0 |
床の間 |
床の間 |
その右手は四尺の床の間と四尺の違い棚になっているが床の間には唐美人の絵をかけて前に水晶の香炉を置き、違い棚には画帖らしいものが一冊と鼓の箱が四ツ行儀よく並べてある。 |
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床の間 |
床の間 |
その右手は四尺の床の間と四尺の違い棚になっているが床の間には唐美人の絵をかけて前に水晶の香炉を置き、違い棚には画帖らしいものが一冊と鼓の箱が四ツ行儀よく並べてある。 |
346 |
ツツジ |
躑躅 |
あやかし」という名前はこの鼓の胴が世の常の桜や躑躅と異ちがって「綾になった木目を持つ赤樫」で出来ているところからもじったものらしい。 |
346 |
カシ |
赤樫 |
あやかし」という名前はこの鼓の胴が世の常の桜や躑躅と異ちがって「綾になった木目を持つ赤樫」で出来ているところからもじったものらしい。 |
346 |
サクラ |
桜 |
あやかし」という名前はこの鼓の胴が世の常の桜や躑躅と異ちがって「綾になった木目を持つ赤樫」で出来ているところからもじったものらしい。 |
347 |
材木屋 |
材木屋 |
また材木屋から様々の木を漁(あさ)って来て鼓を作るのを楽しみにしていた。 |
347 |
木 |
木 |
また材木屋から様々の木を漁(あさ)って来て鼓を作るのを楽しみにしていた。 |
349 |
木目 |
木目 |
あれは宝の木といわれた綾模様の木目を持つ赤樫の古材で、日本中に私の鑿(のみ)しか受け付けない木だ。 |
349 |
カシ |
赤樫 |
あれは宝の木といわれた綾模様の木目を持つ赤樫の古材で、日本中に私の鑿(のみ)しか受け付けない木だ。 |
349 |
古材 |
古材 |
あれは宝の木といわれた綾模様の木目を持つ赤樫の古材で、日本中に私の鑿(のみ)しか受け付けない木だ。 |
349 |
鑿 |
鑿 |
あれは宝の木といわれた綾模様の木目を持つ赤樫の古材で、日本中に私の鑿(のみ)しか受け付けない木だ。 |
352 |
材木 |
材木 |
胴の模様は宝づくしで材木は美事な赤樫だ。 |
352 |
カシ |
赤樫 |
胴の模様は宝づくしで材木は美事な赤樫だ。 |
354 |
材 |
材 |
胴もお見かけはまことに結構に出来ておりますが、材が樫で御座いますからちょっと音(ね)が出かねます。 |
354 |
樫 |
樫 |
胴もお見かけはまことに結構に出来ておりますが、材が樫で御座いますからちょっと音(ね)が出かねます。 |
359 |
床の間 |
床の間 |
それをポツポツ喰べている私の顔を老先生はニコニコして見ておられたが、やがて床の間の横の袋戸から古ぼけた鼓を一梃出して打ち初められた。 |
364 |
ヒノキ |
檜 |
セメントの高土塀にも檜作りの玄関にも表札らしいものが見えず、軒燈の丸い磨硝子すりガラスにも何とも書いてない。 |
364 |
モミ |
樅 |
樅の木に囲まれた表札も何もない家うちだ」と眼をしばたたかれた。 |
364 |
モミ |
樅 |
その向うに樅の木立ちにかこまれた陰気な平屋建てがある。 |
364 |
サクラ |
桜 |
麻布笄町の神道本局の桜が曇った空の下にチラリと白くなっていた。 |
364 |
ホウ |
朴歯 |
私は鳥打に紺飛白(こんがすり)、小倉袴、コール天の足袋、黒の釣鐘マントに朴歯(ほおば)の足駄といういでたちでお菓子らしい包みを平らに抱えながら高林家のカブキ門を出た。 |
