190 |
ナツメ |
棗 |
彼は棗(なつめ)のようにまるまると肥った、短い顋髯(あごひげ)の持ち主だった。 |
190 |
マツ |
松 |
自動車の走る道の両がわは大抵松ばかり茂っていた。 |
190 |
松山 |
松山 |
僕は冬の西日の当った向うの松山を眺めながら、善い加減に調子を合せていた。 |
191 |
格子 |
格子 |
テエブルにかけたオイル・クロオスは白地に細い青の線を荒い格子に引いたものだった。 |
192 |
リンゴ |
林檎 |
林檎を皮ごと噛じっていたり、キャラメルの紙を剥むいていることを除けば。 |
194 |
杖 |
杖の柄 |
が、T君はその前に杖の柄をくるりと左へ向け、顔は前を向いたまま、小声に僕に話しかけた。 |
195 |
松林 |
松林 |
僕はそこを歩いているうちにふと松林を思い出した。 |
200 |
ジンチョウゲ |
沈丁花 |
雪は莟(つぼみ)を持った沈丁花の下に都会の煤煙によごれていた。 |
200 |
莟 |
莟 |
雪は莟(つぼみ)を持った沈丁花の下に都会の煤煙によごれていた。 |
203 |
枝 |
枝や葉 |
道に沿うた公園の樹木は皆枝や葉を黒ませていた。 |
203 |
樹木 |
樹木 |
道に沿うた公園の樹木は皆枝や葉を黒ませていた。 |
203 |
樹木 |
樹木 |
僕はダンテの地獄の中にある、樹木になった魂を思い出し、ビルディングばかり並んでいる電車線路の向うを歩くことにした。 |
203 |
葉 |
枝や葉 |
道に沿うた公園の樹木は皆枝や葉を黒ませていた。 |
206 |
リンゴ |
林檎 |
僕は愈(いよいよ)不快になり、硝子戸の向うのテエブルの上に林檎やバナナを盛ったのを見たまま、もう一度往来へ出ることにした。 |
212 |
バラ |
薔薇色 |
就中(なかんずく)僕を不快にしたのはマホガニイまがいの椅子やテエブルの少しもあたりの薔薇色の壁と調和を保っていないことだった。 |
212 |
バラ |
薔薇色 |
僕はこのカッフェの薔薇色の壁に何か平和に近いものを感じ、一番奥のテエブルの前にやっと楽々と腰をおろした。 |
212 |
マホガニイ |
マホガニイまがい |
就中(なかんずく)僕を不快にしたのはマホガニイまがいの椅子やテエブルの少しもあたりの薔薇色の壁と調和を保っていないことだった。 |
212 |
丸太 |
丸太 |
ずっと長い途を歩いて来た僕は僕の部屋へ帰る力を失い、太い丸太の火を燃やした炉の前の椅子に腰をおろした。 |
212 |
松林 |
松林 |
僕は屈辱を感じながら、ひとり往来を歩いているうちにふと遠い松林の中にある僕の家を思い出した。 |
215 |
松林 |
松林 |
僕はこのプウルを後ろに向うの松林へ歩いて行った。 |
215 |
生け垣 |
生け垣 |
れは田舎の停車場だったと見え、長い生け垣のあるプラットフォオムだった。 |
216 |
焚き木 |
焚き木 |
そこへ白い服を着た給仕が一人焚(た)き木を加えに歩み寄った。 |
217 |
バラ |
薔薇の花 |
れらの紙屑は光の加減か、いずれも薔薇の花にそっくりだった。 |
223 |
植木屋 |
植木屋 |
その植木屋の娘と云うのは器量も善いし、気立も善いし、 |
224 |
リンゴ |
林檎 |
のみならず彼の勧めた林檎はいつか黄ばんだ皮の上へ一角獣の姿を現していた。 |
224 |
木目 |
木目 |
(僕は木目や珈琲茶碗の亀裂(ひび)に度たび神話的動物を発見していた) |
232 |
松林 |
松林 |
それは黄ばんだ松林の向うに海のある風景に違いなかった。 |
233 |
マツ |
松 |
すると低い松の生えた向うに、――恐らくは古い街道に葬式が一列通るのをみつけた。 |
233 |
縁側 |
縁側 |
鳥は鳩や鴉(からす)の外に雀も縁側へ舞いこんだりした。 |
233 |
松林 |
松林 |
僕の二階は松林の上にかすかに海を覗かせていた。 |
234 |
マツ |
松の梢 |
そこへ松の梢こずえから雀が何羽も舞い下さがって来た。 |
234 |
柵 |
柵 |
道ばたには針金の柵の中にかすかに虹の色を帯びた硝子の鉢が一つ捨ててあった。 |
234 |
梢 |
松の梢 |
そこへ松の梢こずえから雀が何羽も舞い下さがって来た。 |
236 |
マツ |
松の梢 |
僕は思わず空を見上げ、松の梢に触れないばかりに舞い上った飛行機を発見した。 |
236 |
垣 |
垣 |
すると弟も微笑しながら、遠い垣の外の松林を眺め、何かうっとりと話しつづけた。 |
236 |
松林 |
松林 |
すると弟も微笑しながら、遠い垣の外の松林を眺め、何かうっとりと話しつづけた。 |
236 |
梢 |
松の梢 |
僕は思わず空を見上げ、松の梢に触れないばかりに舞い上った飛行機を発見した。 |
237 |
マツ |
松 |
この小みちの右側にはやはり高い松の中に二階のある木造の西洋家屋が一軒白じらと立っている筈だった。 |
237 |
枝 |
枝一つ |
妻の母の家を後ろにした後、僕は枝一つ動かさない松林の中を歩きながら、じりじり憂鬱になって行った。 |
237 |
松林 |
松林 |
妻の母の家を後ろにした後、僕は枝一つ動かさない松林の中を歩きながら、じりじり憂鬱になって行った。 |
237 |
木造 |
木造の西洋家屋 |
この小みちの右側にはやはり高い松の中に二階のある木造の西洋家屋が一軒白じらと立っている筈だった。 |
238 |
枝 |
枝 |
同時に又右の松林はひっそりと枝をかわしたまま、丁度細かい切子硝子ガラスを透かして見るようになりはじめた。 |
238 |
松林 |
松林 |
同時に又右の松林はひっそりと枝をかわしたまま、丁度細かい切子硝子ガラスを透かして見るようになりはじめた。 |
239 |
梯子段 |
梯子段 |
こへ誰か梯子段を慌(あわた)だしく昇って来たかと思うと、すぐに又ばたばた駈け下りて行った。 |
239 |
梯子段 |
梯子段 |
僕はその誰かの妻だったことを知り、驚いて体を起すが早いか、丁度梯子段の前にある、薄暗い茶の間へ顔を出した。 |