木材価格の推移をどう見るか、一枚のグラフを具体的に見ながら考えてみましょう。
次ページのグラフには、昭和四九年の四月から五九年の十月までの木材価格の推移が示されています。このグラフをご覧になるとお気付きのように、この間に何回かの暴騰・暴落が繰り返されていますけれども、一番面白いのは、合板、とくにコンパネが価格の指標になっていることです。一ヵ月あるいは一ヵ月半ほど先に合板が値上がりし、そのあと一ヵ月で米栂の価格が上がり、その次に一五日くらい遅れて国産材の杉、桧の価格が上昇するというパターンが示されています。材価が下落するときも、先ず合板の値が下がって、米栂の価格ダウンがそれにつづき、さらに杉、桧の価格が遅れて下がってくるというパターンです。
木材の使われる順番から言うならば、柱が先ず値上がりし、それから三ヵ月くらいたってから合板の値が上昇するというのでなければならないわけですけれども、なぜそうなっていないのでしょうか。合板メーカーの方が米栂の製材をする人よりも数が少ないこと、合板メーカーの方が相場感において敏感であるということ、さらに杉や桧の場合には小売屋さんに相当のストックがなされているけれど、合板の場合にはメーカーが合板をストックをする場所をあまり持っていないこと――木材市場のような市場が合板関係にないこと、そういったことが合板価格の上昇、下降をはげしくしている原因であろうと、私は見ております。このために、合板の先物取引が必要なのではないか、合板の先物取引は合板のヘッヂングのためだけではなく、このグラフが示すところから言えば、米栂のヘッヂングにも、杉、桧のヘッヂングにもなるのではないかということが、このグラフを作り出してから私には分かってきたのです。
第二に注目されることは、昭和五六年以降、上がる時期や下がる時期はもちろん一緒ではあるけれど、樹種によって、上がり方あるいは価格の位置する場所が大きく変わってきていることです。桧の価格をみると、昭和四九年以来最低のところへ下がってきています。しかし、米栂や合板はそれほどの下がり方をしていません。 桧の柱よりも杉の小幅板の価格の位置が安定しているのは、一戸建ての住宅着工数よりも増改築需要が増えていることが原因ではないかと見ております。