7 |
森閑 |
森閑 |
それでいて気はたしかである。森閑とした暗黒が、部屋の外を取巻いて、どこまでもどこまでも続き広がっていることがハッキリと感じられる……。 |
16 |
板 |
青塗の板 |
鉄かと思われるほど頑丈な、青塗の板の平面に、全力を挙げてぶつかってみた。 |
17 |
森閑 |
森閑とした深夜の |
とうとう以前(もと)の通りの森閑とした深夜の四壁に立ち帰って行った。 |
19 |
戸 |
小さな切戸 |
床とスレスレに取付けてある小さな切戸が開いて、何やら白い食器と、 |
19 |
白木 |
白木の膳 |
何やら白い食器と、銀色の皿を載せた白木の膳が這入って来るようである。 |
29 |
樹立 |
敢然として樹立 |
精神病の研究に対して、根本的の革命を起すべき『精神科学』に対する新学説を、敢然として樹立されました、偉大な学者で御座います |
55 |
櫛 |
丸い櫛 |
それは二個の丸い櫛が、私の頭の上に並んで、息も吐かれぬ程メチャクチャに駈けまわり初めたからであった |
56 |
木造 |
木造西洋館 |
そうして間もなく明るい外廊下に出ると、正面に青ペンキ塗、二階建の木造西洋館があらわれた。 |
57 |
マツ |
深緑色の松林 |
そのまた向むこうは左右とも、深緑色の松林になっている。 |
57 |
マツ |
松林 |
その松林の上を行く薄雲に、朝日の光りがホンノリと照りかかって、どこからともない遠い浪の音が、静かに静かに漂って来る気持ちのよさ……。 |
57 |
板 |
板片 |
私を流し場の板片の上に引っぱり出して、前後左右から冷めたい石鹸とスポンジを押し付けながら、 |
58 |
櫛 |
黄色い櫛 |
新しい黄色い櫛で頭をゴシゴシと掻き上げてもらうと、 |
58 |
板 |
板張 |
板張りの上に脱いでおいた、今までの患者服は |
59 |
鴨居 |
鴨居 |
若林博士が、鴨居よりも高い頭を下げながら、ノッソリと這入って来た。 |
63 |
バラ |
何となく淋しい薔薇色 |
何となく淋しい薔薇色に移り変って行くだけであったが、 |
64 |
バラ |
薔薇色 |
そうして左右の頬に沈んでいた、さびしい薔薇色が、夜が明けて行くように、 |
64 |
モモ |
桃色 |
元のあどけない桃色にさしかわって行くにつれて、 |
76 |
木阿弥 |
もとの木阿弥 |
いつの間にか又、もとの木阿弥のガンガラガンに立ち帰って行ったのであった。 |
78 |
木札 |
木札 |
右側に「実験室」とか「図書室」とかいう木札をかけた、いくつもの室が並んでいる |
78 |
木札 |
大きな木札 |
先に立った若林博士は、内ポケットから大きな木札の付いた鍵を出してその扉を開いた。 |
78 |
マツ |
濃緑色の松の枝 |
北と西の八ツの窓は、一面に濃緑色の松の枝で蔽われているが、 |
78 |
枝 |
濃緑色の松の枝 |
北と西の八ツの窓は、一面に濃緑色の松の枝で蔽われているが、 |
84 |
板 |
板張 |
部屋の中央から南北に区切った西側は、普通の板張で |
99 |
撞木 |
撞木杖 |
黒い長い外套を羽織った鼻の高い老婆がタッタ一人、撞木(しゅもく)杖づえを突いて立ち佇まっているが、 |
99 |
薪 |
薪 |
足の下に積み上げられた薪から燃え上る焔と煙に、むせび狂っている。 |
101 |
木枠 |
木枠 |
正面左手の壁にかかっている大きな、黒い木枠の写真が眼についた。 |
114 |
植物 |
動植物 |
既に化石となっている有史以前の異様奇怪を極めた動植物や、又は、そんな動植物を惨死滅亡させた天変地妖の |
120 |
木魚 |
木魚 |
自分自身で木魚をたたいて、その祭文歌を唄いながら、 |
121 |
木魚 |
木魚 |
……自分自身で……木魚をたたいて…… |
130 |
木魚 |
木魚 |
好きな木魚が叩かれないし、チョンガレ節も唄えなくなるだろう。 |
130 |
木魚 |
