与信管理については、第一章において、私自身の失敗例、そこから学んだ教訓を述べました。では、健全な商行為を維持・発展させるために、貸倒れや不良債権をいかにして防止するか、そのチェック・ポイントはなにでしょうか。
ご承知のとおり、木材業界の現在では商取引の一〇〇%が、信用取引で支えられています。現金取引であれば、貸倒れの問題などは生じないのですが、信用取引が企業発展の原動力としての機能を果たしている以上、信用取引が行われることは止むを得ないことです。私たちとしては、むしろ信用取引のマイナス面をなくする努力をすることによって、信用不安を取り除くことが肝要になってきました。信用取引のマイナス面としては、①自己資金が少ないので力以上のことをすることになる、②回収の手間がかかる(経費が掛かる)、③焦げつき(貸倒れ)が出る――の三点があげられますが、この三つのマイナス面をなくすために、①の対策としては財務管理の充実、②の対策としては事務管理の効率化、③の対策としては得意先管理の強化が上げられます。ここでは直接問題となる、③の得意先管理=与信管理を取り上げましょう。
現在は「選ばれる時代」であり「挑戦の時代」ですから、販売担当者(部門)は、木材取引を開始しようとする時に、まず自分で取引先に関する調査表を作製する必要があります。調査の要点は、取引先の①財産状態――資本力、資産・負債の内容、所有不動産、特に貯木場、倉庫の状態、支払い能力、②収益状態――販売力、損益の内容、経営の規模、立地条件、社長関連、後継者問題等々となります。相手の財産状態と収益状態とを調べるのですから、この場合は三年間ぐらいの経過を分析する必要があります。自分のところで調査する能力が低いところでは、興信所に依頼するとか、顧問コンサルタントを置いて調査してもらいましょう。
不良取引先と考えられるのは、次のようなところです。先ず初歩的な所で――。
①手形発行銀行を先ず見る。都市銀行、地方銀行、相互銀行、信用金庫等の順位で金利が高いのが常識でしょう。
②自分の力以上に家や事務所を建てたり、娘の結婚をさせたり 即ち、資本と設備の不調和なところ。
③仕入条件と販売条件とが極端に不一致なところ。
④従業員の待遇の悪いところ。
⑤経営責任者の性格や才能がよくないところ。
⑥後継者がいないところ。
⑦会計制度がしっかりしていないところ。集金に行って始めてそこ で手形を書いて貰うのを待つようでは駄目。そんな会社ほど資金 繰りもできていません。
⑧在庫管理ができていないところ。
⑨整理整頓のできていないところ。
⑩その他貸借対照表、損益計算上のチェックポイントで普通会社
以下のところ。