0 |
格子 |
袖格子 |
さうして朱塗のような袖格子が、ばらぱらと焼け落ちる中に |
105 |
梅花 |
梅花の宴 |
何時ぞや、内の梅花の宴からの御帰りに御車の牛が放れて、 |
106 |
チョウジ |
丁字染 |
よく丁字染の狩衣に揉烏帽子(もみゑぼし)をかけておりましたが、 |
107 |
マツ |
御庭の松 |
やれ御庭の松に上つたの、やれ曹司の畳をよごしたのと、 |
108 |
ウメ |
寒紅梅の枝 |
御文を結んだ寒紅梅の枝を持つて、長い御廊下を通りかゝりますと、 |
108 |
ウメ |
梅の枝 |
片手に梅の枝をかざした儘、片手に紫匂の袿(うちぎ)の袖を軽そうにはらりと開きますと、 |
108 |
遣戸 |
遣戸 |
遠くの遣戸の向うから、例の小猿の良秀が、大方足でも挫いたのでございましょう、 |
108 |
枝 |
寒紅梅の枝 |
御文を結んだ寒紅梅の枝を持つて、長い御廊下を通りかゝりますと、 |
108 |
枝 |
梅の枝 |
片手に梅の枝をかざした儘、片手に紫匂の袿(うちぎ)の袖を軽そうにはらりと開きますと、 |
108 |
柱 |
柱 |
何時ものように柱へ駆け上る元気もなく、 |
109 |
カキ |
柿や栗 |
しまいには若殿様でさえ、時々柿や栗を投げて御やりになつたばかりか、 |
110 |
クリ |
柿や栗 |
しまいには若殿様でさえ、時々柿や栗を投げて御やりになつたばかりか、 |
112 |
檜垣 |
檜垣 |
或日さる方の御邸で名高い檜垣の巫女御霊ごうが憑いて、 |
113 |
ウメ |
梅の花 |
やれ板戸の梅の花が、月の夜毎に匂つたの、 |
113 |
板戸 |
板戸 |
やれ板戸の梅の花が、月の夜毎に匂つたの、 |
119 |
刀樹 |
刀樹 |
まるで獣の牙のような刀樹の頂きを半ばかすめて(その刀樹の梢にも、多くの亡者が累々と、 |
119 |
刀樹 |
刀樹の梢 |
まるで獣の牙のような刀樹の頂きを半ばかすめて(その刀樹の梢にも、多くの亡者が累々と、 |
119 |
刀樹 |
刀樹の梢 |
まるで獣の牙のような刀樹の頂きを半ばかすめて(その刀樹の梢にも、多くの亡者が累々と、 |
119 |
落葉 |
落葉 |
大風に吹き散らされる落葉のように、紛々と四方八方へ逃げ迷つているのでございます。 |
121 |
蔀 |
蔀 |
昼も蔀(しとみ)を下おろした部屋の中で、結燈台(ゆいとうだい)の火の下に、秘密の絵の具を合せたり、 |
122 |
結燈台 |
結燈台 |
その煤臭い明あかりで眺めますと、結燈台が倒れたので、 |
122 |
造作 |
造作 |
それも別に造作のない事でございますから、「よろしうございます。」と申しますと、 |
122 |
煤 |
煤臭い |
その煤臭い明あかりで眺めますと、結燈台が倒れたので、 |
131 |
落葉 |
落葉の匂 |
落葉の匂だか、滝の水沫とも或は又猿酒の饐(す)えたいきれだか何やら怪しげなもののけはいを誘つて、 |
135 |
ウメ |
梅の匂 |
確、もう梅の匂でも致しさうな、うすい月の光のさしている、暖い夜でございましたが、 |
136 |
遣り戸 |
遣り戸 |
その遣り戸へ後ざまに、したたか私の体を打ちつけました。 |
136 |
枝 |
枝ぶりのやさしい松 |
