ボアドローズ油は、クスノキ科のAniba rosaeodoraを中心に数種の木から得られる精油です。この中位の常緑樹は南米に自生しており、主にアマゾン流域を原産としています。樹幹を細かく砕き、水蒸気蒸留することで、リナロールを主成分(70%以上)とする精油が抽出されます。現在、この精油はブラジル、ペルー、ギアナで採取されています。
ブラジルでは一時、年産600トンに達していましたが、現在は250トン程度に減少しています。ペルー産のボアドローズ油は、ブラジル産に比べて品質が劣り、価格も安いとされています。また、ギアナ産のものは「カイエンヌ油」とも呼ばれ、非常に少量しか生産されていません。十数年前までは、ボアドローズ油は世界的に重要な精油の一つとされていましたが、近年は合成リナロールの普及により、その地位が脅かされています。
ボアドローズ油は「ローズウッド油」とも呼ばれ、そのまま化粧品や石鹸に使用されるほか、リナロールや酢酸リナロールの原料としても利用されています。また、ボアドローズ油には抗菌作用やリラクゼーション効果があるとされ、アロマテラピーでも人気が高まっています。加えて、この樹木は乱伐による絶滅の危機が指摘されているため、持続可能な生産方法への取り組みが求められています。
芳油は、クスノキ科のCinnamomum camphora var. glaucescens、別名「芳樟木」から得られる精油です。この樹木は台湾や中国に広く成育しています。幹や枝、根を水蒸気蒸留することで、(-)-リナロールを主成分(75~90%)とする芳油が抽出されます。戦前の台湾では、年間300トンもの芳油が生産されていましたが、現在ではその生産量は10%以下にまで減少しています。
芳油は「ホーウッドオイル」とも呼ばれ、特に石鹸用の調合香料や、酢酸リナロールの製造原料として利用されています。また、芳油には抗菌作用やリラクゼーション効果があり、アロマテラピーやスキンケア製品にも広く使用されています。最近では、そのフレッシュで心地よい香りがリラクゼーションやストレス解消の用途としても注目されています。
芳油の持続可能な生産についても懸念があり、特に台湾や中国の自然環境の保護と、乱伐による資源枯渇を防ぐための対策が求められています。近年では、持続可能な栽培方法や再植林の取り組みが進められており、環境への負荷を減らしながら芳油の安定供給を目指す動きが強まっています。
オコチア油は、クスノキ科の植物であるOcotea pretiosa(別名:O.cymbarum)から得られる精油です。この植物は、ブラジル、パラグアイ、コロンビアなど南米各地に野生する喬木で、幹を細かく砕いて水蒸気蒸留することで、サフロールを90%以上含む精油が抽出されます。オコチア油は「ブラジルサッサフラス」とも呼ばれ、1938年に初めて登場した比較的新しい精油です。それにもかかわらず、年産1,000トン規模の生産量に達しており、世界的に重要なサフロール供給源となっています。
特に、日本や台湾での樟脳油の生産が衰退したことから、現在では世界のサフロール供給はオコチア油に大きく依存しています。このサフロールは、ヘリオトロピンや農薬、医薬品などの合成原料として広く使用されているほか、防虫防臭剤、洗剤、ワックスの香料としても利用されています。
さらに、オコチア油の生産には持続可能な方法が求められています。特に、乱伐や環境破壊の影響が懸念されており、南米各国ではオコチアの資源保護と持続可能な生産体制の確立に向けた取り組みが進められています。また、オコチア油はその抗菌・防虫作用が注目され、今後さらに幅広い用途での利用が期待されています。
樟脳油は、クスノキ科の常緑喬木であるCinnamomum camphora(クスノキ)から得られる精油です。この木は高さ50メートルにも達することがあり、樹幹、枝、根を細かく砕いて水蒸気蒸留することで樟脳原油が得られます。この原油をさらに処理することで、樟脳50%、白油20%(主成分シネオール)、赤油22%(主成分サフロール)に分けられます。
樟脳はかつてセルロイドの原料や防虫剤、またボルネオール製造の原料として広く利用されていましたが、天然樟脳は現在、合成品にほとんど置き換わっています。その結果、日本での天然樟脳に関連する事業はほぼ姿を消し、現在では中国、海南島、台湾でわずかに生産が続けられているにすぎません。
さらに、樟脳は医薬品や香料としての用途もあり、特に防虫効果や鎮痛・消炎作用が注目されています。しかし、天然樟脳の生産が減少したため、環境保護と持続可能な生産体制の確立が求められています。最近では、合成樟脳の利用が拡大している一方で、天然樟脳の貴重さも見直されており、特に高品質な香料や伝統的な製品においてその価値が再評価されています。
サンダルウッドは白檀とも呼ばれ、400年以上前から高貴な香木として知られています。原産地はインドで、特にマイソール州が現在の主産地となっています。この植物はツクバネノキ科のSantalum albumに属し、高さ6メートルから10メートルに達する大木です。幹と根を水蒸気蒸留することによって精油が抽出されます。
サンダルウッド油の製油には、樹齢30年以上の木を細片にし、さらに粉砕して水に浸して蒸留する方法が用いられます。ただし、油の比重が重いため、技術的な知識と経験が必要です。この油は、セスキテルペンアルコールの一種であるサンタロールを90%以上含み、特有の保留性の強い東洋的な香気を持っています。
サンダルウッド油は、石鹸香料や一般香料調合用として年間150トン以上が消費されており、そのうち約80%はインド産です。さらに、サンダルウッドの材は香木として彫刻や細工物に利用されるほか、薫香や防虫用としても使用されています。
最近では、サンダルウッドの資源保護が重要な課題となっており、違法伐採や環境破壊の影響を受けています。持続可能な生産方法や栽培の取り組みが進められており、サンダルウッドの価値と重要性が再評価されています。また、アロマテラピーや伝統医療においても、サンダルウッド油はリラクゼーションやストレス緩和、抗炎症作用があるとされ、広く利用されています。