木魚 |
木魚ぐらいはイクラ叩かれても宜しいから、是非一つ成仏して頂きたい |
139 |
洗濯板 |
洗濯板 |
痩た肋骨(あばら)が洗濯板なる。 |
140 |
木魚 |
木魚 |
たたく木魚に尋ねてみたら……スカラカ、チャカポコ |
140 |
木魚 |
木魚 |
曰く因縁、木魚に聞いたら。 |
140 |
木の |
木の股キラク |
。親は木の股キラクな風の。 |
149 |
梯子 |
梯子 |
笑い上戸に後引き上戸。梯子上戸と世間の人が |
152 |
木魚 |
木魚 |
私ゃ知らんが木魚が知っとる。 |
152 |
木魚 |
木魚 |
わたしゃ知らんが木魚が知っとる。 |
152 |
木魚 |
木魚 |
チャント合うのが木魚の話じゃ。 |
153 |
木魚 |
木魚 |
物も云わない木魚の話じゃ。 |
153 |
木魚 |
木魚 |
ア。物を云わない木魚の話じゃ。 |
156 |
木魚 |
木魚 |
口も動かぬ片輪の木魚が。 |
157 |
木の根 |
木の根 |
木の根、草の根、肥やすか知れない。 |
157 |
木蔭 |
木蔭で |
憐れな患者の名残りの姿を。はるか離れた物蔭、木蔭で |
159 |
木魚 |
木魚 |
私が今まで木魚をチャカポコ。 |
159 |
建築 |
大建築 |
ズラリ並んだ大建築だよ。 |
159 |
建築 |
大建築 |
ア。とても立派な大建築だよ。 |
163 |
木魚 |
木魚 |
世にも不思議な木魚の話じゃ……スカラカ、チャカポコチャカポコチャカポコ |
163 |
木魚 |
木魚 |
聾唖(おし)の木魚の阿呆陀羅経だよ。 |
166 |
木の葉 |
木の葉 |
この世からなる地獄の話じゃ。鳥が囀(さえず)り木の葉が茂り。 |
166 |
もみじ |
花に紅葉 |
花に紅葉(もみじ)に極楽浄土の。中にさまよう精神病者じゃ。 |
169 |
木魚 |
木魚 |
駄声はり上げ木魚をチャカポコ |
169 |
木魚 |
木魚 |
身の程知らない木魚をたたいて。頼み手も無い金にもならない |
170 |
木魚 |
木魚 |
筆も言葉も木魚も及ばぬ。むごさ、せつなさ、悲しさ辛つらさを。 |
172 |
木魚 |
木魚 |
無調法なる木魚に合わせて。チョット御機嫌伺いまする。 |
197 |
木ッ葉 |
木ッ葉 |
人類全体のアタマを特別念入りの手品にかけて、木ッ葉ミジンに飜弄しつくしているのだ。 |
201 |
木阿弥 |
木阿弥 |
いつの間にやら元の木阿弥のケロリン漢に立ち帰って、そんな素敵な記憶の数々を、 |
209 |
電柱 |
電柱 |
何だって交番にはい込むのだ。……電柱に抱き付くのだ。 |
239 |
樹の根 |
樹の根 |
樹の根や草の中に寝ていた時代の習慣の再現である事は、 |
243 |
森羅万象 |
森羅万象 |
実物とすこしも違わぬ森羅万象(しんらばんしょう)が見えるかと思うと |
247 |
森羅万象 |
森羅万象 |
。更にその細胞の大集団である人間が、宇宙間の森羅万象に接してこれを理解し、 |
251 |
大木 |
大木 |
鮮血の滴(したた)る大木や、火焔の中に咲く花を描きあらわしたりする事は、 |
261 |
樹 |
樹から樹へ |
樹から樹へ飛び渡れるようになった。 |
261 |
樹 |
樹も草も |
樹も草もメチャメチャになった地上を、 |
261 |
木 |
木の空から |
進歩した姿の生物はいまいと、木の空から小手を翳(かざ )していると |
261 |
木 |
木の空洞 |
と木の空洞(うつろ)に頭を突込んで、胸をドキドキさせながら祈っていると |
273 |
キリ |
桐の木 |
まんなかに桐の木が五本ほど、黄色い枯れ葉を一パイにつけて立っております。 |
273 |
キリ |
この桐の木 |
この桐の木はズット以前からここに立っておりまして、本館の中庭の風情となっておったもので御座いますが、 |
274 |
キリ |
この桐の木 |