364 |
カブキ門 |
カブキ門 |
私は鳥打に紺飛白(こんがすり)、小倉袴、コール天の足袋、黒の釣鐘マントに朴歯(ほおば)の足駄といういでたちでお菓子らしい包みを平らに抱えながら高林家のカブキ門を出た。 |
365 |
木橋 |
木橋 |
この家だと思いながら私は前の溝川に架かった一間ばかりの木橋を渡った。 |
365 |
杉折り |
杉折り |
私の眼の前で風呂敷を解くと中味は杉折りを奉書に包んだもので黒の水引がかかっていて、その上に四角張った字で「妙音院高誉靖安居士……七回忌」と書いた一寸幅位の紙片が置いてあった。 |
366 |
柳行李 |
柳行李 |
見ると八畳の間一パイに新聞や小説や雑誌の類が柳行李や何かと一緒に散らばっていて、 |
367 |
杉折り |
杉折り |
私が見ている前で杉折りをグッと引き寄せるとポツンと水引を引き切った。 |
367 |
杉折り |
杉折り |
それから杉折りを取り上げるとペキンペキンと押し割って薪のように一束にして、戒名と一緒に奉書の紙に包んだ上から黒水引きでグルグル巻きに縛った。 |
367 |
薪 |
薪 |
それから杉折りを取り上げるとペキンペキンと押し割って薪のように一束にして、戒名と一緒に奉書の紙に包んだ上から黒水引きでグルグル巻きに縛った。 |
370 |
根 |
根も葉もない |
「あんな伝説なんかみんな迷信ですよ。あの鼓の初めの持ち主の名が綾姫といったもんですから謡曲の『綾の鼓』だの能仮面の『あやかしの面』などと一緒にして捏(でっち)上げた碌(ろく)でもない伝説なんです。根も葉もないことです」 |
370 |
葉 |
根も葉もない |
「あんな伝説なんかみんな迷信ですよ。あの鼓の初めの持ち主の名が綾姫といったもんですから謡曲の『綾の鼓』だの能仮面の『あやかしの面』などと一緒にして捏(でっち)上げた碌(ろく)でもない伝説なんです。根も葉もないことです」 |
377 |
板の間 |
板の間 |
それは電気と瓦斯を引いた新式の台所で、手入れの届いた板の間がピカピカ光っている。 |
378 |
木 |
黒い木 |
――西洋式の白い浴槽、黒い木に黄金色の金具を打ちつけた美事な化粧台、 |
380 |
ウメ |
梅 |
青々とした八畳敷の向うに月見窓がある。外には梅でも植えてありそうに見える。 |
381 |
キリ |
桐 |
その下に脚の細い黒塗りの机があって、草色の座布団と華奢な桐の角火鉢とが行儀よく並んでいる。 |
383 |
サクラ |
波 |
胴の模様もこの通り春の桜、夏の波、秋の紅葉、冬の雪となっていて、その時候に打つと特別によく鳴るのです。打って御覧なさい」 |
383 |
紅葉 |
紅葉 |
胴の模様もこの通り春の桜、夏の波、秋の紅葉、冬の雪となっていて、その時候に打つと特別によく鳴るのです。打って御覧なさい」 |
383 |
|
松 |
私は手近の松に雪の模様の鼓から順々に打って行ったが、九段にいる時と違って一パイに出す調子を妻木君は身じろぎもせずに聞いてくれた。 |
384 |
|
桜 |
と御挨拶なしに賞めつつ私は秋の鼓、夏の鼓と打って来て、最後に桜の模様の鼓を取り上げたが、その時何となく胸がドキンとした |
384 |
鉋目 |
鉋目 |
久能張(くのうばり)のサミダレになった鉋目(かんなめ)がまだ新しく見える胴の内側には、蛇の鱗ソックリに綾取った赤樫の木目が目を刺すようにイライラと顕(あら)われていたからである。 |
384 |
