木材流通

第1章流通には、物流と商流がある

物流とはなにか

流通には物流と商流とがあると言いましたが、では物流とはなにかと言うと、山で伐採した木を玉切りして中間土場まで持ってゆき、中間土場から原木市場へ持ってゆく、そこで配列をして、売った原木を製材所へ持ってゆく、製材所で製材したものは製品市場へ行くとか、あるいは問屋さんのところへ行くとか、あるいは建築業者の現場に行くとか、あるいはプレハブメーカーのところへ行くとか、製品市場や問屋さんから売られた製品が小売屋さんのところへ行くとか、あるいは納材屋さんの方から建築現場へ行くとか、あるいは日曜大工店の方へ行って一般家庭に行くとか――そういう物の流れ(木材現物の流れ)が、物流であるわけです。

 この物流では、一回トラックに乗せるよりも、二回トラックに乗せる方が高くつく。右に置いている木材を左に置くというように、置きかえるだけでも費用が増加して行く。だから、物流の合理化は、なるべく動かす回数は少なくする、また直接最短距離を持って行く、さらには運賃を安くするために帰りの荷物として他の木材業界以外の荷物も一緒に持って帰ったりする、というように、その流れを短くする方がよいわけです。

 特に間伐材のように価格の安いものは、なるべく物流のコストを低く抑えなければ、採算に乗らなくなります。間伐材をいちいち市場に持っていって配列をしていては、せいぜい七%程度の手数料では共販所の経営はやってゆけないし、そうかといって手数料を上げれば、今度は山元側の採算がとれないでしょう。経済原則的には、物流は、その過程をなるべく短絡する方が得であるということになります。

 そこで、この物流の面だけを見て、それだけが流通だと錯覚すると、山林業者が山から木を運び出して直接一般大衆に売れば儲かるではないか、価格的に見ても、一般大衆が手にする木材の値段は山元の木材の値段の二倍もしているではないか、ということになります。短絡すればよいのだから、山林家が製材所を経営し、製材所は小売をやれば儲かるではないか、ということになります。と言うことは、山林家の一番大きい林野庁(国有林)が、直接一般大衆に木材を売ったらいいではないか、というような発想がそこで出てくるわけです。この発想の大きな間違いは、流通には、そうした物流とともに商流がくっ付いていることに気が付いていないところにあります。この間違いに気が付かないところに、大きな落とし穴があって、大きな損をする原因があります。

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