だが、幅はぎ板の成功を支えるには、単に幅はぎ板の製造・販売に力を入れればよいというものではありません。先に、アメリカのシンプソンの会社では、製材工場、合板工場、パルプ工場が三位一体となっていることを述べ、これは我が国の製材工場において、建築材、幅はぎ板、オガコ利用、ペレット製造を合わせて進めることを意味すると述べましたが、木材のサシミの部分からツマの部分までをすべて使うことによって総合所得を上げてゆくという、グローバルな視点が必要とされます。
現状では、木材のいわゆる鋸物の方がより多く出てきているわけですから、総合的な所得向上を図るためには、鋸物の活用について、とくに考慮を払わねばなりません。その一つであるペレットについてここで簡単に触れておくと、木質燃料ペレットはアメリカで開発され実用化されたアイデアですが、それが昭和五三年頃から日本にも取り入れられ、効率のよい燃料ボイラーができ、メロンなど温室栽培の農家が一定温度を決めておけばサーモスタットが感知してくれて、温度が下がれば自動的にペレットによる燃料ボイラーに火がついて温度を上昇させ、適温になるとまた自動的に消えるというようなシステムができ、ペレットも一週間に一度貯蔵タンクに入れてほっておけば自動的に温度を調整してくれるということになって、にわかに木質燃料として注目されるようになったことはご承知のとおりです。現在のペレット製造方法はいわゆるアメリカ式の大量生産方式のため、相当な木質燃料(月間二、〇〇〇トン位)の出る所でなければ採算がとれないので、もっと少量(月間一五〇?位)で採算のとれるペレットの製造システムの開発が進められていますが、一?五、〇〇〇円ぐらいまで廃材が利用可能になれば、木材の最低価格線が引かれ、パルプ等の材料も自然に高い価格の線に落ち着くだろうし、山林業者の総合所得が向上することになるはずです。人手がかかり過ぎることによって使われなくなり、石油にとって替わられた薪炭材の失地を回復するものとして、飛躍的に需要が拡大することも考えられるわけです。と言うことで、鋸物の利用、活用を図ることは、当面の大きな課題に違いありませんが、サシミからツマまでを使うことによって総合所得を上げてゆくという考え方から言えば、これから国産材時代の本格化にともなってもっと用材が出てくるということになると、いわゆるサシミの方ももっと上手に売るという方法に力点を置いて行かねばならない、と言うことになります。