学名 Thuja plicata
英名Western Red Cedar(ウエスタン・レッド・シーダー)
米杉(ベイスギ) 別名 アメリカネズコ、レッド・シーダー
北米大陸のアラスカからカリフォルニア州北西部に分布。樹高は50m以上に達し、直径は1-1.25mに及ぶ。日本ではベイスギと呼ばれているが、米国産のスギではない。日本のネズコと同類で、日本名をつけるとすれば北米ネズコとなろう。
ベイスギは、明治17年に当時高価だった秋田杉の代替材として、米国から日本に最初に商業輸入された木で、値段が安いことで普及した。この木の色が杉に似ているということで、ベイスギの名前が定着したのだ。
学名のプリカタは「編み上げたようにたたまれている」の意で葉っぱの整列をさしている。
この木はカナダ、BC州のシンボルツリーで、原住民の心柱と言われ、精神的な意味がある。トーテムポールに用いられるほか、くりぬいてカヌーに使われたり、家財、箱、衣類や矢の軸、お面などの道具にも多用されていた。枝は、水につけ、ねじってロープとして利用された。繊維の多い樹皮の内側はおろされて屋根葺き、ゆりかごの敷物、タオル、毛布、クローク(外套)、スカート、ドレスなどに使用されていた。
薬用としても使われ、肺が痛いときにつぼみを噛み、飲み込んだという。また歯痛の薬としてつぼみを噛んだり、つぼみを湯がきうがい薬にもした。宗教的な利用としては、葉と枝は儀式前に体を清めるのに使い、占い、霊払いなどでは欠かせない存在だった。
木材は心材と辺材の色の違い、個体差の違いなどがあり、色が均一でないことが欠点とされる場合もある。また、年輪は緻密なものが多い。気乾比重は約0.38で一般の針葉樹材の中で最も軽い。乾燥は早く、乾燥後の寸法安定性はピカ一。針葉樹材の中で最も耐久性が高いが、構造的材としては向き不向きがあり、賛否両論がある。 また、ベイスギの香りは杉とは違う芳香で神経を和らげる作用がある。
現在の北米ではログハウスのログ丸太、外壁材やエクステリア、造作建具、屋根板でよく使われている。日本では造作建具、集成材、天井板に用いられる。最近はウッドデッキに利用される木として有名になってきたが、間違った利用も多い。住宅の外壁にペンキを塗る場合にベイスギを利用するのは、耐久性があり、狂いにくいからだ。でも、節のある木材は使わないのが鉄則なのに、ある米国帰りの施主は、大手住宅メーカーにペンキ塗りの住宅を建築依頼した。価格を値切ったのか、ベイスギは無地材ではなく節ありを使ったものだからたまらない、1年もしないうちに、節のあるところからペンキが落ちてくる。何度ペンキを塗りなおしても同じであった。
このほか、耐久性が高いことから、シロアリに強いという解説もあるが、弱くもないが、けっして強いわけでもない、普通である。また木材を壁など縦に利用した場合は耐久性が高く、デッキの床板などに利用する場合は水はけをよくしないと、予想より早く腐る場合がある。
とはいっても、ウッドデッキ用の木材にはこの木が一番多く利用されている。それは、価格、性能、木の優しさ、産地の環境問題など総合的に考えて最適の木だからだろう。
製材工場に集められたレッドシダーの原木(カナダ) レッドシダー利用のウッドデッキ(日本) クリックで拡大します
この木は色の濃淡が激しい。それを活かしたインテリアも多くなった。 左は辺材。 クリックで拡大します