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小説と木
  1. マツ 1箇所

夢野久作の小説「蔦の門」に出てくる樹木、木製品

この小説の初出は 1938年、文庫本におけるページ数は 16ページ
ページ 元樹種 掲載樹種 掲載言葉
154 蔦の芽 蔦の芽が摘まれた事件があつた日から老婢まきは、
154 蔦の芽 蔦の芽が摘まれた事件があつた日から老婢まきは、
154 板の間 用もなく、厨(くりや)の涼しい板の間にぺたんと坐つているときでも急に顔を皺(しわ)め、
159 緑のゴブラン織のやうな蔦の茂みを背景にして背と腰で二箇所に曲つている長身をやをら伸ばし、箒
160 草木 草木の芽 そしてにこにこしている。まきも老いて草木の芽に対する愛は、所詮、人の子に対する愛にしかずといふやうな悟りでも得たのであらうか。
160 草木の芽 そしてにこにこしている。まきも老いて草木の芽に対する愛は、所詮、人の子に対する愛にしかずといふやうな悟りでも得たのであらうか。
146 私の住む家の門には不思議に蔦つたがある
146 その前にゐた青山隠田の家には矢張り蔦があつた。
146 蔦の門には余程縁のある私である
146 蔓葉 蔓葉 若人の濡ぬれ髪を干すやうに閂(かんぬき)の辺まで鬱蒼と覆ひ掛り垂れ下る蔓葉の盛りを見て
146 強ひて蔦の門の偶然に就いて考へてみることもある。
146 蔦の根 たとへ蔦の根はあつても生え拡がるまいし
146 蔦の根 たとへ蔦の根はあつても生え拡がるまいし
146 蔦の門 蔦の門には偶然に加ふるに多少必然の理由はあるのだらうか
147 表門を蔦の成長の棚床に閉ぢ与へて、人間は傍の小さい潜門(くぐりもん)から
147 この質素な蔦を真実愛してゐるのだつた。
147 次の家の探し方に門に蔦のある家を私たちは黙契のうちに条件に入れて探してゐたのかも知れない。
147 蔦なき門 蔦なき門の家に住んでゐたときの家の出入りを憶おもひ返し、
147 葉盛 夏の葉盛りには鬱青(うっせい)の石壁にも譬(たと)へられるほど、蔦はその肥大な葉を鱗状に積み合せて門を埋めた。
147 夏の葉盛りには鬱青(うっせい)の石壁にも譬(たと)へられるほど、蔦はその肥大な葉を鱗状に積み合せて門を埋めた。
147 肥大な葉 夏の葉盛りには鬱青(うっせい)の石壁にも譬(たと)へられるほど、蔦はその肥大な葉を鱗状に積み合せて門を埋めた。
147 朽葉 黄葉朽葉 霜の下りる朝毎に黄葉朽葉(くちば)を増し、風もなきに、かつ散る。
147 枝や蔓枝 捲いては縒(よ)れ戻る枝や蔓枝だけが残り、
147 蔓枝 枝や蔓枝 捲いては縒(よ)れ戻る枝や蔓枝だけが残り、
147 蔦を見て楽しく爽な気持ちをするのは新緑の時分だつた。
147 新緑 新緑 蔦を見て楽しく爽な気持ちをするのは新緑の時分だつた。
147 若葉 若葉 透き通る様な青い若葉が門扉の上から雨後の新滝のやうに流れ降り、
148 萌黄 萌黄いろ その萌黄いろから出る石竹せきちく色の蔓尖つるさきの茎や芽は、
148 蔓尖 蔓尖 その萌黄いろから出る石竹せきちく色の蔓尖つるさきの茎や芽は、
148 われ勝ちに門扉の板の空所を匍(は)ひ取らうとする。
148 蔓の木 白金の家の敷地の地味はもつともこの種の蔓の木によかつたらしく、
148 若葉 若葉 柔かく肥ふとつた若葉が無数に蔓で絡からまり合ひ、
148 柔かく肥ふとつた若葉が無数に蔓で絡からまり合ひ、
148 草木 草木 自然や草木に対してわり合ひに無関心の老婢(ろうひ)のまきまでが美事な蔦に感心した。
148 自然や草木に対してわり合ひに無関心の老婢(ろうひ)のまきまでが美事な蔦に感心した。
148 蔦の門扉 老婢は空の陽を手庇で防ぎながら、仰いで蔦の門扉に眼をやつてゐた。
148 芽尖 芽尖 日によると二三寸も一度に伸びる芽尖(めさき)があるのでございます。
148 草木 草木 草木もかうなると可愛ゆいものでございますね」
148 草木 草木 急な老婢は、草木の生長の速力が眼で計れるのに始めて自然に愛を見出して来たものゝやうである。
148 蔦の芽 この蔦の芽にどうやら和やかな一面を引き出されたことだけでも私には愉快だ
149 蔦の芽 蔦の芽でも可愛がつておやりよ。おまへの気持ちの和みにもなるよ」
149 もうこの蔦に就いて他のことを考へてゐるらしかつた。
150 マツ 松の初花 そのまゝ佇んで、しめやかな松の初花の樹脂臭い匂ひを吸ひ入れながら、
150 樹脂 樹脂臭い そのまゝ佇んで、しめやかな松の初花の樹脂臭い匂ひを吸ひ入れながら、
150 蔦の門 大きく両手を突出した様子が蔦の門を越した向うに感じられた。
150 蔦の芽 蔦の芽 「じや、この蔦の芽をちよぎつたのは誰だ。え、そいつてごらん。え、誰だよ、そら言へまい」
150 蔦の芽 蔦の芽 おまへさんたちいゝ子だから、この蔦の芽を摘むんぢやないよ。
152 門の蔦は、子供の手の届く高さの横一文字の線にむしり取られて、
152 子供の背丈けだけに摘み揃つている蔦の芽の摘み取られ方には、
152 葉茶屋 葉茶屋 ひろ子の家は二筋三筋距へだたつた町通りに小さい葉茶屋の店を出していた。
152 上り框 上り框 上り框と店の左横にさゝやかな陳列硝子戸棚を並べ、
153 茶の湯用の漆うるし塗りの棗や、竹の茶筅(ちゃせん)が埃を冠(かむ)つていた。
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