カシ |
赤樫 |
久能張(くのうばり)のサミダレになった鉋目(かんなめ)がまだ新しく見える胴の内側には、蛇の鱗ソックリに綾取った赤樫の木目が目を刺すようにイライラと顕(あら)われていたからである。 |
384 |
木目 |
木目 |
久能張(くのうばり)のサミダレになった鉋目(かんなめ)がまだ新しく見える胴の内側には、蛇の鱗ソックリに綾取った赤樫の木目が目を刺すようにイライラと顕(あら)われていたからである。 |
386 |
木目 |
木目 |
この胴の木目のことまで御存じとすれば君は、君のお父さんから本当に遺言をきいて来られたに違いありません。 |
388 |
木片 |
木の片(はし) |
けれどもそれと同時に若先生と私の膝の前に転がっている「あやかしの鼓」の胴が何でもない木の片(はし)のように思われて来たのは、あとから考えても実に不思議であった。 |
390 |
木橋 |
木橋 |
黒い姿が紫色の風呂敷包みを抱えて鶴原家の前の木橋の上に立っていた。 |
393 |
香木 |
香木 |
奥の座敷は香木の香(か)がみちみちてムッとする程あたたかかった。 |
394 |
ボタン |
白牡丹 |
真中に鉄色のふっくりした座布団が二つ、金蒔絵をした桐の丸胴の火鉢、床の間には白孔雀の掛け物と大きな白牡丹の花活(はないけ)がしてあって、丸い青銅の電気ストーブが私の背後うしろに真赤になっていた。 |
394 |
キリ |
桐 |
真中に鉄色のふっくりした座布団が二つ、金蒔絵をした桐の丸胴の火鉢、床の間には白孔雀の掛け物と大きな白牡丹の花活(はないけ)がしてあって、丸い青銅の電気ストーブが私の背後うしろに真赤になっていた。 |
394 |
床の間 |
床の間 |
真中に鉄色のふっくりした座布団が二つ、金蒔絵をした桐の丸胴の火鉢、床の間には白孔雀の掛け物と大きな白牡丹の花活(はないけ)がしてあって、丸い青銅の電気ストーブが私の背後うしろに真赤になっていた。 |
399 |
サクラ |
桜 |
そうしてイキナリ眼の前の桜の蒔絵(まきえ)の鼓に手をかけると、ハッと驚いて唇をふるわしている未亡人を尻目にかけた。 |
405 |
キリ |
桐 |
そのお膳や椀には桐の御紋が附いていた。 |
420 |
モモ |
桃 |
すてきにいい天気で村々の家々に桃や椿が咲き、菜種畠の上にはあとからあとから雲雀があがった。 |
420 |
ツバキ |
椿 |
すてきにいい天気で村々の家々に桃や椿が咲き、菜種畠の上にはあとからあとから雲雀があがった。 |
421 |
木賃宿 |
木賃宿 |
東京に着くと私は着物を売り払って労働者風になって四谷の木賃宿に泊った。 |
421 |
ヒノキ |
檜 |
なつかしい檜のカブキ門が向うに見えると、私は黒い鳥打帽を眉深(まぶか)くして往来の石に腰をかけた。そ |
421 |
カブキ門 |
カブキ門 |
なつかしい檜のカブキ門が向うに見えると、私は黒い鳥打帽を眉深(まぶか)くして往来の石に腰をかけた。そ |
421 |
木賃宿 |
木賃宿 |
私は咳をしいしい四谷まで帰って木賃宿に寝た。 |
422 |
植木 |
植木職人 |
植木職人の風をした私は高林家の裏庭にジッと跼(しゃが)んで時刻が来るのを待った。 |
424 |
板の間 |
板の間 |
微塵も音を立てずに思い出の多い裏二階の梯子を登り切って、板の間に片手を支えながら襖をソロソロと開いた。 |
424 |
木賃宿 |
木賃宿 |
ザアザア降る雨の中を四ツ谷の木賃宿へ帰った。 |