あるいはこの桐の木が、かような思いがけないところに封じ込られたために精神に異状を呈したものではないかとも考えられるのでありますが、 |
274 |
板戸 |
板戸 |
その入口板戸の横に切り開けられた小さな、横長い穴から、 |
276 |
キリ |
桐の落葉 |
桐の落葉、松の枯枝、竹片、瓦の破片なぞ |
276 |
落葉 |
桐の落葉 |
桐の落葉、松の枯枝、竹片、瓦の破片なぞ |
276 |
マツ |
松の枯枝 |
桐の落葉、松の枯枝、竹片、瓦の破片なぞ |
276 |
枯枝 |
松の枯枝 |
桐の落葉、松の枯枝、竹片、瓦の破片なぞ |
276 |
キリ |
桐の木の根方 |
その女が前を横切るたびごとに、桐の木の根方(ねもと)に土下座をして、 |
276 |
根方 |
桐の木の根方 |
その女が前を横切るたびごとに、桐の木の根方(ねもと)に土下座をして、 |
282 |
木陰 |
木陰 |
近くの堤か草原の木陰か軒下に行って弁当を使う。 |
295 |
ボダイジュ |
菩提樹下 |
天竺は仏陀迦耶なる菩提樹下において、過去、現在、未来、三世の実相を明らめられて、 |
295 |
大工 |
大工 |
大工は昨日建てかけた家の続きを建てに行き、 |
296 |
大工 |
大工や左官と |
今の大工や左官と同様に、ありし昔の心理状態に立ち帰る |
309 |
ウルシ |
漆のような |
どこがドコやら、何が何やらわかりませぬ。漆のような闇黒な場面で御座います。 |
309 |
板 |
板の隙間 |
天井裏へ潜り込んだ処に在る、板の隙間から窺(のぞ)いている光景で御座います。 |
310 |
ウルシ |
漆のように黒く |
正木博士撮影の「天然色、浮出し、発声映画」のフィルムはただ、漆のように黒く、時の流れのように秘やかに流れて行くばかり |
311 |
木 |
木の箱 |
何かしら分厚い、大きな木の箱を閉したような音がバッタリと致しますと、 |
312 |
木枕 |
凹字型の木枕 |
その解剖台上に投げ出された、黒い、凹字型の木枕に近く |
315 |
白木 |
白木の棺 |
分厚い白木の棺の蓋を開きますと、中から一個の盛装した少女の屍体を取り出しました。 |
316 |
ゴヨウマツ |
五葉の松 |
眼も眩(まば)ゆい春霞と、五葉の松の刺繍を浮き出させた裲襠(うちかけ)、紫地、羽二重の千羽鶴 |
321 |
木机 |
木机 |
一つ一つ傍の木机の上に並べました |
321 |
木机 |
木机 |
やはり傍の木机の上に置き並べました。 |
3 |
松原 |
松原の闇黒伝い |
あれは今の屍体冷蔵室と、法医学教室の裏手に連なる松原の闇黒伝いに、 |
3 |
松原 |
松原 |
その松原の附近に設けられている実験用の動物の檻の中から、野犬の群が発見して、吠え立てているところであります。 |
4 |
木枕 |
凹字型の古びた木枕 |
凹字型の古びた木枕を頭部に当てがいますと、大きな銀色の鋏を取上げて |
12 |
何の造作 |
何の造作 |
さすがは絶代の怪人物黒衣博士です。何の造作もないこと |
14 |
松原 |
松原 |
裏手の松原に在る当大学専用の火葬場の人夫が受取って行って、 |
17 |
バラ |
薔薇色 |
神秘の国に生れた大きな貝の剥き肉かなんぞのように活き活きとした薔薇色に盛り上って |
20 |
マツ |
松の緑 |
教授室の三方の窓には強い日光を受けた松の緑が眩(まぶ)しく波打っておりまして、 |
20 |
一葉 |
一葉の名刺 |
一葉の名刺を持って這入って来て、恭(うやうや)しく正木博士の前に捧げました。 |
21 |
唐変木 |
唐変木 |
ナアーンだ。何遍云って聞かせてもわからない唐変木くだ。 |
66 |
丸太 |
丸太転び |
または行歩こうほし、丸太転び、尺蠖歩(しゃくとりあゆ)み、宙釣り、逆釣り、錐揉、文廻し廻転、逆反り、仏倒し、うしろ返り、又は跳ね上り、飜落(ほんらく)するなぞ、 |
