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今村祐嗣のコラム

木材の化学修飾

木材の細胞壁の非晶部分には活性な水酸基が数多く存在しており、外からの水分がここに吸着して木材の寸法変化を引き起こす。もしこの水酸基をほかの安定な官能基で置き換えると、水分子がくっつく余地が無くなって吸水や吸湿による寸法変化が抑えられ、また、腐朽菌の分泌する酵素の攻撃に対しても、その作用を受けない分子構造になる。
 木材を無水酢酸と高温で反応させるアセチル化処理では、どの腐朽菌に対してもほぼアセチル化率が20%を越えると、劣化による質量減少が認められなくなる。しかし、シロアリに対する抵抗性は加害するシロアリの種類によって異なり、ヤマトシロアリはほとんどこれを食害しないが、イエシロアリは無処理木材に比べると少ないものの、これを食害する。しかし、アセチル化木材だけを食餌とした場合は、イエシロアリといえども日を経るにしたがい死亡する。特に興味深いのは、スターベーション(食餌を与えない)の場合と同様な生存個体の減少傾向を示すことである。
 イエシロアリの腸内には3種類の原生動物が共生しており、セルロースの分解にはこれらの原生動物が関与しているといわれている。しかし、スターベーションの場合もアセチル化木材を食害した場合も、腸内に原生動物が全く認められない状態になった。シロアリは当初アセチル化木材を食餌として錯覚して食害するが、原生動物がこれを分解代謝できないため、原生動物の消失→食物補給の遮断→餓死へと至るのであろう。
木材の化学修飾
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