美しく質実剛健の木
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マツ科カラマツ属 学名:Larix leptolepis(Sieb.etZucc.)Gordon
英名Japanese larch
短枝上に集まった葉の状態が絵画に描かれている唐松に似ているということでこの名前となった。
イチョウは別として日本の針葉樹の中で 唯一落葉する木であることから「ラクヨウショウ」、「落葉松」とも呼ばれている。
春の新緑、秋の黄葉、晩秋の松葉の雨と他の針葉樹とは違った美しさがあり、信州の風物の代表となることが多い。また詩や歌によく登場する樹で、その森や林から受ける軟らかい感じとは裏腹に、木材はどちらかと言えば、重硬で荒々しい感じで扱いにくい部類に属している。
同種のものはアジアや北米の北部の地域に広く生育し、またヨーロッパ中央部にもまばらに分布している。ヨーロッパおよび日本のカラマツは両者とも、その天然分布は限られているが、それらの雑種とともに広く植栽されている。アメリカ産のカラマツはタマラックの名で知られる。
日本産は本州中部で海抜高800~2800mの日当りのよい乾燥した地域に分布。北海道、東北地方、本州中部の寒冷地帯の重要な造林樹種で造林面積が増加してきた。
フジマツ・ニッコウマツとも呼ばれるれるように富士山や日光、浅間山、八ヶ岳などの天然林がよく知られている。
樹形は円錐形で樹高:20~40m、直径は60~80cm。大きいものは樹高50m。直径2mに達するものもある。樹皮は灰褐色で裂け目ができ、長い鱗状の片となってはげる。
樹幹は通直。枝が水平に張りだし、葉は柔らかな針状、枝・葉がよく茂り萌芽の折に、ほかの針葉樹と違って鮮やかな新緑。4月頃に黄色い花を開くが、雌花と雄花では色が異なる。球果は、直径3cm 位の球形で、秋に黄褐色~黄金色に熟し落葉する。植林されたカラマツがいっせいに黄葉し、陽を浴びて金色に輝く光景は息をのむばかり。
葉や枝にかすかに芳香があり、幹材も樹脂があって匂いが強く感じられる。香気成分はα-ピネン、β-ピネン、ボルニルアセテートなど。
スギ、ヒノキのように、全国的に知られているものとは違い、現在でもどちらかといえば、産地周辺の地域で利用される。
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エビマツ、トドマツと比較して、半分の年月で伐採ができるようになるので、貴重な造林樹である。
心材の色は褐色だが、若い間は比較的淡色で、大木になると濃色になる。辺材は淡黄白色で両材の区別は明瞭。木理は粗く通直でないことが多い。木材はやや堅く樹脂分が多く、小さい多数の死節が比較的多く、やにつぼ・ねじれなどもある。
春から夏へかけて形づくられる細胞の形の違いが大きいため、年輪がはっきりとわかり、したがって肌目は粗い。
樹脂道があり、「やに」が材面に滲み出る。目に見えるところに使われる用途には好まれない大きな理由のひとつである。気乾比重は0.40~0.50(平均値)~0.60で、針葉樹材の中では重い木材で、レッドウッド(オウシュウ・アカマツ)よりも重く、どちらかといえば、加工や利用時に取扱いにくい木材といえる。また、造林木からの木材は乾燥の際、割れや狂いが出易く、利用する上での大きな問題となっていた。そのため多くの研究機関がその解決に苦労、努力してきた。長野県林業試験場を中心に官民挙げて脱脂・人工乾燥技術の開発に取り組んだ結果ようやく実用化にこぎ着け、長野県の公共施設をはじめ長野オリンピック競技場の躯体や内装材にも使われた。
老齢(成長が遅くなった大木)になったカラマツは“天カラ”と呼ばれ、造林した若い木と対照的に大変木目が美しく、超高級材として、数寄屋普請などに使われる。主に柾目で用い、冬目と夏目のコントラストは年を経て日に焼けるといっそう大きく鮮やかになり、絹状の光沢は手入れを重ねるとさらに味わいを増す。これらは東日本では赤松とも呼ばれる。
心材の保存性は中庸だが、水中での耐久性が高いので、杭丸太として多く利用されてきた。
乾燥はかなり早いが、やや狂いの出る傾向がある。乾燥すれば、利用の際は安定している。節の存在が多少問題になるが、加工は容易で、仕上がりもよい。
用途は樹脂が多く湿気に強く、やや耐久性があるため、屋外での用途に適している。ボートの厚板、とくに漁船用に伝統的に用いられ、また農場用材としても優れている。製材および丸太の形で用いられるが、若木は完全な保存処理が必要である。電柱・杭木、鉄道の枕木・ 建築用構造材、杭、橋梁、土木用タンネージ、パレット、家具、床柱、建具材、器具材、パルプ用材、集成材の芯など。
内装で利用するには桧・杉が和風のイメージを持つのに対して、これらは洋風・ログハウス風の荒々しい仕上感となる。
樹脂からテレビン油を採ることができて、樹皮はタンニンを含んでおり染料として使われているが、工業化はされていない。