夜目にもうす白い御池の水が枝ぶりのやさしい松の向うにひろびろと見渡せる、 |
136 |
松 |
枝ぶりのやさしい松 |
夜目にもうす白い御池の水が枝ぶりのやさしい松の向うにひろびろと見渡せる、 |
136 |
森 |
森と静まり返つて |
あたりはどこも森と静まり返つて、月明りとも靄(もや)ともつかないものゝ中で、 |
137 |
遣り戸 |
遣り戸 |
私は矢庭に遣り戸を開け放して、月明りのとどかない奥の方へ跳りこもうと致しました。 |
138 |
遣り戸 |
遣り戸 |
やがて明け放した遣り戸を閉しながら少しは上気の褪(さ)めたらしい娘の方を見返つて、 |
141 |
檳榔毛 |
檳榔毛 |
私は屏風の唯中に、檳榔毛の車が一輛空から落ちて来る所を描こうと思つておりまする |
142 |
檳榔毛 |
檳榔毛の車 |
どうか檳榔毛の車を一輛、私の見ている前で、火をかけて頂きとうございまする。 |
143 |
檳榔毛 |
檳榔毛の車 |
檳榔毛の車にも火をかけよう。又その中にはあでやかな女を一人、 |
144 |
檳榔毛 |
檳榔毛の車 |
良秀を御召しになつて、檳榔毛の車の焼ける所を、目近く見せて御やりになりました。 |
145 |
ビンロウ |
檳榔毛の車 |
御庭に引き据ゑた檳榔毛の車が、高い車蓋(やかた)にのつしりと暗(やみ)を抑えて |
145 |
榻 |
榻へ |
牛はつけず黒い轅(ながえ)を斜に榻(しじ )へかけながら、 |
146 |
松明 |
松明 |
手ん手に燃えさかる松明(まつ)を執つて、煙が御縁の方へ靡くのを気にしながら、 |
146 |
松明 |
松明の煙が |
唯かすかな夜風の渡る音がして、松明の煙がその度に煤臭い匂を送つて参ります。 |
146 |
煤 |
煤臭い匂 |
唯かすかな夜風の渡る音がして、松明の煙がその度に煤臭い匂を送つて参ります。 |
146 |
林泉 |
林泉 |
林泉をつつんだ暗がひつそりと声を呑んで、 |
148 |
サクラ |
桜の唐衣 |
きらびやかな繍(ぬい)のある桜の唐衣にすべらかし黒髪が艶やかに垂れて |
148 |
松明 |
松明の光 |
けたたましく音を立てて燃える松明の光は、一しきり赤くゆらぎながら、 |
148 |
松明 |
松明の火 |
仕丁たちが投げる松明の火を浴びて炎々と燃え上つたのでございます。 |
148 |
松明 |
松明の火 |
片手に松明の火を高くかざしながら、 |
148 |
柄頭 |
柄頭 |
柄頭を片手に抑えながら、屹(つと)き良秀の方を睨みました。 |
149 |
格子 |
袖格子 |
それよりもめらめらと舌を吐いて袖格子に搦(から)みながら、 |
149 |
檳榔毛 |
檳榔毛の車 |
娘を乗せた檳榔毛の車が、この時、「火をかけい」と云ふ大殿様の御言と共に、 |
150 |
桜 |
桜の唐衣 |
それから又見る間に火と変つて行く、桜の唐衣の美しさ、 |
151 |
梢 |
木々の梢 |
するとその夜風が又一渡り、御庭の木々の梢にさつと通ふ |
151 |
木々 |
木々の梢 |
するとその夜風が又一渡り、御庭の木々の梢にさつと通ふ |
154 |
木石 |
木石 |
それでも屏風の画を描きたいと云うその木石のような心もちが、 |
155 |
梁 |
梁へ |
自分の部屋の梁へ縄をかけて、縊(くび)れ死んだのでございます。 |