82 |
梯子 |
梯子 |
その時に梯子のテッペンから落ちて打ちました腰が、この通り痛みまして、 |
89 |
板張 |
板張 |
横の板張に親椀を並べて拭いていたオモヨさんに眼顔で、 |
90 |
クチナシ |
梔子 |
私はそれから裏口の梔子の陰に莚(むしろ)を敷きまして、 |
90 |
クチナシ |
梔子の枝越しに |
そこから梔子の枝越しに、離家の座敷の内部が真正面に見えますので |
90 |
枝 |
梔子の枝越しに |
そこから梔子の枝越しに、離家の座敷の内部が真正面に見えますので |
90 |
塩梅 |
あんばい |
眉がヒクヒクと動いているあんばいは、 |
91 |
塩梅 |
あんばい |
まことに変なアンバイで御座いました。 |
92 |
障子 |
新しい障子 |
そこの新しい障子が一枚開いて、その前の硝子雨戸がまた一枚開いてあります。 |
92 |
下駄 |
下駄 |
新しい台所の上り口から自分の下駄を持って参りまして、 |
92 |
下駄 |
下駄 |
そこにすこしばかり砂のついた下駄の跡が薄明りなりに見えるようで御座います。 |
92 |
下駄 |
下駄 |
間もなく思い切って下駄を脱いで、抜き足さし足で廊下を伝って行って、 |
92 |
戸袋 |
戸袋 |
奥座敷の戸袋の処が一枚開いて、 |
93 |
下駄 |
下駄 |
跣足(はだし)で表口の方へ行かっしゃる後から、私がをはいてついて行きました。 |
94 |
腰板 |
腰板 |
お八代さんはまたうなずいて、すぐ横の母屋の腰板に引っかけてある一間半の梯子を自分で持って来て |
94 |
梯子 |
梯子 |
お八代さんはまたうなずいて、すぐ横の母屋の腰板に引っかけてある一間半の梯子を自分で持って来て |
94 |
梯子 |
梯子 |
梯子を登り詰めますと、 |
94 |
梯子 |
梯子 |
梯子が降りられぬようになりました。 |
94 |
下駄 |
下駄 |
余儀なく下駄を脱ぎまして、尻を端折(から)げまして、 |
94 |
板張り |
板張り |
土蔵の二階の片隅に積んでありました空叺(あきがます )で、板張りのまん中に四角い寝床のようなものが作ってありまして、 |
95 |
経机 |
古い経机 |
母屋おもやの座敷に据えてありました古い経机(きょうづくえ )が置いてあります。 |
95 |
梯子 |
梯子 |
倒れかかった梯子を掛け直して自分で登って行きました |
96 |
梯子 |
梯子 |
お八代さんは前褄(まえづま)をからげたままサッサと梯子を登って、窓のふちに手をかけながら、 |
96 |
梯子 |
梯子 |
…それから、お八代さんは急いで梯子から降りて来て、私に「お医者お医者」と云いながら、 |
97 |
下駄 |
庭下駄 |
中から若旦那が片手に鍵を持って、庭下駄をはいて出て来られて、 |
97 |
木戸 |
うしろの裏木戸 |
這うようにして土蔵のうしろの裏木戸まで来まして、 |
97 |
ブンタン |
朱欒樹(普通はザボンと読む ) |
そこに立っている朱欒(じゃがたら )の樹に縋すがり付いて、やっとこさと抜けた腰を伸ばして立ち上りました。 |
97 |
葉 |
葉の蔭 |
すると頭の上の葉の蔭で、土蔵の窓の銅張(あかがねばり)の扉がパタンと閉しまる音が致しましたから、 |
99 |
床柱 |
床柱の根方 |
それをやっとの事で動けないようにして、離家(はなれ)の床柱の根方(ねもと)へ括くくり付けますと、 |
99 |
根方 |
床柱の根方 |
それをやっとの事で動けないようにして、離家(はなれ)の床柱の根方(ねもと)へ括くくり付けますと、 |
98 |
縁側 |
縁側を降り |
縁側を降りかけていたお八代さんの襟髪を、うしろから引っ捉えましたが、 |
98 |
縁側 |
お縁側 |
お縁側から庭の上にズルズルと曳ひきずり卸おろすと、 |
103 |
松原 |
虹の松原 |
虹の松原に因んで名を虹汀(こうてい)と改め |
