価格管理の問題は、情報管理と強い関連があります。例えば、外材の場合には、運賃の価格に占める割合が二〇%~三〇%くらいあるわけです。南洋材の場合には、現在は値が上がったので一五%くらいの割合ですが、値段が安い時には価格の五〇%くらいを運賃が占めるということもあったわけですから、CIFの価格を決めるのに、FOBの価格だけを見ていては具合が悪いということになります。船運賃は、戦争が始まるか、ソ連の穀物が不足かどうかによって大きく変わる。例えばスエズ運河が閉鎖されたとなると、日本や東南アジアからヨーロッパへ行く船は全部アフリカ南端希望峰を廻って行かなければならなくなり、地中海を通れば一週間で行くのが二七、八日間かかる。すると二〇日分はまるまる船荷は船上に乗っていなければならないので、船舶はひっ迫してくる。木材価格よりも船舶の方がもっと値動きが激しくて、一割船腹が足りなくなると物凄く値上がりをする反面、一割でも船腹があまるとなると、極端な話、荷を積んだだけ得だから、安い値段ででもその分を積もうとする。また、気象条件が悪くてソ連で穀物が足りなくなると、カナダからでも、オーストラリアからでも、さらにはアルゼンチンからでも穀物を運んでこなくてはならないということになり、船運賃は一遍に暴騰するわけです。だから、そういうことも価格形成の中で考えなければなりません。
いままでであれば普通、大阪ならば夏の甲子園の高校野球がすむまでは、木材価格はあまり上がりませんでした。なぜかと言うと、盆休みがあることと、新年度の仕事は四月から始まってはいるけれど、それは本庁の予算が決まっただけであって、その予算が府県へ行き、府県の中で各部局に予算が分かれて見積りが出てくるのは七月の終わりになり、それが建築屋の中で事務所と現場とに分かれて材木の発注として出てくるのが、やっぱり夏の甲子園高校野球大会が終わる頃になるというわけだからです。そして、八月から九月、十月、十一月と値段が上がって、十二月は金も要るから一寸一服して、また二月~三月と年度末で仕事が出るものだから一寸値上がりをして、四月、五月、六月と値下がりをし、再び八月から上がってゆくというのが、日本の木材価格の通常なパターンであったのです。 それが外材が多くなるにつれて――これは外材の悪い面の一つだと思うのですが――、需要に関係なく供給サイドで値段が変わるようになった。供給サイドで値段が変わるということは、日本に米材の在庫がどれだけあるのかによって、また、アメリカに日本向けの在庫がどれだけあるのかによって、木材価格が上下するということです。だから、需要を見るよりも、アメリカから木材を積んだ船が日本へ向けてどれだけ走っているか、日本の港に米材が何カ月分在るのかを見ていないと、価格をはっきり見通せないということになります。 しかし、供給サイドの産地価格の上下によって、日本の需要にかかわりなく価格が上下するということは、非常に悪い影響を我が国の木材業界に与えています。と言うのは、需要によって値段が上がったり下がったりするというのは、日本全般の景気によって材価も上がったり下がったりするということですから、材価が上がっても下がっても、それによるヒズミがあまり木材業界にこないわけです。だが、日本国内の木材需要が下がっているのに、南洋材の供給が南方産地の天候の関係で半分になってしまったために三割方も値上がりするということになる。供給側が値上がりしても、一方で内地は不況なのだから供給側の値上がりにつれて値上がりをすることはないということになって、内地の木材業界だけでその値上がりのシワを背負わなければならなくなります。産地価格の上下と需要価格の上下が連動しないところに問題があるわけです。これが、外材が大量に入り主導権を占めるようになってから、日本の木材業界が儲からなくなってきた大きな原因ではないでしょうか。この外材の罪の方は、いままで多くの人が言っていないけれど、為政者の考えねばならないところでしょう。価格管理に関しては、こういったことも考えられます。