海外産としては日本で最もなじみがある木
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マツ科トガサワラ属 学名 Pseudotsuga menziesii
英名 Douglas-fir(ダグラス・ファー)、オレゴンパインともいう。
日本では通称として米松(べいまつ)、米マツと呼ばれる。一般にピーラーと呼ばれるのは米マツの中で目の細かいものを言うが、米マツを指す場合もある。
北米のカナダ、米国の西部で海抜600-2600mの間に分布するが約4割はオレゴン州に集中する。英国、オーストラリア、ニュージーランドのダグラスファーは米国・カナダから移植したものである。樹高は稀に100mにもなり、直径も4 mを超えるものがある。
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米松の名称は日本、米国とも謎に満ちている。
日本では米国の松と思っている人が多い。ダグラスファーの名を知っている人は米国の樅という。どちらも間違いである。
米松は日本にはない樹種で、近いものはトガサワラである。おそらく日本の松に似ていたのでつけたのだろうが、本来ならアメリカトガサワラと呼ぶべきだろう。
英名のダグラスは1826年その木を発見したスコットランドの植物学者D.ダグラスの名前からとったものだが、米国でもいまだになぜファーがつけられたのかわからない。
学名はPseudotsuga menziesiiで前者は「偽のヘムロック」の意で、後者は1791年にバンクバー探検隊と共に木を発見し、植林を手がけたメンジイエ氏からとっている。ヘムロックとは日本にも大量に輸入されている米ツガのことで、板になるとその違いは一目瞭然だが、丸太では米マツと米トガの区別がつかない。
左 材面板目 右 柾目 クリックで拡大します
米材専門の商社へ入社すると、先輩から真っ先に教えられるのは米松と米ツガ丸太の区別の方法である。丸太の皮をナイフで削ると皮の断面は米マツは黄色の縞模様が出るが、米栂では赤紫色のものが出る。
北米の土着民族は土に掘った釜戸に、燃料として米松の枝を使っていた。他に魚釣りの針、リュウマチの治療、性病の薬、風邪薬、腹痛や頭痛などのために皮や葉を利用していた。樹脂は水がめの水漏れ防止用として使っていた。ニューメキシコの発掘現場からはこの木の祈り棒(プレイヤー・スチック)が出土した。
針葉樹材としては中庸の重さで、通直で多少脂っぽいが、乾燥は早く良好である。手、機械加工とも容易といえる。
針葉樹林を背景に走るカナダ太平洋鉄道の機関車を描いている。?鉄橋ではなく木橋である、ダグラスファーが用いられている。
18世紀に欧州に輸出されて以来、硬さ、耐久性が珍重され大きい木材がとれるため波止場の陸橋、橋の部材、商業用建物などの建設材として使用された。
日本には1853年にアメリカのペリー提督が数本の米松の角材を幕府に商業見本として献上したのが最初とされている。関東大震災後本格的に輸入が開始され年々拡大してきた。
近代では電話用の電柱や枕木、杭丸太として使われてきた。現在でも埠頭、港湾の工事に用いられ、集成材、フローリング、船、住宅用構造材、ウッドデッキなど、さまざまな用途に使われている。
また、構造用合板としては世界的に有名で、ツーバイフォー住宅の合板は、米松合板が利用されていると思って間違いない。
日本での用途はやはり住宅用であろう。都会の住宅の梁や桁はほとんどがこの米松を利用している。強度があり、長尺が取れるからである。
柾目が美しいので、内外部とも化粧的にも利用されている。ただヤニが出てくるので、現場では随分苦労したものだ。最近ではヤニとりの技術が進んでいるのか、あまり苦情は聞かない。