いま、木材は戦前の約三倍になっており、一方、薪炭材は四〇〇分の一に減ってきたと述べましたが、なぜこのように薪炭材は急激に減ってきたのでしょうか。薪炭のエネルギーが石油などに比較してそれほど少ないというわけでもなく、価格差もそれほど大きくはないのに、薪炭は灯油に変わり、山林以外に仕事はないという地域にまで暖房用の石油製品は山坂を越えて普及しているというのはなぜかというと、いままでの薪炭は、作る方も使う方も人手がかかりすぎるということではないでしょうか。時代の流れの変化の中で、薪炭材の需要もまた大きく変化したと言えます。
建築需要においても、時代の変化とともに、薪炭材ほどでないにしても、その様相を異にしています。昭和二十七年、二十八年頃から以後、昭和三十五、三十六年頃までの間は、日本の場合には土地がふんだんにあったとは言えないにしても、自分で家を建てようとする人たちは、土地を購入したり親からの土地を貰ったりして、そこに注文住宅を建てるという傾向が、ずっと続いていました。 ところが、昭和三〇年代末期から、プレハブ業界が誕生・発達してきて、プレハブ業者が自分で土地を造成し、その造成した土地の上に家を建てて売るという形態に変わってきた。同時に、新設住宅着工戸数と木造率の推移建売りという業種が出てきて、プレハブも同じことですけれども、注文住宅のように建て主から注文を受けてから家を建てるというのではなくて、住宅を建ててしまってから売る、そういう時代になってきました。
そこへ国土法と税制の改正があって、土地の売買だけで儲けるのはけしからん、だから土地の価格が取得した時の価格よりも二〇%以上高くなった時には、プレバフ住宅建設戸数推移その土地に特別の税金を掛ける、ということが起こって、それによってプレハブメーカーは土地付きでプレハブ住宅を販売することを一斉に止めてしまったわけです。なぜ土地付きでプレハブ住宅を販売することを止めたかと言うと、それまで「建物は坪三五万円ですよ」とか「A規格の住宅は一千万円で、B規格の住宅は一千五百万円です」というように建物の単価を固定して売っていたものですから、そうすると土地によっていくら儲けたかが税務署が帳面を見たら一遍に分かってしまって税金を掛けられる、そういう ツーバイフォー住宅建設戸数推移
ことで税制の改正以降は、プレハブメーカーは土地付きプレハブ住宅の販売を一斉に止めたわけです。
もっとも、最近になってまた増えてきていますけれども、そこで代りに始まったのが、土地だけを持っていたデベロッパー、主として鉄道関係の不動産会社、例えば東急不動産、西武不動産、近鉄不動産、関西であれば南海鉄道の南海不動産、阪急電鉄の阪急不動産、阪神電鉄の阪神不動産――こういった、沿線開発をしようとして土地を持っていた会社が、土地だけの売買ではストレートに税金を取られるようになったというので、その土地の上に家を建てて売るというやり方です。本当は建てた住宅の方では利益はないのだけれども、土地の値上がりの方を安く経理処理をして、建物によって儲けたことにして、それで税金を軽くしようという戦術に出たわけです。このように不動産業者が建売りを行うことになって、一ヵ所で二千戸や三千戸はザラであって、七千戸も八千戸もといった大量の住宅を建てて売るというような大変革が生じたわけです。