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木材流通

第7章 木材流通経営の基本的な心得

得意先を独占するのは危険である

同じような意味から、得意先も片寄るのはいけない。得意先を自分のところ一軒にしぼらないようにすることも大切です。これは、山本工務店というのがあり、そこにA木材店が木材を納めるという場合、A木材店としては自分の店だけで一人じめにするようなことをしてはいけないということです。

 常識的に考えると、A木材店だけが専属になった方が、納材もスムースに行って利益も多くなるだろうし自由がきいていいのではないかと思いがちです。だが、A木材店一軒だけで独占して材を納めていると、もしも山本工務店の経営状態が悪化した時に、逃げられなくなってしまうのです。納材の場合、通常四ヵ月の手形を貰います。売掛金の期間が一ヵ月あります。これで、二~三ヵ月前の受注契約をしているとなると、お金を手に入れるまでに八ヵ月かかるわけですから、得意先の経営状態があぶないなと思った時には、私たちの場合、八ヵ月から九ヵ月前からブレーキを掛けなければならないわけです。九ヵ月前からブレーキを掛けてはじめて、全部の手形が落ちた時に得意先が倒産しても支払の方は大丈夫というわけですから、その間に自分の所がパッと手を引いてしまったら、お得意先はたちまち仕入れソースがなくなって早々に倒産してしまうという結果になってしまいます。こうした場合には、徐々に誰にも分からない間にその得意先と手を切って、誰かと納材の位置を交替することが、賢明なやり方だということになります。得意先を自分のところ一軒だけにしておいてはいけないというのは、このような場合に抜き差しならなくなるからです。

 得意先を独占しないで、あぶないなと思った時に、競争相手にわざと材を入れさせていって、自分のところは分からないように手を引いて行って成功した例は、少なからずあります。肩替りをしてもらった競争相手の材木店には気の毒ですけれど、競争場裡に在ることですから、止むを得ないことです。A木材店が材を納めているお得意さんだから大丈夫だろうと競争相手のB材木店は安心して材を売りつづけている間に、こちらは肩を抜いて行かねばならないわけですから、いつでも抜けられるようにしておく必要があるのです。通常の考え方では、お得意さんを何も他人に渡たすことはないではないかということになりましょうが、現実の取引ではそういう配慮が必要であるということです。

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