103 |
松原 |
虹の松原 |
、折ふし晩秋の月円かなるに誘はれて旅宿を出で、虹の松原に上る。 |
103 |
マツ |
名松 |
銀波、銀砂に列つらなる千古の名松は |
103 |
松原 |
松原 |
程近き松原の砂清らかなる処に伴ひ、事の仔細を問ひ訊すに、 |
105 |
センダン |
大栴檀樹 |
裏庭に在りし大栴檀樹を伐きつてその赤肉(せきにく )を選み |
109 |
木札 |
木札 |
「公儀に返還す。呉坪太くれつぼた」と大書したる木札を打ち、 |
118 |
縁側 |
本堂の縁側へ |
それから二人で立って本堂の縁側へ出てみますと |
122 |
板の間 |
板の間 |
階下の板の間の入口に敷かれたる古新聞の上に |
122 |
ホオノキ |
朴歯 |
呉一郎の朴歯の下駄の跡と、モヨ子の外出穿きの赤きコルク草履が正しく並びおり、 |
122 |
ホオノキ |
下駄 |
呉一郎の朴歯の下駄の跡と、モヨ子の外出穿きの赤きコルク草履が正しく並びおり、 |
124 |
木材 |
木材 |
表装用の金糸、または軸に用いられたるべき木材、その他の痕跡絶無也 |
133 |
キリ |
桐の木 |
解放治療場のまん中に立った五六本の桐の木の真青な葉が、真夏の光りにヒラヒラと輝いている。 |
134 |
キリ |
桐の葉 |
解放治療場中央の桐の葉にチョイチョイ枯れた処が見える。その周囲の場内の平地の処々にまっ黒く、墓穴のように砂を掘り返したところが、重なり合って散在している。 |
138 |
枯れ枝 |
枯れ枝 |
その半分の処まで、枯れ枝や瓦の破片を植えつけている。 |
143 |
ニス |
塗料のニス |
塗料のニスや、リノリウムの床に眩しく反射しつつ静まり返っている。 |
143 |
マツ |
松の間 |
という小鳥の群が、松の間を渡る声が聞えるばかり……。 |
157 |
櫛 |
櫛の歯 |
一切の疑問が櫛の歯で梳くようにパラリと解けて来る。 |
175 |
枯れ葉 |
枯れ葉 |
ただ、枯れ葉をつけた桐の木が五六本立っているきりだ |
175 |
キリ |
桐の木 |
ただ、枯れ葉をつけた桐の木が五六本立っているきりだ |
195 |
マツ |
松の青さ |
室の中の爽快な明るさ……窓一パイの松の青さ……その中に満ち満ちている白昼の静けさなぞが、今更に気持ちよく、身に沁みて来たのであった。 |
197 |
白木 |
白木の箱 |
その中の白木の箱の上に置いてある日本紙一帖位の綴込みが、無雑作に私の前に投げ出された。 |
203 |
大工 |
大工 |
それから呉青秀は大秘密で大工や左官を雇って |
203 |
薪炭 |
薪炭菜肉 |
薪炭菜肉(しんたんさいにく)、防寒防蠅(ぼうよう)の用意残るところなく |
43 |
梯子 |
梯子段 |
又一人誰か来て、僕の左手を押えてズンズン梯子段の方へ引っぱって行きました |
43 |
階子 |
階子段 |
階子段に向い合った頭の上の手摺から、私の母の色の褪めた扱帯(しごき)が輪の形になってブラ下がっているのが眼に這入りました。 |
43 |
手摺 |
手摺 |
階子段に向い合った頭の上の手摺から、私の母の色の褪めた扱帯(しごき)が輪の形になってブラ下がっているのが眼に這入りました。 |
45 |
床板 |
汚ならしい床板 |
夢見ているような気持になって、汚ならしい床板を見つめておりますと、 |
45 |
木製 |
木製のバンコ |
木製のバンコ(九州地方の方言。腰掛の事)に腰かけさせられて、 |
46 |
木机 |
木机 |
と云って僕の前にある汚い木机の上に何か投げ出しました。 |
206 |
森蔭 |
とある森蔭 |
とある森蔭の墓所に忍び寄ると、意外にも一人の女性が新月の光りに照らされた一基の土饅頭の前に、花を手向けているのが見える。 |
206 |
森 |
森の中に |
するとたちまち背後の森の中に人音が聞えて、 |
207 |
薪 |
薪が山の如く |
