156 |
サクラ |
桜 |
が、彼はその桜に、――江戸以来の向う島の桜にいつか彼自身を見出していた。 |
156 |
サクラ |
桜 |
が、彼はその桜に、――江戸以来の向う島の桜にいつか彼自身を見出していた。 |
156 |
サクラ |
桜 |
花を盛つた桜は彼の目には一列の襤褸(ぼろ)のように憂欝だった。 |
156 |
サクラ |
桜 |
彼は走つている小蒸汽の窓から向う島の桜を眺めていた。 |
157 |
ゴムノキ |
ゴムの樹 |
しかしパンの神の額の下には赭(あか)い鉢に植えたゴムの樹が一本、肉の厚い葉をだらりと垂らしていた。 |
157 |
ヤシ |
椰子 |
Talipot 東印度に産する椰子。 |
157 |
ヤシ |
椰子の花 |
この遠い海の向うに高だかと聳(そび)えている椰子の花を。 |
157 |
ヤシ |
椰子の花 |
彼は短い命を思い、もう一度この椰子の花を想像した。 |
157 |
幹 |
幹 |
幹は五十呎(フイート)より百呎の高さに至り、葉は傘、扇、帽等に用いらる。 |
157 |
葉 |
葉 |
幹は五十呎(フイート)より百呎の高さに至り、葉は傘、扇、帽等に用いらる。 |
158 |
木の枝 |
木の枝 |
彼はいつか木の枝のうねりや女の頬の膨らみに絶え間ない注意を配り出した。 |
160 |
アンズ |
杏の匂 |
が、腐敗した杏の匂に近い死体の臭気は不快だった。 |
160 |
かし |
かしの木 |
かし(木+解)の木は秋の日の光の中に一枚の葉さへ動さなかつた。 |
160 |
かし |
かしの木 |
彼は大きいかし(木+解)の木の下に先生の本を読んでeゐた。 |
161 |
すずかけ |
篠懸 |
市場のまん中には篠懸(すずかけ)が一本、四方へ枝をひろげていた。 |
161 |
バラ |
薔薇色 |
市場に群つた人々や車はいづれも薔薇色に染まり出した。 |
161 |
根 |
根もと |
彼はその根もとに立ち、枝越しに高い空を見上げた。 |
161 |
枝 |
枝 |
市場のまん中には篠懸(すずかけ)が一本、四方へ枝をひろげていた。 |
161 |
枝 |
枝越しに |
彼はその根もとに立ち、枝越しに高い空を見上げた。 |
161 |
葉 |
葉 |
大きい芭蕉の葉の広がつたかげに。 |
163 |
バラ |
薔薇の葉 |
彼は薔薇の葉の匂のする懐疑主義を枕にしながら、アナトオル・フランスの本を読んでいた。 |
167 |
根 |
根 |
丈の高い唐黍は荒あらしい葉をよろつたまま、盛り土の上には神経のやうに細ぼそと根を露(あら)はしていた。 |
167 |
粗朶垣 |
粗朶垣 |
蠣殻がらのついた粗朶垣(そだがき)の中には石塔が幾つも黒くろずんでいた。 |
167 |
葉 |
葉 |
丈の高い唐黍は荒あらしい葉をよろつたまま、盛り土の上には神経のやうに細ぼそと根を露(あら)はしていた。 |
169 |
ざくろ |
柘榴の花 |
彼は部屋の戸口に立ち、柘榴の花のさいた月明りの中に薄汚い支那人が何人か、麻雀戯マアチアンをしているのを眺めていた。 |
173 |
アンズ |
杏の匂に |
それはどこか熟し切つた杏の匂に近いものだった。 |
174 |
サルスベリ |
百日紅 |
縁先の庭には百日紅が一本、――彼は未だに覚えている。 |
177 |
幹 |
木の幹 |
それは何か木の幹に凍つた、かがやかしい雪を落すように切ない心もちのするものだった。 |
177 |
木 |
木の幹 |
それは何か木の幹に凍つた、かがやかしい雪を落すように切ない心もちのするものだった。 |
178 |
リンゴ |
焼林檎 |
彼の友だちは焼林檎を食い、この頃の寒さの話などをした。 |
178 |
木の芽 |
木の芽 |
それは木の芽の中にある或ホテルの露台だった。 |
181 |
檣 |
檣 |
「檣(ほばしら)の二つに折れた船が。」 |
183 |
バラ |
薔薇 |
この詩人の心にはアクロポリスやゴルゴタの外にアラビアの薔薇さへ花をひらいていた。 |
184 |
立木 |
立ち木 |
丁度昔スウイフトの見た、木末こずゑから枯れて来る立ち木のように。…… |
185 |
シイ |
椎の若葉 |
彼はひとり籐椅子に坐り、椎の若葉を眺めながら、度々死の彼に与える平和を考へずにはいられなかった。 |
185 |
若葉 |
椎の若葉 |
彼はひとり籐椅子に坐り、椎の若葉を眺めながら、度々死の彼に与える平和を考へずにはいられなかった。 |
187 |
薔薇 |
薔薇 |
それから二三日後には或温泉宿へ出かける途中、薔薇の花さえ食っていたと云ふことだつた。 |
188 |
杖 |
杖 |
言はば刃のこぼれてしまった、細い剣を杖にしながら |
1847 |
木末 |
木末 |
丁度昔スウイフトの見た、木末(こずえ)から枯れて来る立ち木のように。…… |