シロアリ発見器として開発したこの機器はリモートセンシングで測定できることから、木材加害昆虫の食餌活動の変動や環境条件の影響解析など、行動生態を明らかにする上にも役立っている。
ここに掲載した2枚の図のうち、最初の図はシロアリが異なる樹種を摂食した際に発生するAE事象数の変化を示している。もちろん事象数は摂食頻度に対応すると考えて良いので、これは好きな木、嫌いな木を与えられた際のシロアリの食餌行動を表している。好きなベイツガ材は最初からほぼ変化なく活発に摂食していることがうかがえるが、嫌いなベイヒバ材ではほとんど摂食活動が生じていないことがみてとれる。ラワン材も摂食はするもののあまり好ましい木材ではないらしく、当初は高い頻度でAEの発生がみられるものの、時間の経過ととともに発生頻度は低下してくる。
下の図はシロアリが暗い場所で摂食していた環境を瞬間的に明るくすることで、AEの発生がどう変化するかをモニタリングしたものである。シロアリの職蟻、兵蟻の目は退化した形態をしていて外表面からは痕跡器官として認められるが、実際は光に反応した行動をとる。この光に対する反応を確認してみようとしたのがこの実験である。周囲を明るくした時を矢印で示してある。その結果、確かにシロアリには明るい環境にすることによって一時的に摂食を停止し、停止時間は「明」の時間の長さに対応していた。
その他、温度環境による影響、摂食リズムの経時的な変化、等シロアリの行動生態のモニタリングを行っているが、まだまだ興味が尽きない研究内容である。