その点、一般大衆の木に対する回帰というか、木に対する嗜好は大変なものがありますから(その実態については、第一〇章で詳述する)、その流れを的確にとらえることが、木材需要の拡大、新製品開発のポイントになるでしょう。エクステリア分野においても、そのことは明らかになっています。
私たちが小・中学校の頃、全国のどこの学校にも置かれていたロクボク、シーソー、鉄棒、ブランコ、これらはすべて木材でした。現在はというと、アスレチックはすべて木材とロープで組み立てられていますが、木質の学校遊具は、皆無です。また、過去において、どこの家も塀、門扉はオール木製でした。現在は、コンクリートブロックおよび鉄、アルミの簡易フェンスに取り替えられています。しかし、住んでいる方々は、それらに満足しているわけではありません。地震が起きるたびにブロック塀が事故を起こしているので、ブロックを取り除いて木の塀もしくは生け垣の緑化木に替える時、コンクリートブロックの取り壊し費用を県または市で負担する所が増えてきています。
現実に、四~五年前は私の会社の営業の連中が、市とか府の公園課へ行って、「木を使ってくれませんか」と話をしていると、「そんなもん何いうているのや、木なんて腐りやすいし、あとのメンテナンスが大変やし、あかん」と鎧袖一触、一遍にけられたという状態でした。そこで私は、「営業の説得力が足らん。公園というものはどういう所かと、まず考えてもらえ。心なごみ、精神状態を安定させようと皆が訪ねてくるところやないか。そういう所にコンクリートの椅子や遊具、鉄の柵なんかしとったら、折角、幽玄の世界に入っとったのが一遍に現実の世界に引き戻されるわけで、公園の効果を半減させてしまうやないか。そういう所にはやっぱり自然のもの、緑に合った木のものが置かれてこそはじめて公園の効果があると、説得をせんかいな」と言って、営業の連中に怒っていたりしたわけですが、それが、われわれの力だけのせいではなくて、全般の動きとして変わってきているのです。ここ二年位前から、営業の連中が行くと、「なんで早く来てくれなんだ。木を使おうと思っているのにどうしてそれを使ったらいいのか分からんと迷っているところや。ええところへ来た」というように、いままでとは逆に、「もっと早くきてくれたらよかったのに」と、変わってきているわけです。これは大きな変わりようです。ヨーロッパへ旅行された方は、向こうの柵がほとんど木であることを改めて認識なさると思います。歩道橋なども木造にしています。
エクステリア分野こそ、アルミや鉄を食う番だと言ってきたのですが、これからが私たちの仕事の本番になってきたと思います。化学製品が増加すればするほど、コンピュータ化してストレスがたまればたまるほど、木への好みは増え続ける。それを私たちはいまとらえなければ、機会は通り過ぎていってしまうでしょう。 同時に、アルミや鉄を食おうとする以上、木材業者としてはとかく関心外になり勝ちな、防腐・防虫などについての目くばりも絶えずしておかなければならないということになります。