訪ねた時も同じで、その後かなり意識して訪ねても同じです。そこで新しいマンションに住む時に物置を書斎に改造し、自分で壁の一面にウエスタンレッドシダーを貼りました。やはりいい香りがして、考えごとや仕事をする場所として重宝した空間になりました。香の中に神経を落ち着かせる成分が入っていると思います。
ある木工所から木製クラフトの新商品としてかわいい小箱(長さ4×8センチ)を仕入れました。材質は米ヒバです。米ヒバの説明には一般には芳香(ほうこう)と書かれていますので、期待して梱包を開けました、芳香というより、臭いのです。しばらくすると目まで沁みるようになり、頭が痛くなります。この商品はギフトショーなどでも展示されていましたので、日本中に流れていました。その後大阪の現金問屋*2でこの商品見た時にもも同じ匂いがしました。すべての米ヒバがこのように強烈な匂いがあるとは思いませんが、たまたま当時日本に入荷したロットだけかもしれませんが。
日本ではヒノキの香は良いとされていますが、米国人は嫌うと聞きました。棺桶と同じ匂いで嫌だとか。
ミズメ(アズサ)の木は今の天皇陛下の皇太子時代の「お印(おしるし)」でした。枝を折るとサロメチール(サロンパス等)の匂いがします。私的には良い香りと思いますが、昔の人は臭いと感じていたようです。ミズメは元々ヨグソミネバリ(夜糞峰榛)と呼ばれていましたから。昭和天皇が山でご家族と一緒にいる時に、ミズメを見て、この名前に「へんな名をつけたものだ」と苦笑いをされたと侍従の方の回想録にありました。
このように臭い匂いを持つ木もあります。また人によっても、樹種によっても感じ方が異なります。でもいい香りがする樹木や木の方が圧倒的に多いのです。木には香がある。と云えばだれもが芳香をイメージしますから。
*1カナディアンシーダーハウス 屋根と壁面が連続した一体で、ゴチックアーチ型の独特の構造をもつ木造建築の様式。利用する木材はカナダ産のウエスタンレッドシダー(米杉)です。 風雪に対する耐久性が良いとされ、断熱性も優れています。カナディアンシーダーハウス林友が開発しました。
*2現金問屋 雑貨、衣服商品の小売店向けの卸問屋で一般の人は入店できない。大阪の久宝寺通りは卸問屋のビルが集中していました。寺内、根来が二大大手。