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木材流通

第2章商流のポイントー与信管理と情報管理

敵を知らずしては戦えない

次に、情報管理に関して。すでに第一章において、先行資料の把握が重要であることを述べ、景気・価格の先行資料把握の中には、建築構造様式の変化、木材輸入の変化、国産材の変化等々から行政及び土地税制の変化、金融機関の変化など、数え切れないほどのチェックポイントがあると書きました。そのうち、建築の変化については第五章で、外材及び国産材の供給については第四章で、というように、以下の各章で基本となる情報のつかみ方・考え方のポイントを示しますので、ここでは、自分の商売とは当分の間は直接関係ないと思われるような情報についても、私たちは常にキャッチしておく前向きの姿勢が必要であることを述べることにしましょう。

 いま、国産材生産の中心的な担い手であると目されている森林組合の事務所の黒板に、為替の変動を毎日掲示している組合が、どれくらいあるでしょうか。というのは一例に過ぎませんけれども、現在のように外材の供給量が国内木材需要量の過半を制し、その価格がわが国の木材価格を主導しているときに、外材の価格変動の主要な因子である為替の変化を毎日見るクセを、国産材関係の人もつけることが必要でしょう。商社の人たちや外材問屋の人たちが為替の変動をしょっちゅう見ているのは当然ですけれども、国産材関係の人も、これから外材と競争してゆこうということになると、毎日、黒板に為替の値段くらい書くようにしてゆかなければならないのではないでしょうか。

 逆に、国産材の中で生じている変化というものを、外材を扱う人たちはしょっちゅうチェックしておくことが必要でありましょう。

 国産材の動きは変わらない、というように表面上は見えるかも知れませんが、毎年、というよりも半年位のテンポで、激しく変わって行っている。例えば、全国間伐小径木需要開発協議会で昭和五八年から始めた間伐小径木需要開発シンポジュウムを見ても、第一回の時と第二回の時では、一年の間に、そこに参加する人たちの意識が全く変わっています。第一回目のシンポジュウムの時には、間伐材の需要開発は目下の重要課題である、したがって、県の行政担当者や森林組合の人たちに、間伐材の需要開発に本腰で取り組んでもらうために精神革命を一度やる必要がある、という気持ちで一杯でした。間伐、間伐と、皆はやしたてている割には、それほど重要視していない人が多いのではないか、半分くらいの人は真剣に考えているかも知れないけれど、あとの半分の人たちは真剣に考えていないのと違うだろうか、一般の木材業者の人たちも国産材時代なんていうのはずっと先のことだと思っているのと違うだろうか――、という思いを抱きながら、林野庁の方に間伐対策の話をしてもらい、高知県と需要地の大阪とから間伐小径木の需要開発の実態を話してももらったわけです。五九年に第二回目のシンポジュウムを開催する時点では、地方自治体の方も「間伐材の需要開発というのは目下の重要課題だ」ということがほんとに分かってきた。森林組合も「何かアクションを起こさなければ」と意識が変わってきた。木材業者の方からも「国産材がボツボツ出てくるようになったんだな、我々も関心を示さなければならないな」というような意識が出てきた。つまり、間伐材をめぐる意識がガラリと変わってきたわけです。そこで、第二回のシンポジュウムでは、「投げ出してしまっている鋸物を金にかえ、それによって全般の利益を上げること」を皆に考えてもらうことが重要だろうと、鋸物のバイオマス的利用としておがこ堆肥、木炭粉、家畜の粗飼料という話を北海道からしていただき、物理的利用として幅はぎ板の話を九州からしていただくという段階になったのです。では、昭和六〇年の第三回には、何をテーマとしてどのようなかたちで間伐小径木の需要開発シンポジュウムを開くのか、もっと建築業者によびかけるとか、建設省の方にも話をしてもらうとか、国産の良材の流通に関して取り上げるとか、いろいろ考えてはいますけれども、おそらくギリギリまでこないと、その時期での適切なテーマ等が決められない。そういうような激しい動きをしているのです。

 こうした国産材の中の動きを、国産材の人たちが見ておくだけではなく、外国産材を扱っている人たちも見ておかないと、今後への正しい判断はできないということになります。敵を知らなければ戦争にならないわけで、――敵といっては悪いけれども――、国産材の人は外材のことを知らなければならず、外材の人は国産材のことを知らなければならない。競争する相手がいまどういう状況になっており、どういう変化をしつつあるのかの情報を的確につかむ、それが商流の中での情報管理の重要なひとつであろうと思います。

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