こうした住宅建築の変化は、建て主の変更によって生じた、それへ土地税制の変化が追い打ちをかけた、ということになります。そこで、これから国産材時代を迎えるということを考えますと、現在の建売住宅建築あるいは大手デベロッパーの住宅建築が、税制が変わらない以上続いてゆくということならば、内地材の供給は従来方式ではいけないのであって、米材の流通と同じような方式にならなければいけない、でないと大量長期契約下の流通には乗れないのではないかと思います。
しかし、これがまた税制が変わって、土地は土地だけで儲けてもよろしいということになると、大手デベロッパーさんも必ずしも住宅を建築したいと思っているわけではないので、土地だけを買ってくれる人がいれば、「喜んで土地だけでお売りしまう」ということになりますから、そうなるとまた住宅建築の流れは注文住宅へと変わってきます。注文住宅となると、建て主が「わしは一〇・五cmの桧の柱で建てる」とか「四寸角の柱の、百年はもつ家を建てる」というふうに変わっても一向に差しつかえないわけですから、そうなると、別に大量流通でなくとも、一軒ごとに異なった材を納めることができることになり、今度は外材向きの流通ということではなくて、国産材向きの流通ということになるのではないでしょうか。
だから、われわれの木材の扱い方も、一つの税制によって大きく変化をしてくる。昭和六〇年度の政府予算編成の過程においても、窮迫している国家財産の中で住宅金融公庫の金利助成が重荷になっていることから、これをどうするかが大きな問題になっていますけれども、今後は住宅金融公庫の貸付金利はだんだん高くなり、公庫住宅の建設戸数も徐々に減ってくるのは自然の成りゆきではないかと予想されます。そうなると、今までは住宅金融公庫の公庫融資受付けが年に四回なされているので、その時期の申込み状態を見ながら、その時期から二~三ヵ月たつと建築材料の需要が多くなるという一つの指標にしていたのが崩れてくるということになります。公庫住宅の建築が少なくなることによって木材需要が減るということは一時期、過渡的にあるとしても、住宅の絶対量が不足してくるならば、住宅金融公庫の融資を受けなくとも別の方策を考えて住宅を建てるということになりましょうから、住宅建築の進め方の対応が何年かの間に変わってきて、建築用木材の量にストレートに影響してくるというものではないでしょうけれども、木材の使われ方や年間の需要時期というものは大いに変わってくることが予想されます。 住宅金融公庫の場合は、公庫住宅の仕様書というものがありますから、仕様書にのっている木材でなければ公庫住宅には使用できないということがあります。だが、住宅金融公庫の融資による建築がだんだん減ってくるということになると、公庫の仕様書に関係なく木材が使われるようになり、木材利用の面でも様々な変化が出てくることになりましょう。そこでよほどしっかりしないと、「JAS製品でなくてもいい」悪かろう安かろうという木材製品が横行してくるということにもなりかねません。