何事かと驚いて窓から首をさし出してみると、画房の周囲は薪が山の如く、その外を百姓や役人たちが雲霞(うんか)の如く取り巻いて気勢を揚げている様子だ。 |
207 |
山林 |
山林に |
生命からがら山林に紛れ込んだが、 |
207 |
枯梢 |
北風枯梢 |
さて門を這入ってみると北風枯梢を悲断ひだんして寒庭に抛(なげう) ち、柱傾き瓦落ちて流けいを傷むという、 |
207 |
枯葉 |
枯葉を撒 ず。 |
錦繍帳裡(きんしゅうちょうり) に枯葉(こよう) を撒(さん) ず。 |
213 |
根掘葉掘 |
根掘り葉掘り |
その時に呉青秀に迫って、根掘り葉掘り、 |
219 |
白木 |
白木の箱 |
無雑作にガサガサ引き披(ひら)くと、中から長方形の白木の箱が出た。 |
220 |
木 |
木の蓋と |
そうして木の蓋と、鬱紺木綿を開くと |
230 |
柳樽 |
柳樽 |
この句を知らなけあ川柳を知っているたあ云えないぜ。柳樽の中でもパリパリの名吟なんだ |
232 |
木材 |
木材 |
ちょうど木材が乾溜(かんりゅう)されて、アルコールに変って行くようにね |
261 |
頬杖 |
頬杖を突いた |
背中を丸めて、卓子に頬杖を突いたが、 |
268 |
木魂 |
木魂返し |
という大喝が木魂返しに正木博士の口から迸(ほとばし)り出た。 |
287 |
塩梅 |
塩梅式に |
剣呑(けんのん)な思いをしなければなりませんから』といったような塩梅式に、 |
292 |
欄間 |
欄間の天人 |
自分でお彫りになった欄間の天人なぞを眺めたり、 |
300 |
菩提心 |
菩提心 |
無邪気であったこと……菩提心とはこれを云うのであろうか… |
300 |
木魚 |
木魚 |
木魚をたたきたたきその児の後生を弔ってまわった。 |
308 |
菩提心 |
菩提心 |
これもやはり菩提心と云えば云えるであろう。 |
322 |
桃色 |
桃色 |
桃色に充血した眼を力なく見開いた。 |
324 |
柱 |
入口の柱 |
今にも倒れそうによろめきつつ、入口の柱に手をかけて、 |
324 |
板張 |
廊下の板張 |
ようやっと、廊下の板張りの上に立ち止まった。 |
325 |
枯葉 |
枯れ葉 |
そのまん中の枯れ葉を一パイに着けた桐の木……? |
325 |
キリ |
桐の木 |
そのまん中の枯れ葉を一パイに着けた桐の木……? |
332 |
頬杖 |
頬杖を突いて |
そうしていつの間にか頬杖を突いていた私の眼は、 |
336 |
樟脳 |
樟脳 |
黴(かび)臭いにおいと、軽い樟脳みたような香気が一緒になった中から、どこともなく奥床しい別の匂いがして来るようであるが、 |
336 |
樟脳 |
樟脳に似た |
この黴臭い匂いと樟脳に似た木の香が弥勒様の木像の中で滲み込んだものである事は、 |
336 |
木の香 |
木の香 |
この黴臭い匂いと樟脳に似た木の香が弥勒様の木像の中で滲み込んだものである事は、 |
336 |
木像 |
弥勒様の木像 |
この黴臭い匂いと樟脳に似た木の香が弥勒様の木像の中で滲み込んだものである事は、 |
343 |
松原 |
松原 |
トタンに非常な大音響が、私を追い散らすかのように、九大構内の松原に轟き渡った。 |
344 |
電柱 |
電柱 |
雲の中からブラ下っている電柱を見た。 |
368 |
葉 |
葉 |
いつの間にか一枚も残らず葉を振い落した五、六本の桐の木が、星の光りを仰ぎつつ妙な枝ぶりを躍らしている。 |
368 |
桐の木 |
桐の木 |
いつの間にか一枚も残らず葉を振い落した五、六本の桐の木が、星の光りを仰ぎつつ妙な枝ぶりを躍らしている。 |
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枝ぶり |
枝ぶり |
いつの間にか一枚も残らず葉を振い落した五、六本の桐の木が、星の光りを仰ぎつつ妙な枝ぶりを躍らしている。 |