今日の経済繁栄は、猛烈な速度で進展した技術革新と大量の化石資源を消費する産業構造とに支えられて実現したと言えるでしょう。この繁栄が人間の社会に近代化をもたらしたことは否定できません。平たく言えば私たちの生活をたいへん便利にしたわけです。しかしその一方では、地球温暖化、オゾン層の破壊、熱欝雨林の減少、砂漠化、酸性雨などの探刻な環境問題を抱えることになりました。これらの問題はわが国のみならず地球規模で取り組まなければなりません。地球温暖化は二酸化炭素の濃度が増加することによります。文化的な生活をし、生活水準が高くなるにつれて二酸化炭素は増加すると言われますが、その原因は化石燃料の大量消費と森林破壊とに大別できます。
さらに森林破壊は焼畑、放牧、商業伐採、酸性雨、乱開発といったすべて人為的な原因によるものです。森林には、気象環境の緩和、水資源滋養、自然災害の防止、防火、防風、防霧、騒音防止、大気浄化、野生動物の保護、保健休養、風致保全、教育の場などさまざまな働きがあります。これらの一つ一つが人間の生存に大きく影響していて、欠かすことができません。また森林は文化の形成や都市文明の盛衰にも深く関わってきました。
わが国は典型的な森林依存型の文化圏に位置し、古くから『木の文化』を育んできました。森林を敬い身近な生活のなかに森林の恵みを巧みに取り入れてきたのです。国土の約7割を森林で占める森林大国のわが国が、地球規模で解決すべき環境問題に取り組むためには、森林が持つ公益的機能や多面的価値を再認識し森林文化を継承すること、すなわち森林を保護し、健全な森林を育成することが必要だと言えます。
多くの人々がフィトンチッドへの関心を通じて森林や木に親しみ、森林の偉大さや大切さを再認識することが、森林を護り健全な森林を育てることに繋ると考えられます。