最後に、行政の変化、金融の変化にも目を向けてその情報をキャッチしておこうということを申し上げておきたい。 木材業者とくに流通業者には、「お役所の言うことなど、わしらと関係ない」という風潮が古くからありました。これには理由があって、「生産面の林業と製造面の工業までは面倒みる。だけど商業は面倒みきれん。お前らは自分のことばかりしか考えとらへんから」と言うような封建的なところが、過去の農林水産省にはあったからでもあります。
しかし、それはもう昔話になってきています。例えば、木材流通に関しては、いままで林野庁の林産課の中に流通班という一班があったのみでしたが、昭和五九年度からこれが木材流通対策室として組織的な面でも充実されてきております。これは、「これからは流通に力を入れて行こう。山にいくら木があっても流通をチャントせんかったらあかん」というように、行政の目標・方向というものが変わってきたことの一つのあらわれです。したがって、補助金も川上にだけ集中するのではなく、川下にも出してゆこうということになっています。
現に、昭和六〇年度の林野庁関係予算では、木材の流通対策が、林業主産地の形成対策や担い手対策とならんで、「住宅部材供給ルートの合理化を図り、需要者ニーズに即応した安定供給に努めるとともに、木材の需要構造の変化に対応しつつ、現行の木材流通体系整備を総合的に展開してゆくことが必要である」と木材流通新体系整備促進事業が重点施策の一つに取り上げられ、新規に進められようとしています。 だから、役所の変化、行政の変化に木材流通業者も敏感に対応してゆく必要があります。これも情報管理の一つに入れておかねばならない、と言うことになります。
次ページに、林野庁の組織図=どういう部課があり、そこでどういう仕事がなされているかの図を、木材流通に直接関連するところはとくにゴチックにして、掲げておきました。
金融機関の変化ということに関して、端的なことから言いますと、金利が自由化されるとなると、木材業者の中からもスイスフランで金利の安いお金を買い付けてくるというような人もでてくるわけです。そういうなかで、木材協同組合の協同金融もいままでの形でいいのかな、中小の金融機関だけを相手にしていていいのかな、と言う問題も生じます。これからは、野村証券とも取引をしなくてはならないのではないか、ということになってきています。
ですから、金融機関の変化にわれわれ木材業界は関係ないんだ、ということではなくて、その変化を見て考えることが、情報管理の中で大事なことだと考えてゆかなければなりません。
この章では、商流のポイントとなる与信管理と情報管理について述べてきましたが、繰り返して言いますと、これら商流の一つが欠けても、その会社は倒産するわけですから、これら商流全般をグローバルに考える機関、考えるスタッフがなければ流通業は成り立たないということになります。ですから、木材小売業をやろうという時に、物流だけでなく商流もあわせて考える能力のあるスタッフ、能力のある責任者、能力のある社長をそこにすえなければ成功しない、と言うことになります。
もち論、スタッフを揃え在庫をし、事務所を持つということは費用もかかるわけです。なおかつその上に危険もともなうわけですから、十分腹をすえて取組む必要があります。