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木材流通

第1章流通には、物流と商流がある

営業受注管理の場合

営業受注管理について考える場合には、売り先の得意先はえてして「値上がりするぞ」と見たら急いで買付けをしようとすることを、念頭に置いておかねばなりません。米材の場合ならば、十一月頃から二月頃までは北米は雪が降って出材がしにくいとか、南洋材の場合だと、一月から二月には雨が降って出材しにくいとか、内地材の場合ならば、梅雨の六月頃になると雨が降って出材がしにくい、松は鉄砲虫が入るから伐採をしないとか、あるいは台風になると道が崩れて出材がむつかしくなる、また北の方では大雪の時には伐採ができにくいとか(雪がなければ出材できない所もありますが)、気象条件によって出材ができたりできなかったりすることがあり、それによって買付けをする方も賢くなっていますから、値上がりしそうだと思ったら急いで買付けをする、材が足りなくなるぞと見たら先に買っておこうとするので、受注する場合には、自分の店の在庫はいま大丈夫なのか、あるいは在庫が足りないのだけれど、買おうとする時に実際に買うことが容易なのかといったことを、きちんと見定めておく必要があります。

 例えば、足場丸太を受注する時に、十一月か十二月に「必ずきれいに皮をむいてくれよ」と先方から言われて、受注してしまったら、鎌で丸太の皮をむくときに、きれいに皮がむけないわけです。すると、それは受注違反になり、逆にペナルティをとられたりするわけですやはり、皮をむくようなものは、春の彼岸を過ぎないと駄目で、春の彼岸から秋の彼岸の間ならば丸太の皮はむきやすいということも、分かっていなければいけないわけです。

 また、最近の建て売り屋さんであれば、「三ヵ月は値段を動かしませんよ」とか、「六ヵ月分を受注してくれ」とかいう話になりますし、鉄筋マンションの材料ですと、受注して納品が完了するまでに六ヵ月くらいは十分にかかるわけですから、受注する時に、この先値が上がると見たら、自分で在庫をしておかなければならない。製品で在庫すると狂うということであれば、原木ででも買っておいてそれによってヘッヂングをしなければならない。そこで、もし商品先物取引に合板があれば、製品のかわりに原木を買っておくというようなヘッヂングをする必要がないわけですけれど、いまは残念ながらアメリカにはあるが日本には合板及び木材の先物取引所がないので、米栂の値が先行き上がることは分かっているけれど、五ヵ月分の在庫は製品の倉庫がないからできないとなれば、「二ヵ月分だけは製品でストックしておこう。あとの三ヵ月分は原木で買っておこう。そうすると、値上がりした時に原木を製材所に売ったら、それだけ原木で利益がでる。製品は自分が受注した時よりも買う値が高いけれども、それによって相殺できる。」というようなヘッヂングを考えておくことも、営業が受注したり、産地に発注する時の管理において、重要になるわけです。

 受注、発注管理については、私が紀州御坊から「産地直売卸商」と銘打って昭和二二年に大阪へ出てきた時、当時市売の神様と言われた久我俊一氏から、「大阪ではある地域の特定の材を扱っていては駄目だ。どこがいま一番安くて、良い材が沢山あるか。刻々に変化している状態をいつも的確につかんでおきなさい」と教えられましたが、私はいつもその言葉を正しい言葉として忘れないでいます。したがって、いま、柱、土台などそれぞれ何が一番良くて、安いのか、産地、店別、樹種別を頭に置いて、それを得意先にすすめる必要があります。

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